第87話/お菓子は正義。
迷惑騎士団を成敗したのにエルモに怒られた悲しみ。
注:コロナ感染で唐突な長期休養に突入。
注2:味がしねえです・・・・・・orz
「こんなか弱い美少女に対してハリセンの一撃は酷いと思うんだが」
「ははは。どこの世界に騎士団員をパンイチに剥くようなか弱い美少女がいるんですか」
「やだなぁ、すぐそばにいるじゃん。このキャラデザコンテストで六位に輝いたオレ様が!」
ふふん。ゲーム内で開催された、とあるあざと可愛いコンテストで諭吉さんを数枚かけた課金コーデで参加した甲斐があたってもんよ!
「なまじ嘘じゃないのがイラっと来ますね・・・・・・。順位は微妙ですけど」
「微妙はやめてあげて!」
確かに参加人数が十人だったけれども! それは言わない方向で!!
そんな軽口を叩き合いながらオレ様とエルモは、街の中をギルド目指して歩いていた。
ちなみにオレ様達の後ろではセドリックが歩いていて「あの英雄のエルモ様と普通に話してる・・・・・・」なんてなぜか慄いている。
あと騎士団の連中に関してはエルモ曰く「ギルドじゃ手に余ります」とのことで、新たに呼んだ街の兵士さん達にお任せすることになった。
「さて、ギルドに着いたことですし、お二人には詳しい事情を聞かせてもらいますよ」
「おっけーおっけー」
「か、かしこまりました!」
なんでセドリックはそんな畏まるのか。
ということで、ギルドへ着いたオレ様達はエルモに導かれるままに冒険者や受付嬢さんで賑わう一階を通り抜け、二階の階段を上がって連れて来られたのはギルド長室。
入れば質素だが明らかに高価そうな立派な書斎机と、ガラステーブルを挟んで対面する三人掛けのソファが鎮座している。
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中へ入るとエルモからソファを勧められたので、遠慮なくオレ様は座るがその横にセドリックがぎこちない動きで席に着く。
まだ緊張してるんかい。ま、そんなことよりこうして一息つくと、オレ様的には甘味が欲しくなるわけで。
「いま、お茶を用意させますから――――って、なんですかコレは!?」
立派な書斎机からなにやら書類を取り出してこっちに来たエルモが目を丸くするけど、
「いやなにって、みれば分かると思うけど?」
「そりゃそうですけども・・・・・・!」
あまり大きくないガラステーブルの上には、ケーキやらクッキーやらナッツ類やらが数種類ずつ並んでいる。
ちなみに全てがGP産のもので、なにもない空間から出している最中、隣のセドリックが「・・・・・・手品?」とか唖然とした表情で見ていたのがおもしろかった。
あとオレ様って色んなのを少しずつ摘まみたいタイプなんだよね。
「さあさあ、遠慮なく食べたまえ」
「それにしたってこの量は多すぎやしませんか?」
「お? ならエルモは一個だけにしてもい――――」
「せっかくのご厚意は無下にしてはいけませんよね!」
素早く対面のソファに着いたエルモが、早速と言わんばかりにクッキーの一つを手に取って頬張る。
蕩けるような笑みを浮かべて食べる姿を見るに、甘味に陥落したのは確実だろう。
じゃあオレ様もミニカップケーキを一口に食べていると、コンコンと扉をノックする音が聞こえ、
「失礼します。お茶をお持ちしま・・・・・・し、た」
扉を開けて入ってきたのはお茶を乗せたトレーを持ったファンナさんなのだが、その足がオレ達が座るソファの手前で言葉と一緒に止まる。
見ればその視線がテーブルの上のお菓子にとまり、次いでゆっくりといい笑顔のままエルモの方を向き、
「コレハ・・・・・・?」
「ひぃっ! ち、ちちち違うのよファンナ!? これは私が用意したものでなくてね!?」
面白いくらい挙動不審に弁明するエルモだけど、その気持ちは分かる気がする。
こっからはファンナさんの横顔しか見えないけど、その背後には明王のごとき怒気が見える気がするもん。
「騒動ノ事情ヲ聞クンジャナカッタンデスカ? ソレガナンデお菓子バイキングシテルンデスカ?」
「怖い怖い怖いっ! 笑顔で殺意の困った目を向けるのはやめて!?
ちゃ、ちゃんと事情は聞きますよ!? ただその前にアビゲイルさんがテーブルにお菓子を広げちゃいましてね!?」
「率先して食べたのはエルモギルド長でーす」
「ちょっとおおおおおっ!」
はっはっはっ。流れ弾は回避しておかないと。
「ソウデスカ。ワカリマシタ。ソレデハ失礼イタシマス。…………ギルド長ハソンナニ食ベルナラ、夕飯ハ入リマセンヨネ」
「いやあああっ! ファンナが本気で怒ってる!? アビちゃん先輩! 何とかして下さいよ! あの怒り様だと五日は引きずってその間の私のご飯が悲しいことになるんですよ!?」
具体的には逆日の丸ご飯とか! なんてエルモが涙目で割と本気で訴えてきてるので、立ち去ろうとするファンナさんを呼び止め、
「エルモの言ってた事はホントだから許してやってくんない? あ、ちなみにこれは皆さんでどうぞ」
GPで取り寄せた、お徳用百枚入り! とラベルに書かれたクッキーのアソート缶を手渡すと、ファンナさんの背中の明王が慈愛の女神となり、
「まあまあ! これはご丁寧にありがとうございます。後ほど受付嬢の皆で頂こうと思います。
それでは皆様、失礼いたします」
綺麗なお辞儀をしたファンナさんはそう言い残し、機嫌よさげに部屋を出て行ったのであった。
後に残されたのはぐったり気味のエルモに、なぜかさっきから微動だにしないセドリック。
「ふっ、危機は去った」
「危機的状況を招いた本人が言わないでくれますか・・・・・・」
「まあまあ、それよりせっかく許しが出たんだし、食べながら話そうよ。ほら、セドリックも遠慮なく・・・・・・セドリック?」
返事がないので軽くゆさぶってやると、ハッとした顔して、
「なんかいま、ものすごいプレッシャーに気が遠くなって・・・・・・!」
下っ端兵士と言え大の男を威圧し倒すとは、ファンナさん恐ろしい子。
とりあえずファンナさん用にお菓子はストックしとこうと心に決め、お菓子を一口。うん、おいしい。
「なんで事情聴く前からこんな疲れるんですか。アビゲイルさんのせいですからね・・・・・・」
「それはほら、お菓子と一緒に飲み込むってことで」
「はあ、それじゃ改めてこれより事情聴取をはじめます。あ、そこのカップケーキは私のキープです! キープですからね!!」
こうしてなんやかんや姦しくなりつつ、事情聴取ははじまったのであった。
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ゲーム内のキャラコンに出たというのは実話です。
ただ作者の場合、順位にかすりもしませんでしたけど……!




