第49話/女の子+裸シャツ=破壊力ー!!!
どうも長い間お待たせしました!
お泊り回がなぜか長引いてしまうのは、やはり女の子の可愛さが映えるゆえだろうか……。
ふきふき、ふきふき。
リリベルちゃんへの内股発言で怒られた後、気を取り直して髪や身体を拭くために使う道具の説明を受け、只今パンイチ姿で自分をふきふきなう。
温かいタオルで身体を拭くだけなのだが、これが思ったよりすっきりして気持ちよかったりする。
ちなみにリリベルちゃんに背中を拭いてあげようかと提案してみたのだが、
「……ありがとう。でもアビゲイルの目と手がなんか怖いからやめとく」
と、ジト目で断られてしまった。
女の子に触れられるとちょっと期待に満ちた目をしてしまい、こう円を描くように背中を拭くジェスチャーをしたのだが、なにかいけなかったのだろうか。
どうにか拭く術はないものかと考えたが、その間にリリベルちゃんがそそくさと着替えてしまったので残念にも断念せざるを得なかったのが無念。
しかしベッドの上に座るリリベルちゃんを横目で見て思う事がある。
「……スーパー眼福」
思わず呟いてしまったのは仕方あるまい。
なぜならパジャマに着替えたリリベルちゃんのその姿。
それがまさかのYシャツ姿なのだから!!
まさかこの世界にも裸シャツのジャンルが存在するとは……!
いや正確には下着つけてるから裸ではないけれども!!
そして色は白ではなく光沢のある黒で、なんというエキゾチック!
それがリリベルちゃんの紫色の髪と相まって大人っぽくてエロ可愛いさがすごい。
おまけにそんな格好をしながらベットに女の子座りしてるもんだから、見えそうで見えない裾のチラリズム。
「…………なんか、アビゲイルからよからぬ視線を感じるんだけど?」
「ソンナコトナイヨー?」
一応誤魔化そうとしたものの、胸元までシーツを手繰り寄せられチラリズムが隠れてしまった。くっ。
まあさすがにこれ以上は不用意な発言して警戒されるのも悲しいので、リリベルちゃんから視線を戻そう。
手早く体を拭き、渡されたパジャマに着替えてベッドに腰掛ける。
ちなみにオレ様もYシャツパジャマ使用。色は白。
着てみてわかったが、シルクのようななめらかな肌触りが心地いい。
しかもなんか効果が感じられたので、こっそり〈鑑定〉スキルを発動。
名称/安眠パジャマ(D)
スキル/安眠効果(弱)萌エロス(弱)
おお。Dグレードの品質で効果が弱とはいえスキルがついてるのは珍しい。
そしてスキルの安眠はわかる。
ゲームでも宿屋や休憩時の回復時に微増効果があるスキルだったし。
しかしなんだこの、萌えってスキルは。みたことないんだが。
ちょいとスキルを鑑定。
【萌エロス(弱):女性(未成年~妙齢)が装備することでちょっとエロく見えて萌える効果がある。紳士に効果は抜群だ…!】
素晴らしいスキルだった。確かにオレ様にも効果は抜群だ。
ちなみにゲームの場合だけど、Cグレード以下はスキルや魔法効果はついているものが極端に少ないのが基本だったりする。
それだけにもしスキルが一つでもついていれば、同じアイテムと比べて数倍から数十倍の高値がつく場合があるほど。
武器装備以外にも、錬金の素材としても重宝されるので高値になる理由の一つでもある。
「すごいなこのパジャマ。二つもスキルがついてるし」
「うそ!? アビゲイルほんと!?」
なんだか急にリリベルちゃんが興奮気味に食いついてきた。
しかもシーツを取っ払って前屈みに迫ってくるもんだから、Yシャツの襟元からのぞく胸の谷間が素晴らしい…!
「ほんとほんと。というかリリベルちゃんは知らなかったんか?」
「え、うん、まあ一応鑑定スキルはあるんだけど、まだ詳しいことまではわかんなくて……。
それにしても、あたしが作った物にスキルがついてるなんて、なんだか信じられねーのよ」
そう言いながらオレ様が着ている白Yシャツの裾を捲ったりされると、もろに下着が見えたりしてちょっと恥ずかしいんだが。
あとスキルが見たいならこういうアイテムがありますよ?
「はいこれリリベルちゃん。ちょっとこれつけてシャツを見てみーよ」
スキルが気になるだろうと思い、速攻でGPカタログから探し当てたスキルや状態を見ることの出来るアイテムを渡す。
鑑定できるオレ様にはGPの無駄遣いかもしれないが、女の子に喜んでもらえるならそんなの関係なし。
「なにこれ? 眼鏡?」
オレ様から眼鏡を受け取ったリリベルちゃんは、早速かけてぐはぁっ!
下着シャツに眼鏡でこんなに破壊的なエロ可愛さになるとは、ありがとうございます!
「えええっ!? なにこれ! スキルが見えるじゃねーのよ!?
えええっ!? あたしの作ったシャツにスキルがついてるじゃねーのよ!?」
その可愛さに蕩けそうになる顔をなんとか無表情でがんばっていると、リリベルちゃんが突然に驚きの声をあげた。
しかも眼鏡とシャツにダブルビックリ。
というか、スキルが見えるくらいでそんなに驚くことなんだろうか?
