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ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。  作者: 隣の斎藤さん。
第一章 ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。 

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第50話/寝顔天使は世界共通。


 長らくお待たせしました! 


 前回から二ヶ月以上経ってしまいすみません!


 そして前回までのあらすじとしましては、マルメル姉妹やリリベルちゃんと決起集会(?)をしていて、またもや寝床の確保を忘れていたアビゲイル!

 

 そんなアビゲイルに手を差し伸べてくれたリリベルちゃんの家に一泊することに!!


 意図しないイベント発生にドキドキなアビゲイルは果たしてエロゲ的な展開になるのか!?


 なったらもしかして運営さんに怒られるのか!?


 極細ポッキーを三本食いしながらお読みください!







 ソファ争奪戦は激しい譲り合い(バトル)の末、しびれを切らしたリリベルちゃんが、


「あーもー眠いのよ! だったら二人でベッドで寝ればいーじゃねーのよ!!」


 という一言と共に、オレ様の手を掴み半ば強引にベッドへと連行されることで終了した。


 ちなみに同禽することに心の準備が出来ておらず、焦りと羞恥から「い、いや、やっぱりソファでいいよ……?」なんて抵抗を試みたものの、


「……あたしね、ご飯と睡眠の邪魔されると殺意が芽生えてくんのよ?」


「すんません」


 リリベルちゃんの据わった目付きに即座に謝った。


 可愛い子に本気で睨まれると、なんか怖さが通常の二倍に感じるのはなぜだろう。


 そんなこんなで一緒のベッドで寝ることになったものの――。


 寝られへんがな。


 はじめて女の子と一緒のベッドな上に、ほとんどくっつくような向き合っている姿勢のおかげで、目の前で目を閉じるリリベルちゃんの息づかいやぬくもりがダイレクトに伝わってきて眠れません。


 その役得、もとい不可抗力でちょっと興奮してしまったのは仕方ないと思うんだ。


 ……無防備に眠るリリベルちゃんの寝顔に乾杯。


 だがしばらくして、リリベルちゃんが反対側に寝返りをうってしまったことで愛でタイムは終了。


 残念に思いつつそのままオレ様も就寝と相成ったわけである。


 もっとも、後ろ髪から覗くうなじが素敵でしばらく愛でていたわけだが。


 そして迎えた翌朝の現在。


 目を覚まして飛び込んできたのは、リリベルちゃんの無防備な寝姿。


「……朝から眼福!?」


 しかしそんな至福の一時は長く続かなかった。


 オレ様がリリベルちゃんの白い肌や細くて綺麗な身体の線等を心の中で称賛していると、ぱちりとリリベルちゃんが目を覚まし、


「あーもー! さっきから黙って聞いてれば人の事褒めちぎってくれちゃって! 聞いてるこっちが恥ずかしくなるじゃねーのよ!!」

 

 なぜか開口一番に怒られた。


 よく見たらリリベルちゃんの頬が赤くなっている。


 というか、


「……あれ? もしかして声に出てたり?」


「思いっきり出てたわよ! こっちが寝たふりして聞き流そうとしてもどんどん言ってくれちゃって!!」


 ううむ。どうやら心の中で称賛していた筈が、気づかないうちに声に出ていたらしい。


 でもまぁ、あれだ。


「ほんとのことだから仕方ない」


「!!? だからそういうことを真顔で言うんじゃねーわよ! 

 それよりもほら、起きるからね! アビゲイルもさっさと支度すんのよ!!」 


 そう言い残し、跳ね起きるようにベッドから飛び出したリリベルちゃんは足早に部屋を出て行ってしまった。

 

 はっはっはっ、照れるリリベルちゃんもかわゆいのぉ。


 とりあえずオレ様もベッドから下り、畳んである服に着替えておこう。


 絹のような肌触りの灰色の長袖シャツに腕を通し、その上からノースリーブの黒ジャケットを羽織る。


 そして意匠が施された黒ニーソを履き、フリルのついた赤いひざ上スカートを腰まで上げて着替えは完了。

 

 相変わらずパッと見は学生服みたいな感じで可愛らしいのだが、その実、素材は伝説級のものばかりでそこいらの伝説級防具と遜色ない防御力であったりする自慢の逸品である。

 

 あの頃は素材集めに有休まで使って頑張ってたことを懐かしく思い出しつつ、今日はマルメリ姉妹やリリベルちゃんと隠れダンジョンの探索をするため、アイテムボックスから愛剣の銀十字の黒剣を出して腰に備える。

 

 この黒剣ももちろんのこと自慢の逸品であり、その銀の十字が装飾された漆黒の刀身もいいけど、金の縁取りがされた濃い紫色の鞘もまたお気に入りの剣だ。 


 よし、と自分のファンタジーな姿に満足したところで、歯磨きでもしようかと思いつく。


 あ、そういえば歯磨き代わりに使えそうな魔法があったな。

  

