第94話/クイーンちゃんと魔物娘ちゃん?
クイーンちゃんのお願いを聞くべく、いざ隠れダンジョンへ!
空に昇る太陽がまだ昼には早い位置にある森の中。
木々からの木漏れ日が青々とした茂みを照らし、静かなるも小さな鳴き声が遠くで飛び交い木霊している。
平時ならピクニックや森林浴でも楽しみたいところだが、現在はクイーンちゃんたっての依頼で例の隠れダンジョンの調査の最中。
ちなみに昨日の今日で調査というのも無理だったので、そこは四日ほどクイーンちゃんが業務を調整し、『ダンジョン喰らいが討伐された後の隠れダンジョンに異常がないかギルドの職員を伴って調査する』という名目を取り付けた。
同行するのはオレ様だけだったが、エルモが『アビゲイルさんなら、まあ大丈夫でしょう。なにかあったら全力で盾にしてください』と不穏な一言と共に二つ返事で了承したらしい。
いやまあ、クイーンちゃんの為なら喜んで盾になるけどね?
ともかくも何かを悟られずに無事に二人だけで隠れダンジョンの前まで来ていた。
来てはいるのだけど……当の本人は現在、オレ様の隣で地面に両手と両膝をついて大変ぐったりしてらっしゃるという。
一体どうしたというのか。
「……誰の、せいだと、思ってるです……あと、もっと、背中、なでるです……吐き、そう……」
はい、すいません。オレ様のせいですよね。ぜひ撫でさせていただきます。
うーん、隠れダンジョンまで来るのに森の中を歩くのはちょっと億劫だったので、クイーンちゃんを抱えていい速度で飛行したのが悪かったのだろうか。
それとも下りるときに百メートルくらいの上空から無重力落下したのがいけなかったのか。
「もう、絶対、勝手に、飛んでくのも、いきなり、落ちるのも、どっちも、なしなのです……」
どっちもダメだったらしい。オレ様反省。
ともかくもこのままだと調査どころじゃないなぁと思いつつ、クイーンちゃんの背中をさする自分の指に嵌めている指輪を見てふと考えが浮かぶ。
そういえば指輪にいくつか回復魔法が付与されてたりしたっけ。
「よかったら回復魔法でもかけてみる?」
「お願い、するです……」
「じゃあ、さくさくっと」
大治癒は基本として解毒とついでに精神治癒をかけていく。
「た、助かったのです。あと、最後まで吐かなかった自分を褒めてあげたいのです」
「さすがクイーンちゃん! あんたが女王様! ひゅーひゅー!!」
「うるさいのです。誰のせいなのです?」
褒めてって言うから持ち上げたのにクイーンちゃんからのジト目が冷たい。
まあとりあえずは立ち直ったようでなにより。
「それじゃそろそろ隠れダンジョンの中にい……ける?」
「……色々言いたいことはあるですけど、時間も限られてるのでお願いするのです」
「あいあいさー」
そうして二人で隠れダンジョンの入り口へと向ったのだけど、その付近の地面が妙に荒れているのに気づく。
近づいてよく見ればそれはたくさんの小さな人型のような足跡がある。
「これは、ゴブリンです? かなりの数の足跡なのです」
「みたいだなぁ。しかもほとんどの足跡が中に続いていると。それでも行ってみる?」
中に入るそれ即ちゴブリンとの戦闘を意味するわけだけど。
「あの得体のしれないダンジョン喰らいならいざ知らず、ゴブリン程度に遅れは取らないのです」
「え、あ、そうなの……?」
意外とワイルドな答えに戸惑うオレ様をよそに、クイーンちゃんは「行くのです」と躊躇なく隠れダンジョンへと歩いていってしまった。
ちょっとだけ『こ、怖いけどがんばるのです』とか怖がるクイーンちゃんを期待したのに、って、まってまって、護衛を置いて行っちゃダメだと思うんだ!
すたこら行ってしまうクイーンちゃんに追いついて二人で中に入った隠れダンジョンの中は、前回マルメル姉妹と来た時と変わらず土や木の根がむき出しの洞窟で、壁や地面に生えている苔が淡い光が先を照らしていた。
そのまま歩いていくと土の壁は段々と硬質な石へと変わっていき、空気もひんやりとしたものになっていく。
足元は湿った地面でところどころに小さな水たまりがあり、光沢を放っていて滑りやすそう。
そんな中をしばらく歩いていてると、オレ様の索敵スキルに奥から複数の反応がひっかかり、かかすにだが争うような声や音が響いてきた。
「あ、まずいのです! これはピンチなのです!!」
なにかを察知したのか急に慌てた様子で走り出すクイーンちゃん。
オレ様も歩調を合わせて追いかけていくと徐々に争いの声や音が大きくなっていき、
二しばらく行くと破壊されたままのボス部屋の扉が見えてきて、二人でそれを通り抜けてそのまま広い通路を駆けていく。
そうして見えてきた出口の先にあるすり鉢状になっているコロシアムのような場所では、その中央部分で襲い来る有象無象のゴブリンを植物の蔦のようなものでしばき倒しながら戦っている……ええっと、大きな花から咲いてる魔物娘ちゃん?