「効果はわからないけどスキルが見える……。
アビゲイルこんなのもってるんだ。うらやましーのよ」
「え、いや、それただのコモン級のマジックアイテムだし?よかったらあげるけど」
オレ様が必要なくて見知った相手が必要な物なら、昔から貴重だろうがそうでなかろうが譲ってたもんだし。
むしろリリベルちゃんにはずっとつけててもらいたいもんである。
「はえ!? あ、あんたバカじゃねーのよ!!」
思ってもみない剣幕でリリベルちゃんが迫られる。
な、なんか怖いんだけど?
「コモンとはいえ立派なマジックアイテムなのよ!?
捨て値でも数万ゴールはくだらないのに、それを簡単にあげるとか言っちゃだめじゃねーのよ!!」
「ご、ごごごめんよ!」
なんだか母親に金銭感覚のことで怒られたような気分になって、自然と謝ってしまう。
「え、いや、ちょっとアビゲイルってば、そんな顔するんじゃねーわよ……!」
するとリリベルちゃんが突然、驚いたような焦ったような表情になり慌てだした。
え、オレ様、別段表情変えてないつもりなんだけど。
オレ様の顔がどうかしたのか? と聞こうとしたのだが。
「うっ、ひっ……」
出てきたのは、なぜか嗚咽と目じりに浮かぶ涙。
あれ!? オレ様泣いてる!? なぜに!?
「あ、あーもー! 怒って悪かったわよ! だからそんな捨てられた子犬みたいな顔するんじゃねーわよ!
罪悪感が半端ねーじゃねーのよ! ほら、あたしが悪かったから泣き止んで!!」
どこか理性と感情がミスマッチしてるような感覚に戸惑っていると、不意にリリベルちゃんの胸元に抱き寄せられ、頭を優しく撫でられた。
ふんわりした優しい匂いと頭を撫でられる感覚に、戸惑いざわついていた気持ちが次第に落ち着いていく。
ううむ。これが女性の母性という力だろうか。
そして落ち着いてきたことで感じられる、頬に伝わるリリベルちゃんの柔らかく温かい二つの母性がまた素晴らしい。
「…………落ち着いたみたいでよかったけど、なんでそんなにやけ笑いしてんのよ」
調子に乗って二つの母性にちょっと顔を押し付けたり小さくすりすりしていたら、リリベルちゃんに引きはがされてしまった。
ぬう。もうちょっとこの幸せを堪能していたかったんだけど、惜しい。
「まったく、さっきまで泣いてたのになんでそんな幸せそうな顔してんのよ。わかんねー子だわね」
いやだって、あれは外見が女の子だからしてもらえたことであって、これが男ならされないできないありえないことでもあるしね?
「可愛い子に抱きしめられて幸せを感じない男はいないよ?」
「いやあんた女でしょーが」
そうでした。
まあでも本心は男だし、これが素直な感想なので仕方ない。
だからちょっと呆れた顔をしないでおくれ。
「ほんと変わった子よね。ほら、これは返しておく…………わかったからそんな物悲しい顔するんじゃねーわよ!
言っとくけど借りとくだけだからね! 借りとくだけ!!」
おっし! 泣き落としでリリベルちゃんに受け取ってもらえた。
これで眼鏡可愛い姿を見られるってもんよ。
あ、ついでにこれも渡しておこう。
「あとこの収納の指輪もどうぞ。容量は少ないけど、念じるだけでアイテムの出し入れできる便利グッズ!いまならもう一つついてくるおまけつき!」
「なにまたさらっとマジックアイテム渡してんの!?
さすがにもう受け取れねー……くっ、わかったわよ! わかったからそんなあざとい泣き顔するんじゃねーわよ!!
でも一個!一個だかんね!?」
泣き落とし第二弾も成功した模様。
ジト目なリリベルちゃんが、オレ様から受け取った指輪を右の人差し指に嵌め、眼鏡を外してしまってくれた。
しかし受け取ってくれたのはいいけど、なんの装飾もないただの丸い銅色の指輪なもんで、洒落っけがないのがちょっと不満。
あとでもっといいデザインの物を贈るとしよう。
「はぁ……なんか寝る前にどっと疲れた気分だわよ……。
とりあえず、もう寝るからね」
もうこの話は終わりと言うように、リリベルちゃんが立ち上がり白いタンスの元へ向かうと、引き出しから毛布のようなものを取り出して戻ってくる。
「はいこれ。ちょっと古びてるけど綺麗だから。これ使っていーのよ」
そう言って渡されたのは、使い込んでる感のある色褪せた毛布。
毛布を胸元に抱き寄せると、ふわっと香るリリベルちゃんのいい匂い。
きっと普段使ったりしてるんだろう。
……ちょっとドキドキしてきたのはしょうがないと思います。
「じゃあ寝るわよ。……って、なんであんたがそっちに行くのよ?」
寝るということで、オレ様がベットからおりてソファへと腰を下ろしたらリリベルちゃんから待ったがかかる。
いや、寝ようとしてたんだけども?
「あんたはお客さんなんだから、こっちのベット使うといーのよ」
うん。勧めてくれるのはありがたいんだけど、女の子を差し置いてベッドで寝るというのは男心に抵抗がありまして。
「いやいや、家主を差し置いてなんてもっての他だし。オレ様はソファで寝るって」
「なに言ってんのよ。アビゲイルには色々お世話になってるんだし、遠慮しなくていーのよ」
「こっちも無宿のところを助けてもらったわけだから、相殺でやっぱりソファで寝るよ」
「そんなの気にしなくていーのよ。だからあんたがベッドで寝なさいよ」
「いやいや」
「いーから」
『…………』
しばし見つめ合う二人。
譲り合い、勃発の予感。
じ、次回こそはお泊り回を終わらせて見せる!




