第44話/本気の暴露は大体引く。
前回の投稿で一話で初の2000PVを超えたました!
またブクマは300件を超えてありがたい限りです!!
これからもちょこちょこがんばっていく所存!!
「ではこれから、公開”私”刑を行う」
『ひいいいいいっ!!』
努めて明るく言ってみたんだけど、地面に跪いたままのチャラ貴族をはじめ男共から悲鳴があがった。
なんか泣きはじめたり、遠い目をしたりする奴がいるんだけど、もしかして殺されるとか思ってるんだろうか。
ちょっと鬱陶しいので、殺す気はないと教えといてやるか。
「命までは取ろうと思ってないから安心していいぞ?」
「そ、それは本当か!?」
「よ、よかった……!」
「生きて帰れる……」
「……まあ、ある意味死んじゃうかもしれないけど」
『今なんつった!?』
小声で言ったのに耳いいなこいつら。
さっきの一言が聞こえたせいで、嘘つきとか人でなしとか騒ぎ始めるチャラ貴族達。
「やかましい負け犬共。それでは全員立ってチャラ貴族を先頭に横一列に並ぶように」
「い、一体何をする気だ!」
「駄目だ! 逆らえねえ!」
「やだあああっ! 死にたくねえよ!!」
泣き言を叫びながらも、しばらくしてオレ様の前に悲壮感や絶望感を顔に浮かべた男共の壁が出来上がった。
自分でやったこととはいえ、目の前でいい歳した男共が顔を歪めて泣いているのは非常に見苦しい。
よし、とっとと終わらせてしまおう。
「初めに言っとくけど、オレ様の魔眼<支配眼>は抵抗力の低い者を強制的支配下に置く能力だ」
まあ正確に言うなら、魔眼の力と比べて抵抗値が高いと一時的な支配、中くらいだと身体の支配、低いと意識と身体の完全支配ができたりする。
ゲームでは支配した後は、簡単なコマンドしか操作できなかったが、リアルになったせいか感覚的に完全支配しつつも意識は残したりといった細かい作業ができるようになっていた。
ただし使用した時に感覚的に理解したことだが、ゲームと同じで一日の回数制限があるため多用はできないようだった。
「なのでわかってるとは思うが、抵抗は無駄なので見苦しい真似はしないように。
じゃないと、うっかり命を落としてしまうようなことを命令するかもしれないからな。
わかったか?」
オレ様の小首を傾げてからの美少女スマイルが効いたのか、顔を青ざめさせたチャラ貴族と男共が激しく首を縦に振る。
素直でよろしい。
「それではこれから、今から言う内容を順番に暴露してもらう。
暴露した後は負けを認めるかどうかを宣言し、認めたなら楽にしてよし。
ちなみに全員が負けを認めない限り、暴露は周回するのでそのつもりで。
それじゃ暴露する内容は――――」
オレ様が暴露する三つの内容を説明していくと、チャラ貴族達の顔から段々と血の気が引いて青くなっていく様子が見て取れた。
後ろでは姉妹やリリベルちゃん、エルモまでが「うわぁ……」と引いていたりするけど、気にしないで続ける。
あと説明が終わりかけの時に、フライングで負けを認めるようなことを言いだす奴がいたので、魔眼の力で「全部の問いに答えるまでは、負けを口にするな」と命令しておいた。
「よし、それでは最後尾の人からはっきりした声でレッツ暴露、いってみよう!」
笑顔で宣言するオレ様とは裏腹に、チャラ貴族達の顔がこの世の終わりを迎えたような表情になり、最後尾の男がゆっくりと暴露をはじめたのだった。
―――― 三十分後 ――――
死屍累々と横一列に様々な姿で、地面に崩れ落ちているチャラ貴族達の姿があった。
誰もが共通しているのは、心の底から、いや魂そのものから絶望して光を失った二つの瞳。
「いやまあ、元気出せよお前達……」
いたたまれないのでとりあえず声をかけてみるが、チャラ貴族達は無言のまま虚ろな目をしているばかり。
そして辺りには再び痛いほどの静寂が訪れる。
