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ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。  作者: 隣の斎藤さん。
第一章 ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。 

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第66話/いい子いい子。

ちょこちょこブックマークや評価が増えてるみたいで、ありがとうございます!


「あの後エルモ、ギルド長と一緒に領主の館に行ってダンジョン喰らい(イーター)イーターの事を話したら対策立てようってなって帰って来た」


『……ごめんなさい』


 注文して届いた料理を楽しみつつ、マルメル姉妹とリリベルちゃんが気絶した後の事をはしょって教えると、なぜか三人から揃って謝られた。


 曰く当事者なのにオレ様一人に面倒を押し付けたみたいになってごめん、と。


 いやいや三人が気絶する原因になったのは、元はと言えばうちのアホ召喚獣のせいだしね?


 そこはほら、それで相殺ってことでと伝えると三人ともちょっと渋ったものの納得してくれた。


 ちなみに三人は気絶した後、目が覚めたらギルドの職員用の控え室で寝かされていたらしい。


 部屋を出たところ待機していたメイド姿のエルフさんから事情を聞かされ、とりあえずオレ様に会いに行こうとしていたところだった模様。


 うん、基本的にいい子達だ。


 元の世界で後輩が仕事でやらかした面倒事の処理を手伝っていた時、その後輩が「デートがあるんで定時であがりますね!」とか爽やかな笑顔で帰って次の日になっても謝りもしなかった事に比べれば、三人がその数百倍マシだろうというもの。


 まあその後に後輩がやらかしてもなんやかんや理由をつけて手伝わず、残業が重なって帰れないと嘆いていた時には、頑張れよと肩を叩いて先に帰ってやったのは懐かしい思い出。


「ていうか、なんでギルドの人達はあんな忙しそうにしてるっつーのよ?」


 リリベルちゃんか飲み物に口をつけつつちらりと疑問に目を向けた先では、朝からいたギルド嬢の他に三人増えているようなのだが、誰もが大量の書類を持ち歩いたりあっちこっちへと忙しなく動いている。


 まあ、あれだろ。


 オレ様はフルーツセットのブドウを一粒口に放り込み、


「ダンジョン喰らい(イーター)が外に出てきたから、緊急依頼を出すって言ってたしその準備で忙しいんじゃないか?」


『……!??』


 そう何気なく言ったその瞬間、なぜか三人が凍りつくようにぴしりと動きを止めた。


「……ごくん。うぐっ!むぐぐぐっ!!」


「ああ!姉さまったら動揺して苺を丸飲みに!!」


「ちょ!マリー、飲み物飲み物!!」


 なんかわちゃわちゃしはじめたので、しばしオレ様ステイで様子を見守ることにする。


 リリベルちゃんから飲み物を受け取ったマルガリーゼが、それをこくこく飲んで一息付き少し落ち着き、


「ちょ、ちょっとアビゲイル、アレが出てきたってどういうことだっつーのよ!?」


「いやほら、ダンジョンの入り口を塞いでたゴーレムがいたじゃん?あれが壊されたみたいで――――」


 森から出てきて街まで来るかもしれない、というのと、ついでにダンジョン喰らい(イーター)のレベルとかも話すと、なぜか三人が顔を段々と青ざめさせていった。


 一体どうしたのか?


「ど、どうしよう……。これって私達がダンジョン喰らい(イーター)を刺激したからなんじゃ……」


「しかもまさかレベルが災害級なんて……」


「ま、まずいわよ。もしこの街に来たとしたら、あたし達のせいで街がなくなっちゃうじゃねーのよ……」


 いやなにも三人一緒に俯いて暗くならなくても。


 というか、なんだ気にしてたのはそんなことか。


「だーいじょうぶだって。ギルドの依頼で調査した結果なんだし。

 それに逆に考えたら早く見つけられてよかっただろ。手がつけられなくなってからじゃ遅いんだし。三人のせいじゃないって」


「そ、そうかな?」


 気にすることはないと明るい口調で言うと、マルガリーゼが少しだけ顔をあげてくれる。


 まあ、オレ様的になにかの原因や結果を発見や解明した人が悪いというのは違うと思うしな。

 

 過去になにかを発明したり発見した過去の偉人たちだって、それを戦争や悪事に使われたからお前らが悪いなんぞと言われても困るだろう。


 要は都合のいいように曲解したり悪用するような奴らがよろしくないと思うわけで。


 包丁だっておいしい料理が作れるけど、使い方を間違えれば人を傷つける凶器にもなりうる。


 つまりはそういうことだ。


「それにほら。オレ様とエルモがいれば大体なんとかできるだろ」

 

 レベル二百(カンスト)のオレ様に百は超えているエルモが相手するなら、ほぼ間違いはないだろうと思われる。


 ダンジョン喰らい(イーター)を見た限り、ほとんど脅威に感じられなかったし。


「あんたってばほんと、信じられないくらい自信家だっつーのよ……」


「そうか? でも実際エルモ、ギルド長は数体の巨人族も倒したんだろ? 

 それに比べたらダンジョン喰らい(イーター)一匹なんて問題じゃないって」


「ふふ、アビゲイルさんがそう言うと、ほんとにそんな気がしてきますね」


 話していくうちに三人からどんよりとした雰囲気が薄れていったように感じる。


 少しは気を紛らわすことができたらしい。


 それから料理を摘まみつつとりとめもない話をしていると、突然呼び出しのピンポンパンな音がどこからか鳴り響き、


「ギルドより冒険者の皆様へ緊急依頼が発生いたしました。冒険者の皆様は急ぎギルド訓練場までお集まりください。

 繰り返します――――」


 あ、ファンナさんの声だ。それにしても綺麗な声だな。とてもさっきエルモを叱ってたとは思えないくらいに。


「うぅ、やっぱり緊急依頼になるのね……」


「まあまあ、とりあえずは訓練場に行って話を聞いてみたらいいって」


 挫けそうなマルガリーゼを励ましつつ席を立ち上がると、メルナリーゼやリリベルちゃんも席を立ち、


「そうですね。もしかしたらこの街に来ないかもしれませんし」


「まあ、あたしは魔法職だから直に戦うことはねーと思うけど……」


 少し残っていたフルーツを四人で片付け、オレ様達は訓練場へと歩き出した。



昔、5センチくらいの塊のバナナを喉につまらせて焦った記憶。

そんな時に限って側には熱々のコーヒーしか……!!

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[一言] 喉に詰まったバナナ+熱々のコーヒーはつらい
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