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ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。  作者: 隣の斎藤さん。
第一章 ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。 

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第59話/報連相って大事だよね。

出来る限り感覚を空けないで投稿していきたいと思っています!


あとハイヒールを大治癒ハイヒールに、それといまさらですが治癒の指輪を女神の指輪に変更しております。



 移動用にと従魔を召喚したものの、まさかの寝ながらの白目泡吹きという醜態を目下晒している黒雷孔雀(サンダルフォン)


 色々な感情を押し殺した結果、自分でもわかる程に引きつった笑顔のままその側にいったオレ様は、仰向けで器用に足で掻く腹の脇にそっと揃えた指先を添え、


「起きろバカ鳥♡」


 努めて優しい物言いと響けこの思いという気持ちを込めて、その脇腹に目覚めの掌底を打ち込む。


 ドボォッ。


「ボギョエ!?」


 打ち込みでわき腹が凹んで一瞬鳴き声が聞こえたので起きたのかと思ったけど、まだ白目を向いたまま寝てるバカ鳥。

 

 こんにゃろう、さっさと起きんかいな。


「あ、あのアビゲイル……?」


「ん? どうしたマルガリーゼ?」 


 もう一撃追加して起こそうとしたらマルガリーゼから声がかかり、後ろを振り向くとどこか遠慮がちにまだ寝ているバカ鳥を指して、


「そ、その子、なんだか死にかけてる気がするんだけど……」


「え? いやそんなまっさかぁ……」


 ちょっとこづいた程度だよ? でもまあ念のために鑑定してみるか。 


名前/黒雷孔雀(サンダルフォン)

レベル/40

種族/雷鳥

状態/瀕死


状態/瀕死(・・)


 おうふ! マジで!?


 鑑定してみたらなんだかえらいことになっていた。


 そういえば白目向いてるのは寝てる時と変わらないけど、なんだか片足上げてビクンビクン痙攣してるような……。


 あ、なんか頭を上げたと思ったらぱたりと力尽きた、って、ヤバイヤバイヤバイ!


大治癒(ハイヒール)!」 


 平静を装いつつ女神の指輪を介して発動した回復魔法の光が、いままさに逝きかけてる黒雷孔雀(サンダルフォン)を照らす。


 光が収まるとうまく回復したようで、ゆっくりと起き上がり何が起きたのかとキョロキョロしていた黒雷孔雀(サンダルフォン)と目が合ったので、ちょっとお願いしておく。


今度あんな醜態(ちょっとその背中に)見せたら焼き鳥に(乗せて飛んで)するからな(くれないか)?」


「!? ギョギョギョギョギョエ!!」


 オレ様の本音(真心)が伝わったようで、だらだら汗を流しながら一心不乱に首を上下に振って答えてくれた。


 うん、二度目はないからな?


「というわけでこいつも起きたみたいだし。こいつに乗って街まで戻ろうか」


『いやいや……』


 気を取り直して振り返ると、黒雷孔雀(サンダルフォン)の光に照らされた三人娘がなんか複雑な表情で手を横に振られた。


「色々言いたいことはあるけど、さ、さすがにその子の大きさ的にみんなは乗れないんじゃないかな……?」


 確かにマルガリーゼに指摘された通り、黒雷孔雀(サンダルフォン)の体長はちょっとした子牛くらいの大きさだ。


 乗れて二人が限界だろう。もともと一人用の乗り物としてのサイズしかないやつだし。


 だがしかーし! そんなことは織り込み済みの解決済み!!


「まあまあ、そこらへんは考えてあるから。

 よし黒雷孔雀(サンダルフォン)、<巨獣化>だ!」


「ギョゲエエエエエッ!」


 オレ様がスキルの使用を促すと黒雷孔雀(サンダルフォン)が一鳴きして、その身体をどんどん大きくしていく。 


 ちなみにこの黒雷孔雀(サンダルフォン)はゲームではレアな魔物であり、<巨獣化>のスキルは戦いにおいて体力が半分になったときに使用してくるのだが、自分の従魔にすると自由に使えたりする。


 人や物資の大量運搬にはよく重宝していたもんだ。

 

『……はい?』


 そしてあっという間に元の十倍ほどの大きさになった黒雷孔雀(サンダルフォン)を見て、三人娘が理解できないというきょとんとした表情で揃って小首を傾げていた。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 月の光を背に浴びて、暗く深い森を眼下にオレ様達は街を目指して黒雷孔雀(サンダルフォン)に乗り空を飛んでいた。


 高い高度に加えて体感速度が100キロくらいありそうだけど、魔法的な何かで守られているようで流れくる風は穏やかでオレ様の長い髪が少したなびく程度。


 これで急ぐようなことがなければ、満天の星空に静謐な夜の情景という素晴らしい景色を楽しむことが出来るだろう。  


 ただ今はダンジョン喰らい(イーター)のことを伝えに街へ急いでいる最中であるし、なにより女の子座りをするオレ様の左右と後ろを顔を真っ青にした三人娘にがっちりとホールドされているせいもあって景色を楽しめる状況ではない。 


 それどころか、服越しにあたるそれぞれのお胸様の柔らかさにオレ様の頭がスパーキング! 