…………どうしよう、この空気。
しかし自分でやっといてなんだけど、引いた。心の底から引くほどの暴露だった。
いつの間にか姉妹、リリベルちゃんと合流したエルモ達が離れた場所で寄り添い、生きる屍と化したチャラ貴族達をゴキブリの死骸をみるような目で見ている。
ちなみに暴露の内容は、
一、女性の身体で興奮するところを暴露。
二、現在気になっている又は好きな女の子の名前を暴露。
三、誰にも言えない言いたくない秘密を暴露。
というものだったわけだが。
一の問いに関して、多数派が胸とか尻とか背中とかに興奮するという暴露があったが、それはまあいいとしよう。
外見は我が子でも中身が男のオレ様にもそれはわかる。
でもなんだ。少数派の脇の下とか足の裏って。
マニアックにも程があるだろ……。
姉妹やリリベルちゃんなんか、マニアックな回答を聞くうちに少しずつ顔を引きつらせていたぞ。
そして一の問いに全員が答えた終わり際、
「……キモイ」
なんてマルガリーゼに呟かれ、少数派の男共が涙していたが、それは仕方ないと思う。
二つ目の問いの好きな女の子に関しては、まあなんというか、意外に女子側で恋愛トークのような感じで盛り上がった。
顔見知りや知り合いの名前が出るたびに、きっかけはなんだったのかとか、どういうところが好きなのかなどという質問が男共へ飛んでいた。
はじめは答えようとしなかったので、オレ様が”聞かれた事に答えるように”と魔眼の力を使用すると頬を赤くしながら答えていた。
チンピラ顔の赤面とか誰得。
その質疑応答の中で、
「え、あのお店の女の子? あの子って確か彼氏いたわよ?」
「ああ、あそこの女性ですか。…………既婚者ですよ?」
「その子ならつい先週、意中の人と結ばれたって喜んでたんじゃねーかしら」
「うちのファンナですか? 私にぶち殺されたいんですか?」
マルガリーゼ、メルナリーゼ、リリベルちゃん、さらにエルモからから放たれた無慈悲な一撃が、次々と男共を撃墜していく。
恐るべし、女の子の情報網。
もう気力もHPもゼロなんじゃないかと思われた男共だったが、無情にも最後の質問がとどめをさすように開始され、順番に答えていく。
「昨日……おねしょしました」
しょっぱなから痛々しかった。
しかしそんなものはまだ軽い方で、
「全裸になったの時の、股間の爽快感が好きだ……」
「昔、酒場で仕事してた時に、女のお客さんが使った洗い物のコップに、間接キスをしたことがあります……」
「女性の下着を履いて寝るのが、快適です……」
「泥酔した時に、男の冒険者と……ディープキスしたことがある……」
聞いてる方がもうやめろと言いたくなるような、珍解答から変態解答まで様々なものがでてきた。
まあオレ様は最後まで聞いたけど。
途中から耐えがたくなった姉妹やリリベルちゃんが、段々と離れていく様子がシュールだったのを覚えている。
そうして答え終えた男共は、例外なく負けを認めた後、その場に座り込んだり倒れ込んだりふさぎ込んだりして虚ろな目をして動かなくなってしまったのだ。
声をかけても反応ないし、一応全員が負けを認めて決闘としての決着はついたものの、一体この場をどうしたらいいのか。
ここは立会人のエルモに聞いてみよう。
「おーいモーちゃ、ギルド長。この状況はこっちの勝利ってことでいいのか?」
「あ、そうですね。それでよろしいかと。
あと魔眼の影響があるうちにその変た、人達をどうにかしてくれると助かりますね。
後の人が使えないので」
よし。立会人からの容赦ない判定が下ったことだし、オレ様もこいつらとあんまり関わりたくないのでさっさと済まそう。
「全員、素早く整列!」
魔眼の力を経たオレ様の言葉に、生きる屍だったチャラ貴族達がバネに弾かれたがごとく立ち上がり、小走りで横一列に整列していく。
