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ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。  作者: 隣の斎藤さん。
第一章 ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。 

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第84話/茶番の行方。


ついに騎士達とご対面。

セドリックはなにやら行動を開始するが・・・・・・。



 オレ様がセドリックの時間稼ぎにとテーブルに乗せた両足を組み、挑発するような物言いを終えた時。


「貴様! いったい何をしている!!」


 色めき立った騎士の一人が怒声を上げた。


 よしよし。このままうまい具合に挑発に乗って「表に出ろ」的な展開にでもなれば、そこで全員しばき倒して強制終了に、


「年子の娘がそんな露出ある衣服で足を投げ出すとは! はしたないではないか!!」


 ……え、怒られた?


 何気にセドリックの努力を無に帰すようなことを考えていたら、騎士の一人からなぜかお叱りの言葉が返ってきた。


「その通り! 昨今の冒険者の婦女子はスカートの丈が極端に短かいわ、不必要に胸の谷間を見せつるわ、けしからんと思わんのかね!?」


「確かに世間の流行というのもあるだろうが、そのような明け透けな態度では周りの男共にいらぬ誤解を与えることになるのだぞ!?」


「淑女たるものいついかなる時も慎ましやかにおしとやかにあるべきとは、単に古風な考えではなく、それにより自身の品性を守ることに繋がるというに!!」


「え、あ、はい。そうですね……?」


 同調する他騎士達の予想外の剣幕に、オレ様は思わずテーブルから足を下ろして居住まいを正してしまった。


 いやまあ、言いたいことはなんとなくわかるけれども、それ今言う事!?


「うむ。君もわかってくれたようでなによりだ。しかしいいかね? 我々は何も君一人だけに苦言を呈しているわけではないのだよ」


「然り。今どきの婦女子は露出の多い服装こそが自身の魅力を引き立てるのだと思いがちだが、それはいささか間違っている」


「そうですな。所詮そのような服装で寄って来るのは軟派で軟弱な男のみ。見せるべきは服や肌ではなく、女性としての所作こそが重要だというのに」


 なんだろう。この、生徒指導の先生に日ごろの生活態度について怒るでもなく淡々とお説教されてるような感覚は・・・・・・。


 しかも言ってることは間違ってない上に、こちらの事を心配している節もあるので反論とかしずらいという・・・・・・!


 そのお説教に対してオレ様は「はい・そうですね・すみません」という、単調な返事しか返せなかった。


 しばらくお説教のような話が続く中で、オレ様の中でふと元の世界の学生時代の事が思いだされる。


当時なぜか男子の間で無差別に誰かの机にエロ本を隠す、という蛮行が流行っていて。


運悪くオレ様もその犠牲者となり、机から発見された物について生徒指導の先生から「年頃だから仕方ないけど、学校に持ち込むのはダメだぞ? ・・・・・・あと個人的な意見なんだけど、先生、君がその年齢の女性に興味を持つのはまだ早いと思うんだ・・・・・・」と、“50代熟女がお好き“というタイトルのエロ本をそっと返されたというヤな思い出。


 どちくしょーっ! 巫女やシスター物ならまだしも、よりにもよってあんなの入れやがって! ぜってぇー許すまじ!!


 まあその後、見つけ出した友人(犯人)の机にBL本を叩き込んでやったが。


「ぎゃあああっ!」


 そんな思い出と延々と続くお説教に遠い目をしつつ聞いていた時、突然外から男の悲鳴が聞こえてくる。


 何だか知らないけど、これはお説教から逃れるチャンスだろう!


「おっしゃ! もとい、なにがあった!?」


一瞬この場から逃れられる喜びが口から漏れたけど、オレ様はすぐさま椅子から身を翻し部屋の扉を蹴破って外へと飛び出す。


 後ろから「まだ淑女の嗜みについて話は・・・・・・!」なんて聞こえてくるけど、そんなのは聞きたくないのでダッシュで現場へと向かう。

 

 もちろん場所は把握済み。

 

