第74話/見せるのと見られるのは違うんだ。
近々投稿といいつつ、安定の一週間経過。
オレ様は今、ギルドの屋根の上にいたりする。
どうやら魔物の気配はギルドに隣接する訓練場にあるっぽかったので、中から行くよりは屋根から行った方が早いと思ったからなのだが。
しかしちょっと失敗した事案が一つ。
その場で跳躍したはいいけど、ちょっと加減を間違えて高さが出てしまい、屋根に向かって落下していく途中でなぜか下のほうから、
「おおおおおーっ!!」
と、男どもの野太い歓声が聞こえ、なんだなんだと不思議に思っていると、妙に焦った口調のリリナちゃんが大きな声で、
「あ、あのー! スカートがめくれて下着が見えてますー!!」
どうやら飛び降りていく際の風圧でパンチラと相成ったらしい。
「……ありがとうリリナちゃん。あと、男どもは覚えておけよ?」
「おおおおおーっ!?」
屋根に降り立った後、スカートを抑えて振り向きざま、男ども限定でちょっと威圧スキルを込めて睨んでやると、蜘蛛の子を散らすように目撃者達が逃げて行った。
ふははは、顔は覚えたからな?
ともあれ、今は訓練場で起きてる戦いに視線を移すとしよう。
学校のグランドほどある広さの訓練場では、今まさに戦いが繰り広げられていた。
対峙しているのは二メートルは超えるだろう巨体の緑色のカマキリと、金髪をツインテールにした小柄なメイド姿のエルフちゃん。
カマキリはオレ様の予想が当たりなら、森系フィールドによくでるキラーマンティスだろう。
メイド姿、もといメイドエルフちゃんの方は、この間隠れダンジョンの調査で帰ってきたおりに、色々あって気絶したマルメル姉妹とリリベルちゃんを介抱してくれた、エルフ三人娘のうちの一人だった。
そのメイドエルフちゃんが前傾姿勢で走り迫り、放った中断蹴りをキラーマンティスがその大きな鎌の側面で防御する。
もう片方の鎌を振り下ろすものの、メイドエルフちゃんは軽やかにバク転を二、三度して回避して距離を取り、着地と同時に戦いの構えを取った。
まるでバトル漫画のような動きを生で見れたことに感心してしまう。
「それにしても…………赤の紐とはなんと情熱的な……!」
うん、スカートでバク転なんかしたら見えちゃうよね。ナニがとは言わないけど。
しかしまあ、戦況はあまり芳しくないようだ。
メイドエルフちゃんが殴ったり蹴ったりするけど、それがどこか遠慮がちで全てが防御されてしまっている。
原因はアレだろう。キラーマンティスが子猫のように咥えてぶらさがってる幼女。
確か、ダンジョン喰らいを発見した、斥候の獣人の娘が救助したという幼女だったはず。
それがなんで振り子のようにぶら下がっているのか。
ともかくも、あの幼女を何とかしないとメイドエルフちゃんが本領を発揮できないだろう。
というわけで、
「おーい! そこの幼女を救出するから、とどめをよろしくー!!」
『!!?』
二つの視線が驚きをもってこちらに向いた時には、オレ様はすでに太陽を背にして中空へ舞い上がっていた。
尚、飛び上がった際になんか木材をひき潰したような音がしたと思ったら、屋根の一部が抜けるように壊れていたのは見なかったことにする。
ざ・不可抗力。
「あ、よいしょー!」
そして放物線を描いて狙い通りにキラーマンティスの頭上に迫った瞬間、掛け声と共に空中でくるりと一回転した勢いで放ったカカト落としが、吸い込まれるように眉間に直撃する。
蹴り足を起点に身をひるがえして着地すると、防御もする間もなく喰らってふらついたキラーマンティスの口から、ぽろりと幼女がこぼれた。
すかさず抱きとめるようにキャッチして、そのまま横っ飛びで離れる。
あとは背後で魔力を高めていた主に任せるとしよう。
「じゃあ、あとは頼んだー!」
「お任せください!」
澄んだ声が背に響き、着地した先から見たものは、両の手から花びらのような火の粉を纏わせたメイドエルフちゃんがキラーマンティスへと飛び込み、腹部へと右ストレートを叩き込むところだった。
「紅蓮旋華!」
まともに突き刺さった拳は、その腹部に爆炎の華を咲かせてキラーマンティスを吹き飛ばす。
吹き飛ばされたキラーマンティスは地面を二転三転し、訓練場の壁に激突してようやく止まり、半分ほどなくなった腹部を晒したまま、その身を青い粒子へと変えて姿を消していった。
ううむ。あの消え方って、ダンジョンの魔物と同じなんだけど、なんでダンジョンの魔物がこんなとこに?
なんて考えていると、こちらにやってきたメイドエルフちゃんが、スカートの両端をつまんでぺこりとお辞儀を一つ。
近くで見ると十代半ばの金髪碧眼で細身な綺麗な顔をした女の子で、精巧なお人形さんのよう。
「ご助力ありがとうございます。昨夜お会いしたエルモ姫先生のお連れの方ですね?
わたくしフィーエと申します。……それで、その、大変申し上げにくいのですが」
フィーエさんがキラーマンティスをぶっ飛ばしたとは思えない、その華奢な手をこちらへどうぞ的な感じでオレ様の胸元へ向けると、
「先ほどからお抱えになっているその子が、大変苦しそうにしているので、離して差し上げたほうがよろしいかと……」
「おや?」
「むぐーっ……!」
言われて視線を下へ向ければ、身体を小さくジタバタさせている幼女。
現在、幼女の肩辺りに両手を回してぎゅっと抱えている状態なのだが、その顔が見事にオレ様の形のいい胸にうずまっている。
……なんか羨ましい。いや、そうじゃなく。あ、ヤバい、なんか痙攣してる!?
ちょっと洒落にならない幼女の様子に、オレ様は急いで腕の力を緩めたのだった。
冬の女子高生のミニスカ見るたびに思います。
足冷えるよ? 将来養命酒のお世話になるよ?
真冬でもタイツはかずに生足だったのには、猛者だと思いました。
あと仕事場の同僚からは「お母さんか」と突っ込みをいただきました。




