第57話/女同士だからセクハラじゃない、よね?
ぐぬぅ、設定がガバガバだから主人公の話し方とか一定しない。
……まあ、このまま書くだけ書いてみよう!!(無計画)
食い破られた扉をオレ様、リリベルちゃん、マルメリ姉妹の順番で慎重に潜り抜けると、現れたのは五メートルはありそうな天井にバスが二台くらい並べる程の広さがある通路だった。
壁に等間隔で火が灯る燭台はあるものの、か弱い光は所々に闇を残し通路の奥にいくに従ってその色を濃くさせている。
まあ薄暗いとは言うものの、オレ様の目には全く問題ない程くっきり見えていて、青っぽい人工的な石材が床や壁が続く通路は、石柱が縦三列に等間隔に並んでおりこれまでの洞窟とは違う様式になっていた。
凝った装飾とかもしてあって、なんだかギリシャとかにある神殿のような感じに見えなくもない。
ただ床や柱が食い荒らされたように砕けたり削れたりしていて、みるに酷い有り様だ。
「いったいどうしたらこんな風になるっつーのよ……」
廃墟とも言える有り様に、おっかなびっくりな様子のリリベルちゃん。
ちらりと後ろを見れば、不安気な表情でメルナリーゼの裾を掴み、辺りをきょろきょろ見回しているマルガリーゼがいる。
なんか小動物チックでかわゆいなぁ。
不謹慎ながらもそんな様子を愛でつつ歩き出そうとした時だった。
ギギギギギギィィィ…………。
暗く先が見えない奥の方から、まるで立て付けの悪い扉が開くように軋むような不気味な音が響いてきた。
『!!?』
それを聞いて三人がびくりと体を強張らせる。
「しー……」
と、口に人差し指で合図を送り、三人が緊張した顔でこくこくと頷くのを確認してオレ様が先頭に立って歩き出す。
廊下の柱は砕けてあってないようなものだけど、その影に身を隠すようにしながら断続的に音が響いてくる方へとゆっくり歩いていく。
近づくにつれ、騒音と言ってもいい程に段々と大きくなる音。
そのうるささに割りと気持ちがイライラしてきた頃、通路の先に変化が訪れた。
燭台がアーチ状に配置されていて、そこに見えるのはまるで怪物が口を開けたような出口。
ついでに言えばオレ様の探索スキルがその先に大量にいる魔物を捉えていたりする。
「あそこを出た先に魔物がいるみたいだ。ここから慎重によろしく」
三人が小さく頷いたのを確認し、オレ様は音を大きく立てないように身を低くしてゆっくりと移動する。
しばらくして出口までたどり着いてその先を覗いた時、見えた光景に息をのんだのは誰だったか。
例えるならそこはまるですり鉢状になった古代のコロシアム。
オレ様達がいる場所は一番上の観客席の出入り口と言ったところか。
そこから眼下に映るのは、観客席の下半分くらいを埋め尽くしている脈動する血管が浮き出たような卵の群れ。
そしてその中央には寝ているのか伏せた姿勢で鎮座している、家一軒分はあろうかというサイズの白いカエルような魔物。
ようなというのは、フォルムこそカエルなんだけど目や鼻といったものがなく、大きな口があるのみでちょっとキモイ感じだから。
まあ、もしかしなくてもアレがダンジョンイーターだろうと思い鑑定した結果。
名前/デミダンジョンイーター
レベル/52
種族/亜神両性獣
デミ? 亜神? そんなのゲームでもみたことないんだけども?
「どうしたのアビゲイル?」
つんつんと肩をつついて聞いてくるマルガリーゼに気になったことを話してみる。
「いや、あそこのでかぶつ鑑定したんだが、名前の前にデミとか種族に亜神とかみたことないのが出てきて、なんだこれ的な感じでさ」
「……!?」
そう返した途端、マルガリーゼがその顔がさーっと青ざめていった。
どうしたのかと思ったら、急にマルガリーゼがオレ様の腕を強く掴み必死の形相を向けてくる。
「……お願い。今すぐ戻ろう」
「え、いや、急にどったの?」
「どうしたっつーのよマリー?」
「お、お姉様?」
マルガリーゼの豹変にメルナリーゼもリリベルちゃんも戸惑いを隠せないでいるようだ。
「いいから、お願い、早く……!アレはダメなの!!」
小声ながらも語気を荒げるマルガリーゼに、一際強く腕を引っぱられてしまう。
「わっ、と」
その瞬間、オレ様は思わずよろけてしまい、地面に落ちていた石の欠片が爪先で弾かれて小さく宙を舞った。
カツーンカツーンと、小さな音が静かな空間にやけに響き渡る。
……ん? 静かな空間?