と、その魔物娘ちゃんが不意にこちらに視線を向けてその顔にぱあっと笑顔の花を咲かせながら叫んでくる。
「マスター! マスター! 戻ってきてくれたとですね!! 早く加勢してほしいとです!! こいつらいくら追い払っても後から後から湧いてくるとです!!」
なにゆえ九州弁っぽい口調? 異世界の魔物娘ちゃんという概念が一瞬で崩れたんだけども?
「あの子がダンジョンコアなのです! アビーも一緒に戦ってゴブリンたちを排除してほしいのです!!」
オレ様が内心小首を傾げていると、クイーンちゃんがそう言い残して勢いよく下へ向けて駆けだしながら、その手に魔法の力を宿らせる。
「お前たち全員肥料にしてやるのです! 水槍連牙!」
すごく物騒なこと言いつつ放った数本の水の槍が、魔物娘ちゃんの側にいたゴブリン共を貫き倒す。
「ありがとうですマスター! でも半分以上が的外れだったとです! もっと狙いは正確にした方がいいとです!!」
うわ、それ言っちゃうんだ。オレ様も気づいてはいたんだけど言わぬが花かと思っていたのに……あ、後ろから見えるクイーンちゃんの耳が真っ赤。
「……あとであいつの花毟ってやるのです」
ボソっと真顔でつぶやく隣のクイーンちゃんが怖い。
とりあえずあとで魔物娘ちゃんにフォローはするとして、今はこの状況を打破するべくオレ様も用意していた魔法を解き放つ。
「<多重詠唱><照準誘導>からの黒雷弾!」
サブスキルでオレ様の周辺に大量に生み出された誘導付きの黒雷弾が縦横無尽に放たれて、次々とゴブリン共へ直撃して消炭と化していき、遂にはこの場にいたゴブリン共を全滅させることに成功した。
「おお! どなたかは知りませんがマスターとは比べ物にならないほどの腕前! 狙い下手なマスターも見習ったほうが――――なんですマスター? なんでワタシの花弁を両手で握って、あぎゃあああああっ! 毟られる! 斜め下へ引っ張るのは本気で毟ってくる時のやり方あああああっ!!」
あーあ、そんなナチュラルに煽るからクイーンちゃんに無言で物理的抗議されるんだってば。
痛みに悶え苦しむ魔物娘ちゃんをよそにクイーンちゃんがさらに捻りを加えた瞬間ミリっとヤな音がしたので、さすがにまずいと思ってまあまあと間に入ることにした。
「うう、マスターが酷いとです」
「よ、余計なことを言うからなのです」
「はいはい二人ともそこまでで。それでその魔物娘ちゃんが例のダンジョンコアでオッケー?」
「そうなのです。こんなんでもダンジョンコアなのです」
「はいはーい。ワタシがそこのちっこいマスターの、ひぃっ、そこの偉大なるマスターのダンジョンコアをしてるとです」
あ、ちっこい辺りでクイーンちゃんがジト目のまま紙を破る仕草をしたら言い直した。
しかし近くまで来て見ればこの魔物娘ちゃん、下半身の紫色の花もボリュームあるしそれに相まって緑色の上半身が生えてるから背がけっこう高い。
うむ。ボリュームある胸がちょうどオレ様の視線より上の高さにあって、ローアングルからの谷間が目の保養に素晴らしい。
「マスターマスター。ちゃんと会えたことですし、早くバイパスを繋ぎなおしたいとです」
「まあ確かにこのままだと不完全ですか。あ、ちょっとアビーは待っててほしいのです」
バイパス? と疑問に思っていると、おもむろにクイーンちゃんと魔物娘ちゃんが手を取り合い、そこを通してお互いの魔力が奔流となって行き交い始めた。
ゲームでも見たことのない現象に見入っていると、少ししてクイーンちゃんの体が淡い光に包まれていって……なんだか成長し始めた?
「お、おおおおお?」
10歳くらいだったちみっこい背が伸びていき、ほぼぺったんこだった胸までも膨らみを帯び始めていく。
そしてしばらくして光がおさまった後には、
「お待たせしましたです。どうやらコアとの同期は無事に終わったみたいなのです」
十四歳くらいの美少女が現れて、
「うっわぁ、服がそのままだからめっさぴっちぴちで?」
「え? あ……きゃあああああっ!!」
オレ様の指摘に制服がぱっつぱつで超ミニスカートとなった自分自身を見て、胸や股を手で隠しながら恥ずかし叫ぶクイーンちゃんがいたのだった。
※注。イメージ、あくまでAI生成によるイメージです。
『成長したら服が縮んで? 赤面のクイーンちゃん』
ブックマーク、いいねや感想等々をくれたなら作者のやる気ゲージがMAXに? ぜひよろしく。
=====
女の子のぴちTへそ出しはキュートに見えるけど、野郎のぴちTへそ出しはレイザーラモ〇を彷彿とさせる作者です(偏見)。