 ――――なんて思っていた時期もありました。


「……あ、あのお三方? できればもう少し腕の力を緩めて欲し――――」


『嫌』


 おおう。ハモって拒否されたよ。


 いやまあ、原因は分かってるんだけどね。


 ここまで来る途中に、ちょっとおふざけで「ほーら背面飛行」なんて一瞬やってみせたら三人娘からものすごい悲鳴とお怒りを頂いた次第で。


 それ以来、左のリリベルちゃんからは、  

 

「アビゲイルアビゲイルアビゲイル! 絶対ぜーったい同じことすんじゃねーわよ!? やるんじゃねーわよ!? すんじゃねーわよ!?」


 なんてガチ泣きしながら同じような事を訴えられたり、右のメルナリーゼからは、


「ふ、ふふふ、さすがにさっきのは驚いたので、二度(・・・)と、しないでくださいね……?」


 と、穏やかながらも有無を言わせない笑顔で言われたり、後ろのマルガリーゼに至っては、


「こわかったこわかったこわかったこわかったこわかったこわかったこわかった∞」


 ただひたすらに呪詛のように言葉を続けては、ちょっと頸動脈が閉まりそうなくらいに後ろから両腕で首にしがみつかれてしまっていた。 

 

 うん、正直やり過ぎた。オレ様、反省。


 なんて思っていたら眼下の森が切れてしばらくしないうちに、遠くの方に街の明かりが小さく見えてきた。 


 さすがにこのまま街の中に降りるのはまずかろうと、黒雷孔雀(サンダルフォン)に門の前に降りるように徐々に高度を落としていくよう指示する。   


「三人共、そろそろ街に着くぞー」


 そう告げると、三人娘からほっとしたため息が聞こえる。


 高度が徐々に下がっていき元の半分くらいになり、小さいながらも街の様子が見えて来た頃にふと思う。


 そういや急いで帰る目的で魔物の黒雷孔雀(サンダルフォン)に乗って来たんだけど、間違って攻撃されたりしないよな? 


 密かに嫌な予感を覚えていると、後ろからしがみつくマルガリーゼがオレ様の胸のあたりを指でトントンと叩いてきた。


「ねえ、アビゲイル? なんだか門の周りにいっぱい明かりや人が増えて騒がしい気がするんだけど、なんだろ?」


 そうだねマルガリーゼ。人というか武装した冒険者っぽい姿がやけに多いのは気のせいだよね、多分。


「そういえば、門の上にバリスタっぽい物が用意されてるようにも見えますね?」


 そうだねメルナリーゼ。今まさに弓をセットして弦を引き搾ってるのは気のせいだよね、きっと。


「ちょっとちょっと、なんか弓矢構えたり魔法準備したりして物々しいのはなんだってーのよ?」


 そうだねリリベルちゃん。その照準がすべてこっちに向いているのは気のせいだよね、おそらく。 


「………………」


 どうしよう。嫌な予感が的中どころかど真ん中を貫いてる気がする。すごくする。


 で、でもまあ、他の魔物に用心してるパターンも捨てがた―――― 


「……ねえアビゲイル」


 どんどん街の門までの距離が詰まってきている中、うつむき加減なオレ様の考えを遮って聞こえたマルガリーゼの声に肩がビクリとする。


「……まさかとは思うけどこの魔物()のこと、ギルドに報告してるよね?」


「ほ、報告……」


 な、なんか冷や汗が……。


「……アビゲイルさん、まさかとは思いますが、この魔物で街へ戻る事を前もってギルドに連絡とかしてますよね?」 

 

「れ、連絡……」


 あれ? なんか胸がドキドキしてきた……。


「……あんたまさか、誰にも相談なしでこの魔物を呼び出したんじゃないでしょーね?」


「そ、相談……」


 え、えーっと、皆の指すような視線が感じるんだけども……。 


『……もしかして、なにもしてない?』


「…………う、うん」


 三人同時に聞かれ思わず小さく頷いて返事をしてしまう。


「え、それじゃあ、あの攻撃準備って、もしかして私達を狙ってる……?」


『………………』


 マルガリーゼの言葉に嫌な感じの静寂が辺りを漂う。


「え、えーっと、その、なんていうか、みんな、ご、ごめ――――」


 その静寂に耐えきれなくなったオレ様が意を決して謝ろうとした瞬間、


「魔物が来たぞおおおおおー! 全員、攻撃開始いいいいいー!!」


『バカアアアアアーッ!!』 


「ごめんなさああああああーい!」   


 冒険者達の怒号と三人娘の怒りの悲鳴にオレ様は謝りながら、迫りくる攻撃から黒雷孔雀(サンダルフォン)を緊急回避させたのだった。  




黒雷孔雀サンダルフォン「寝起きの一撃で死ぬかと思った……」



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― 新着の感想 ―
[一言] 降りる頃にはみんな顔が真っ青になってそう(乗り物酔い)
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