 なぜならオレ様が仕掛けた安全対策が作動したようで、飛び出した家の裏手からその気配が伝わってきたからだ。


 着いてみればそこは小さな一軒家。


 そして流血する腕を抑えて呻く騎士と、アリシャちゃんを背負ったセドリックに、二人を守るように一匹の影狼(シャドウウルフ)が立ちはだかっている。


 どうやらオレ様の眷属(・・)は、無事に目的を果たしたようだ。


「よーしよし、いい子いい子。セドリックもちゃんとアリシャちゃんを連れ出せたみたいだな」


「あ、ああ・・・・・・というか、この狼はいったい・・・・・・」


 影狼(シャドウウルフ)へと近づき、高級絨毯のような手触りの背中を撫でて労っていると、困惑するセドリックの言葉を遮るように遅れてどやどやと騎士達がやってきた。


「な、なぜこのような場所に影狼(シャドウウルフ)が・・・・・・!?」


「これは一体どういうことだ!?」


「・・・・・・ふむ。冒険者殿、説明はしてもらえるのだろうね?」


 やいのやいの騒ぐ騎士達の中からヴィンセクトが現れ、影狼(シャドウウルフ)を一瞥し警戒の目をオレ様に向ける。


 まあ、こんだけ撫でてればオレ様と関係あることはわかるだろうしな。


「はーん? それはむしろこっちのセリフなんだけど? この娘を守るために仕掛けた罠がなんで発動したのか、きっちり聞かせてもらおうか」 


 セドリックと別れる間際、何かあったと時の護衛にと彼の影に潜ませた影狼(シャドウウルフ)が出てきたという事は、それなりに身の危険が迫ったということだろう。


「そんなことは知らんね。それよりも君が所有する魔物が、我が騎士団員に手傷を負わせたのだ。この落とし前はどうしてくれるのかね?」


 この野郎。論点のすり替えしてきやがったし。


 相手の問題点を先に言及していく事で、最終的に自分の問題点をうやむやにしてしまう手法!


 小さい頃に従姉の姉ちゃんによくやられてたから分かる。


先にオレ様のプリンを盗み食いしたくせに、オレ様が知らずに姉ちゃんのぷちシュークリームを一個食べたことをめっちゃ言及してきて、最後には「シュークリームのことはプリンのことで相殺してあげるわ!」とかわけわからん締め方して食い逃げしたことは根に持ってるんだからね!?


 というわけで、その手には乗ってやるもんか。


「落とし前ねぇ・・・・・・。それなら男らしく、剣で白黒つけるってのはどうだ? まあ、そこらのしがない騎士なんてオレ様の相手になるとは思えないけどね?」


「なにぃ!? 我らを侮辱する気か!」


「おのれ、下手に出ていればいい気になりおって!」


「いくらそんなエロけしからん太ももをしていても許さんぞ!」


 ・・・・・・ん? 


 なんか後半私欲な発言があった気がしたような?


まあそれはともかく、オレ様が嘲るような顔で煽ってやるとものの見事に騎士たちが激昂して釣られてきた。


 しかしヴィンセクトがそれを制するように片手を上げて黙らせる。


「随分と自身がおありなようだ。では一手ご教授願おうか。ああ、そちらが勝利したなら今回の件は不問にし、迷惑料として100万ゴールを支払ってやろうじゃないか」


 こいつ、自分側が勝つと思って余裕ぶっこいてるな。


 ククク、ならオレ様はそれを煽り倒してやろう。


「へえー。ならこっちは万が一そっちが勝ったら倍の200万ゴールをくれてやる」


「なっ! 無謀だ! 自分が何を言ってるか分かってるのか!?」


 叫ぶセドリックに心配しなさんなとひらひらと手を振って答える。


 だってまだ煽りは続くしね?


「あと、つ・い・で・に・オレ様の事を好きにしてもいいぞ?」 


 両手で髪をかき上げてわざと科を作ってみせてやる。


 ふははははっ! 美少女たるオレ様(我が子)のこの妖艶たる姿を見て恐れ慄くがいい!!


「「「あ、お子様は圏外なので結構です」」」


 ぴしっ。


 揃って真顔できっぱりと断る騎士達のまさかの答えに、思わずオレ様の顔が引きつる。

 

 あるぇ!? なんかオレ様がナルシストの勘違い野郎みたいな空気に、なってる!?


 なんだか急に心が焦りだすオレ様をよそに、騎士達が困ったような表情を浮かべ、


「いやはや確かに顔形は整っているが、女を語るにはまだまだですな」


「然り。あれで引っかかるのはそこらの童貞かロリコンだけだろう」


「その身体で成熟した女と言うには、五年早い」


 おっしゃ、お前等泣かす! 絶対泣かすからな!!


 思ってもみない恥ずかしさに赤くなる顔を自覚しつつ、オレ様はそう心に固く誓ったのだった。





初めて同人誌会場に行った時、割と可愛い子が売っていた席で目にした「菜っ葉と御飯(誤字じゃなく)」というタイトルのBL本を見た時は戦慄を覚えました。



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[一言] どんな戦いになることやら( ˘ω˘ )
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