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ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。  作者: 隣の斎藤さん。
第一章 ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。 

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第47話/テンプレはお呼びじゃない。

どうも遅くなりすぎました!




 どうも。爽やかな早朝の目覚めと共に、大変素晴らしい景色を堪能しているアビゲイルです。


 その景色とはほんの数センチ目の前で、安らかな寝息をたてているリリベルちゃん。


 艶やかな紫色の髪が数本垂れさがったその寝顔は、あどけない可愛らしさに溢れており、はだけたパジャマからのぞく華奢な首筋や肩が艶やかだ。


 ちなみに部屋の窓の木戸が閉められていて薄暗いが、吸血鬼の特性である夜目により、わずかな隙間から漏れる光でもはっきりくっきり見えている。


 そしてちょっと下に視線をずらせば、服の間からのぞく胸の谷間が見えるのが素晴らしい。


 それもこれも昨日の晩にあった怪我の功名というやつだろう。


  

――昨日の夜の事――


 明日の依頼の決起集会も兼ね、オレ様のご馳走でリリベルちゃんやマルメル姉妹と楽しい夕食を取っていた時だった。


 それはマルメル姉妹の冒険の話や、リリベルちゃんの調薬や趣味の話などを聞いているうちに外が暗くなった頃。


 何気ないマルガリーゼからの一言で、オレ様は気づかされた。


「そういえばアビゲイル。

 あなたって、泊まる宿は手配したの?」


「…………あ」


 おおう。またもや忘れてたよ宿屋の確保。


 いや、ちゃんと自分の中で予定は立てていたんだよ。


 午前中はマルメル姉妹に付き合いつつ自分も買い出しをして、午後にどっか適当な宿屋を見繕えばいいかっていう大雑把な予定だったけども。


 それがチャラ貴族との決闘になったり、その後にエルモに捕まって話し込んだりしてるうちにすっぱり忘れてたけども。


「あによ?アビゲイルってば、泊まるとこないわけ?」 


 リリベルちゃんが怪訝な顔で聞いてくる。


「そうみたいなのよ。昨日だって宿取ってなかったあげく、野宿でもするとか言いだしたのよ?」 


「ええ、あれはまるで兎が野犬の巣に潜り込もうとするみたいで、聞いててゾッとしました」


 ……暴露しちゃイヤン。


 まあオレ様もね?昨日寝る前に元の世界を参考にして、自身の行為を振り返ってみたわけだよ。


 もし知り合いの可愛い女の子が、「終電逃したから、ちょっと治安が悪いけど路上で一晩明かす」なんて言い出したのを考えてみた結果。


 うん。まず止める。全力で止める。


 最終的にはお金払ってあげてでもネカフェあたりに叩き込むかもしんない。


 そう思うと、昨日のファンナさんやエルモ、マルメル姉妹の反応が理解できる。


 理解できるから、リリベルちゃんは「ないわー」みたいな目でこっち見ないで。


 反省してるから。


 そんなリリベルちゃんが「じゃあさ」と前置きし、


「アビゲイル、あんた今夜はあたしんちに泊まりなさいよ」


 こともなげに言った。


 ……なんですと?


「い、いまなんて?」


 思わず聞き返してしまう。


 いやだって、女の子からお泊りのお誘いですよ?


「だから、泊まるとこないならうちに来なさいって言ってんのよ」


「え、いいのか? オレ様が泊まるんだぞ? 一つ屋根の下だぞ?なんか間違いがあるかもしんないぞ?」


 元の世界でほありえなかったお泊まりイベントに、口調は冷静でも内心はドキドキである。


「いや別にいいわよ。つーか間違いもなにも、あんた女でしょーが」


 あ、そうだった。


 今オレ様、我が子(ゲームキャラ)な女の子だったんだ。


「あによ。それともあたしんちじゃ嫌なわけ?」


「い、いや、そういうわけじゃなくてだな?」


 遠慮しすぎたのか、リリベルちゃんがちょっと顔をむくれさせる。


 しかしなんというか、嬉しい反面なんか悪いなぁと思ってしまう自分がいるんだよなぁ。


「よかったわねアビゲイル。リリーのとこなら安心ね」


「泊まるとこが見つかってよかったですね、アビゲイルさん」


そんなことを思っていたら、マルメル姉妹から賛成された。


……まあ二人からの賛成もあることだし、あんま深く考えなくてもいっか?


それにあんまり遠慮し過ぎてリリベルちゃんの好意を無駄にするのもなんだし。


なによりこんなお泊まりチャンスは二度とないかもしれない!


「えーっと、それじゃあリリベルちゃん。お世話になります」


「わかったわ! 任せなさいよ!」


 オレ様が軽く頭を下げると、リリベルちゃんが腰に手を当て形の良い胸を反らせて得意げに答えてくれた。


 ううむ、成り行きでお泊りになったとはいえ、なんともありがたい限り。

 

 なのでここは感謝の意味を込めて、


「それじゃお礼と言ってはなんだが。おばちゃん! はちみつパンケーキと、苺ジャムのソースがけクッキーを四人分よろしく!!」


 この店の人気デザートを注文すると、マルメル姉妹とリリベルちゃんから「わあい」と歓声が上がった。


 しばらくして注文したデザートが届き、それを食べつつ三人の蕩けるような甘い笑顔に心の舌鼓を打っていた時、無粋な一言が響いた。


「ようよう! ずいぶんと景気良さそうじゃねえか!!」


 その声の方に視線だけ送ると、店のカウンターで飲んでいたまさにザ・荒くれ者と言わんばかりの粗野な装備をした大柄な男が、席から立ち上ろうと腰を浮かべようとしているのが見えた。


これはあれか。ラノベのテンプレとも言える絡まれイベント発生だろうか?


だがしかし、いま三人を愛でている状況でそんなものはいらんのである。


だからして、三人がデザートに夢中になっている隙に、


(こっちくんな)


という思いを込めた視線を向け、スキルの《威圧》を発動させてみた。


「俺にもなんか奢――――」


大柄な男がこちらに振り向きなにか言いかけた瞬間、急に腰が砕けたように席に座り込み、そのまま崩れるようにカウンターに突っ伏した。


どうやら気絶したようで、白目でこっちを向いてる横顔が気持ち悪い。


「ちょっと、お客さん!ここで寝るんじゃないよ!?

あーあー、飲みかけこぼして。ほら、起きな!!」


そうとは知らずに、ウェイトレスのおばちゃんが手にしたお盆で大柄な男の頭をぼんぼこどつき始める。


まぁ、しばらくしたら痛みかなんかで気がつくだろう。


「どうしたのアビゲイル?」


「ん、いやなんでもないなんでもない」


いつまでも起きない大柄な男の頭をついにお盆の角でどつき始めたおばちゃんを横目に、オレ様は再び三人娘を愛ではじめるのだった。


やはり女の子の笑顔はいいもんである。



次回、いよいよお泊りシーンです!!



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