 ふと思いつきで洗浄ウォッシュの魔法を口の中をイメージしながらかけてみると、これがまたすっきり爽やかに。


 魔法って便利だなぁ。


 そんな感じで身支度を済ませた頃、部屋のドアが開いて桶を持ったリリベルちゃんが入ってきた。


「アビゲイルってばもう着替えたの? 随分と早いわね。

 はいこれ。お湯とタオルがあるから、これで顔を洗うといーのよ」


「おお、ありがたい」

  

「じゃ、ここに置いとくから。あたしはその間に着替えとくのよ」


 小さなテーブルに置かれた桶でタオルを濡らして絞り、顔を拭いていると横から聞こえる衣擦れの音をオレ様の吸血鬼(ヴァンパイア)イヤーが捉えた。


 ちらりとタオルの隙間から横目で見てみると、リリベルちゃんが頭から服を被っている最中で、露わになってるその華奢な背中やくびれがセクシーライン。


 記憶にとどめんと眼力カメラで脳内保存していると、リリベルちゃんの動きが急にピタリと止まり、

 

「……なんだか背中に変な視線を感じるのよ」


 ぎっくし。


「キノセイジャナイカナ?」


「……そういうことにしとくわ」


 一応納得して着替えに戻ったリリベルちゃんから視線を外し、顔を拭き終えたタオルを軽く洗って桶の縁にかけておく。


 すると着替え終えたリリベルちゃんがその桶を持ち、


「じゃあ、あたしはこれを片付けてくるから先に下におりといて。

 朝御飯は広場のお店で済ませるのよ」


「はいはーい」


 軽く返事を返し、部屋を出ていくリリベルちゃんの小さく揺れるお尻、もとい後姿をお見送りする。


 お見送りした後、シーツとパジャマシャツを軽くたたんでベッドに置き、お礼代わりに寝具まるごと洗浄(ウォッシュ)で綺麗にしてから部屋を出た。


 一階へ降りたもののリリベルちゃんはまだくる気配がないので、待ちすがら店内を見て回ってみることにする。


 壁際に二段の棚が並び、その上には数は少ないものの回復薬や解毒薬、聖水の下級版である浄化水等が並んでいた。


 見るだけでアイテム名や効果がわかって鑑定スキル様様である。ありがたや。


 そうしながら店内を色々見ていると、靴が階段を叩く軽快な音が聞こえてきた。


「アビゲイルおまたせ。さ、行くのよ」


「ほいほい。 ……ん?」


 軽く挨拶してリリベルちゃんを見ると、両手で帽子の唾を掴んで目深に被ってる様子がなんかおかしい。


「……なんか顔が赤いみたいだけど、どしたのリリベルちゃん?」


 心配になって下から覗くようにリリベルちゃんを見上げると、その顔は真っ赤になっていた。


 そしてなぜか涙目なリリベルちゃんが睨んできて、


「も、もう! あんたの歌のせいでしょーが! あたし、先行くから!!」


 ぷりぷり怒って足早で外に出ていってしまった。


 しまった。どうやら店内を見て回ってる時に、昨日リリベルちゃんが歌っていた、題して"あたしは可愛い薬屋さん(第32部参照)"を口ずさんでいたのを聞かれたっぽい。


 しかし後悔よりもとりあえず先に追いかけねば。


 追いかけながら、むかし従姉から言われた事をふと思い出す。


 従姉曰く、女の子に恥をかかせたままでいると後々に恨まれて酷い事になる、と。


 具体的には従姉の旦那である義兄(にい)さんがまだ恋人同士な頃、従姉が見た目に似合わずラーメン等を軽く二杯以上食べれる健啖家なことをうっかり友人に話してしまい、それがバレてしまったことがあった。


 それから二週間程、従姉から笑顔で事務的かつ他人行儀な受け答えをされ続けられたという。


 謝罪やプレゼント、ご馳走等を両手で足りないくらいやり続けてやっと許してもらったとか


 義兄(にい)さんは遠い目をしながら、当時はストレス性胃腸炎と十円ハゲが出来て大変だったよ、と語ってくれたもんだ。


 うん。そういうのだけは避けたいな!


 ならば全力全開で謝罪あるのみ!!


「待って待ってリリベルちゃん! 謝るから!あーやーまーるーかーらー!!」


 オレ様は急いでリリベルちゃんの後を追ったのだった

 




 ちなみに作者、執筆は大体スマホでやって修正はプレビュー見ながらPCでやっております。


 なのでリアルで忙しかったり疲れたりゲームしてたりすると、PCに向かう時間が少なくなってしまい遅筆で申し訳ありません。


 鋭意努力しながらうちのアビゲイルが面白可愛く書けるか頑張っていこうと思います!


 


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