ふと気づけば、さっきまで聞こえていたダンジョンイーター、もといカエルイーターのイビキが消えていた。
ってことはもしかして……。
「…………げっ」
うん、首をもたげたカエルイーターとばっちり目があったよ。いやアレに目とかないわけだけど。
あ、なんか両頬をめっちゃ膨らませはじめたけど。
ウイイイィィィィーーーッ!!
「うわ、うるさっ!?」
顔の二倍近く膨らませたと思ったら、突然の妙な絶叫。
しかも屋内? なもんだから、音が反響してイヤホンで大音量を聞いてるかのようにうるさいのなんの。
というかカエルならカエルの鳴き方しろよ。
「思いっきりバレたみたいだし、ここは一度引くということでいい感じ?」
こんな狭い場所で戦うのは色々危険だと思ったので、早々に後ろの三人娘に確認しようと振り向いたところ、そこでは惨事が起きていた。
真っ青な顔で女の子座りにて地面にへたり込んで震えているマルガリーゼ。
泣き笑いな顔で膝が面白いくらいガクガク笑ってるリリベルちゃん。
唯一まともに立っているようにみえるメルナリーゼでさえも、顔色が酷く悪い。
素早く鑑定スキルを発動させたところ三人共に精神系の状態異常になっているようで、その中でもマルガリーゼが《恐怖》状態で《怯え》状態のリリベルちゃんやメルナリーゼより悪い。
ちなみにオレ様は特になにも問題はなかったりするのだが、実際に状態異常にかかるとこんな状態になるのか。
ゲームじゃ単に素早さや防御力等にマイナス補正かかるだけだったのに。恐るべし、リアル世界。
なんて関心してる場合じゃなしに。ここは即決即断が命。
それにカエルイーターの鳴き声が収まったと思ったら、どっから沸いて出てきたのか手足がついたなめくじみたいな白い魔物がわらわら集まってきてるしな。
「おし。マルガリーゼとリリベルちゃんはオレ様が担いでいくから、メルナリーゼは自分で走れそう?」
「は、はい。なんとか走れそうですけど……あの、アビゲイルさんはリリーさんや姉様を担ぐなんて、大丈夫なんですか?」
「もちもち大丈夫に決まってますとも。はーい、じゃ、ちょっと失礼しますよー」
未だ呆然と座り込んでいるマルガリーゼの両脇に手をかけてそのまま持ち上げ、その際に手の平にぷにっと当たるおっぱい様に感謝をしつつ右肩に担ぐ。
「ふぇ!? な、なにが起こったの!?」
お、どうやらマルガリーゼが正気に戻ったっぽい。
さて今度は涙目で膝が笑ったままのリリベルちゃんに近づき、少しかがんでそのほっそい腰に片腕を回して左肩へと担ぎ上げつつ、支え直した手に触れるお尻の柔らかさにありがとうございます。
「うわぁ!? ちょ、どうしたのよアビゲイル!?」
タイミングよくリリベルちゃんも正気に戻ったところで、うわ両サイドから二人のいい匂いがしてきてめっさクンクンしたい! じゃなくて、手早く状況を伝える。
「ダンジョンイーターにバレて、後ろがあんな感じなんで動けない二人を担いで逃げるところですぜ」
ほらみてみ、とばかりにオレ様は来た道の方向にくるりと身体の向きを変え、担いだ二人へ交代にコロシアムの現状を見せてあげた。
「ひっ……! 白いうねうねがたくさん集まって、なんかはみ出た腸が蠢いてるみたい!?」
「ぎゃー! 変に的確な表現するんじゃないっつーの!」
「というわけで二人とも逃げることに意義なし?」
『意義なし!!』
仲良きことは美しきかな。
二人から返事を貰えたことだし、それじゃ逃げるとしようか!
オレ様はメルナリーゼにこくりと頷いて合図を送り、走り出した。
とあるイベントの催しで女の子(妙齢)を担いで走ったことのある作者の感想。
ぐおおおおおっ! 腰がああああああああああああっ!!
小柄でも40kgの重量は腰が砕けそうになりますね。