チャラ貴族を先頭に整列した男共の顔に"これ以上なにかする気か……"という怯えた表情が見えるのは、多分気のせいじゃないだろう。
随分怖がられたもんだな、と思いつつ、オレ様は少し不安を拭ってやるかと口を開く。
「立会人のもと決着はついたことだし、これ以上オレ様からなにかすることはない。
それとさっきの暴露のことはオレ様を含め、この場にいる者は他言するようなマネはしない事を誓ってやろう」
後ろを振り向き、姉妹とリリベルちゃん、エルモに"それでいいか?"といった意味を込めて視線を送ると、四人とも頷いてくれたので大丈夫だろう。
チャラ貴族達もどこかほっとした表情を浮かべている。
だがしかし、
「もしこのことを根にもって、オレ様の友達に下手に報復や嫌がらせをしようもんなら、直接間接を問わず今日の暴露の内容を文書化して公衆の面前に張り出すので覚えておけ。いいな?」
最後の言葉に念押しの意味を込めつつ釘を刺しておく。
それを聞いたチャラ貴族達はただただ力なく頷くだけだった。
そしてまた悲壮感を帯びた空気が漂う。
えーい辛気臭い!
「あのな! 将来が見えないことに燻ってるより、今の自分を磨いてみろ!
宝石だって磨きあげてこそ宝石なんだ、お前達にもその可能性はある!
今の状態に焦って諦める前に、経験を積んで学んでいけ! そうすれば見えない道も見えてくる!!」
あかん。あまりにもダメな感じだったので、勢いでつい言ってしまった。
「……僕達でも、磨けば宝石のように輝けるだろうか」
呟くように問うチャラ貴族の目には、うっすらと期待の光が灯ったように見える。
やめろ。そんな目すんな。適当に言ったのに。
「うんまあ、それこそお前次第じゃないか?」
「そうか……」
そう呟いて視線を落とすチャラ貴族。
突き放すような物言いだが、こればっかりは本人の努力次第だから仕方ない。仕方ないじゃないか。
「よし。それでは解散!」
これ以上の辛気臭い雰囲気は勘弁だったので、ちょっと強引だがこの場を締めた。
解散の言葉と同時に魔眼を解除してやると、身体の自由が戻ったチャラ貴族達はのろのろと肩を落としながら訓練所を去っていく。
まあ、あの様子なら今後ちょっかいを出してくることもないだろうと思われる。
「ふぅ。これにて一件落着!」
「そうですね。無事に終わってなによりです」
いつの間にか側にいたエルモが労いの言葉をくれた。
うん、それはありがとうなんだけど。
なにゆえオレ様の肩を後ろからがっちりと掴んでいるのか。
「それでは今回の決闘について、ゆっくりお説教しましょうね」
「え"、いやそれはぁ……ア、ハイ」
なんとか言い逃れしようと後ろを振り返るも、いい笑顔なエルモの笑ってない目が怖かったので即座に頷きましたまる。
肩におかれた手が離れたと思ったら、今度はオレ様の手を握りそのままエルモが歩きだす。
「え、今すぐすんの!?」
「当たり前じゃないですか。
明日からは調査に向かわれるんですし、後にしてうやむやになったら困ります。
あ、ちなみに彼女達はお説教済みで、アビゲイルさんとは後で合流してもらうことになっていますので、お気になさらず」
引っ張られる様に後についていく途中、姉妹やリリベルちゃんと目があったのだが。
リリベルちゃんとマルガリーゼは、抱きつくように両手を握りあいながら青い顔をした二人と、お見送りのように白いハンカチをヒラヒラとさせたメルナリーゼに見送られてしまった。
いや、あの怯えようって、いったいどんなお説教をしたんだよエルモさん。
オレ様もこれからそれを受けるのか、と気が重いままエルモに連行されていくのだった。
最近復帰したPSO2に再びはまっております。
シップ/ソーンでkanan@yamiというのを見かけたら、軽い気持ちで声をかけてやってください。




