第40話/類は友を呼ぶ?
作者も過去に木造校舎の薄いベニヤ板のドアを、内開きと知らずに外に向かって開こうとして蝶番を破損させたことがあります。
形だけは直してダッシュで立ち去りました。
次に開ける人ごめんよ。
「ま、魔道具なんて高価な物、受け取れないわよ!」
「あ、私は遠慮なく頂きますね」
「あたしもありがたく貰うわ!」
「あれ!? 私だけ遠慮してる!?」
決闘に秘策ありというリリベルちゃんも加わり、四人で訓練所に戻ったところで、安全対策にとGPと交換した魔道具を三人にあげようとしたところ、そんな会話がされた。
ちなみにこのアイテム、ゲームだったら序盤の魔物やダンジョンから入手できるし、消費したGPも一つ100Pだったので、大したものでもない。
しかし異世界ではその価値が違うようで、マルガリーゼがなにやら遠慮しまくっている。
「だ、だって魔道具だよ!? アビゲイルには色々してもらってるのに、これ以上なにかしてもらうのは気が引けるじゃない!!」
うーむ。真面目なのは好ましいのだけど、この場合ちょっと話が進まなさそうだ。
というわけで、
「じゃあ、魔道具を貸し出すってことで。それなら特に問題ないし、どうだろ?」
「そうですね。これ以上は押し問答ですし、姉さまもそれで納得されては?」
「そうよマリー。あんまりアビゲイルを困らせちゃダメよ?」
「あれ!? なんか私が駄々こねてるみたいになってる!?」
皆からなぜか諭されたマルガリーゼは渋々ながらも魔道具を受け取り、小さな声で「……あ、ありがとう」と言ってくれた。
なんか親戚からのお年玉は嬉しいけど素直になれなくて遠慮がちに貰う子供みたいで可愛い。
「それにどうやら、相手の方も到着したみたいだしな」
実は少し前から、ギルドへ入ってきた複数の気配を感じていたりする。
冒険者パーティーかと思いもしたが、気配の一つにあのチャラ貴族のものを感じたので間違いないだろう。
訓練所の扉を四人で見ていると、間もなくガチャリとドアノブを捻る音が聞こえ、
ごっがっ。
扉は開かれることはなく、内開きの扉を外へ開こうとしたあげく、開かない扉に突進してぶつかったっぽい音が聞こえたのだった。
……どっかの誰かさんも同じことしたっけな。
姉妹も同じ事を思ったようで、その視線が自然とリリベルちゃんへと向けられる。
当の本人は三人の生暖かい視線を受け、バッと帽子の左右の唾を両手でつかみ、顔を隠すように下げたのだが、いかんせんその真っ赤に染まった頬までは隠せていない。
「こ、こっち見るんじゃねーわよぉ……」
弱々しく抗議するリリベルちゃんかわゆす。
そんなリリベルちゃんを愛でるのも束の間、訓練所の扉が開かれ、やっぱりというか金髪をなびかせたチャラ貴族が入ってきた。
ちなみに扉にぶつかったのはチャラ貴族らしく、額を赤くしていたりする。
「おや、先に来ていたのかい。まあ、貴族である僕を待たせまいとする心掛けだけは誉めてあげよう」
来て早々に勘違いがひどい。
「おいおい。決闘っていうからどんな相手かと思えば、ガキ共じゃねえか」
するとそんなチャラ貴族の後ろから、十人程の武装したガラの悪い男達が入ってきた。
チャラ貴族と共にオレ様たちの前まで来た男達が、こちらをみて口々に気合い入れてきて損しただのあんなの俺一人でも余裕だのとほざきはじめる。
中には事故にみせかけて服をむちまおうぜとかいう奴もいた。
張っ倒してやろうか。
「ち、ちょっと! その人数はなんなのよ!?」
「んー? 人数がどうかしたのか? この決闘に人数制限なんかなかったはずだが?」
「そ、それは……そうだけど……」
マルガリーゼが食ってかかるが、チャラ貴族の腹立つどや顔と共にさらりとかわされてしまう。
まあこっちもなにげにそれを利用してリリベルちゃんも加えたわけだけど。
それにしても、
(扉を開き損ねてぶつかったくせに、よくあれだけどや顔できるよな。ダサいのに)
(ああ、それは私も思いました。しかもよくみたら涙目ですよあの人。ダサいですね)
(あたしが言うのもなんだけど、あれじゃかっこつかねーわよ。ダサくて)
(そ、そんなこと言ったらかわいそうだわ。ダサいけど)
「きみたち、なにをこそこそしている!言いたいことがあるならはっきりしたまえ!!」
姉妹やリリベルちゃんと小声で話していると、チャラ貴族が叫んできた。
意外といい耳してるじゃないか。
なのでオレ様はリリベルちゃんや姉妹と顔を見合わせ、さん、はい、と声を揃えて、
『どや顔、だっさい』
「はっきり言うなああああっ!!」
はっきりしろとかはっきりするなとか、どおせえ言うねん。
「ほ、ほんとに君たちは僕を怒らせるのが得意なようだね。
しかしまあそんな態度もこれまでだ。この戦力を前にして、君たちに勝ち目はあるのかな?
もし謝罪して負けを認めるというのなら、痛い目をみなくて済むぞ?」
「なーに言ってんだか。それはこっちのセリフだっつーの。
まず大体こんな昼間からまっとうに働きもせずに、こんなことしてるチンピラみたいな連中に負ける要素が見当たんないし。
そんなんじゃいつまでたっても自立できないし、将来も明るくないぞ、お前等」
最後に何気に思いついたことを言ってみたら、半分程の男共が地面を見つめるように項垂れ、震える声で叫んだ。
『か、母ちゃんと同じこと言いやがって……!!』
言われてるのか、お前等。じゃあ、なんとかしろよ。
「それにいい年してる人もいるみたいだし、いつまでもそんなことしてると彼女出来ない上に、下手すりゃ一生独り身だぞ?」
その一言を告げた瞬間、チャラ貴族をのぞくすべての男共が地面に膝を着いて静かに泣き始めた。
やめろ。泣くな。男だろ。
しかしシュールな光景が出来てしまった。どうしよう。
「いや、今のはいくら何でも酷いと思うぞ。真実だが」
「アビゲイル、もうちょっと言葉を選んであげた方がいいわよ? 真実だけど」
「さすがにこれはいくらんでもかわいそうかも……。真実だとしても」
「そうですね。敵ながら少し哀れですね。真実ですが」
いや、チャラ貴族やリリベルちゃんに姉妹も大概酷いからね?
つーか追い打ちかけてどうする君達。
その時、訓練所の扉が三度開き、OL風な格好をした見知った人が姿を見せ、
「決闘だと聞いて来てみれば……。なんですかこの有り様は。冴えない男達が項垂れて見苦しい」
『がはっ……!!』
爆乳のエルフことギルド長エルモが嘆息気味に投げた言葉は、見事に男共へのトドメの一球となったのだった。
ようやく揃った決闘をする者達!
果たして決闘でなにかがおこるのか!
チャラ貴族含め男達に未来(命)はあるのか!
マンゴープリンでも食べながらお待ち下さい!!




