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ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。  作者: 隣の斎藤さん。
第一章 ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。 

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第34話/忘れた頃にフラグはやってくる。

デスマのせいで結構遅くなりましたが、なんとか投稿です!!



 リリベルちゃんと明日の朝に門の前で待ち合わせする約束をし、姉妹と一緒に外へ出た。


 もちろん半額にしてくれたアイテムは三人とも購入済みである。


 外に出るとお昼時が近いのか、広場の方から香ばしい匂いがただよってきたので、三人で昼食を取りに広場へと向かうことにした。

 

 その前に漂ってきた匂いにマルガリーゼのお腹が、きゅるくぅ、と鳴ったのだが本人曰く、


「わ、私じゃないもん……!」


 と誰も何も言ってないのに、顔を赤くして自己主張するマルガリーゼが可愛かったのを追記しておく。


=====


 あれから何度か「わ、私じゃないんだから……」と弁解するマルガリーゼを愛でながら、ほどなくして広場へ着いた。


 昨日と変わらず広場を囲むように屋台が並び、空いた場所では地面に御座のようなものを敷いて野菜や調味料っぽいものが売られている。


「うわぁ、美味しそうなものがたくさんある!」


 一通り見て回ってから決めようと屋台をはしごするように歩いているのだが、マルガリーゼが屋台の食べ物を見るたびにまるで祭りに来た子供のように目を輝かせる。


「でもあれもこれもは駄目ですよ姉さま。残してしまうのはもったいないです」


「う、わかってるわよ。あぁ、あの串焼きもおいしそう。でもあっちの炒め物も捨てがたいわ……」


「ふふふ、姉さま。それではお互いに違うものを買って、分けて食べるのはどうでしょう」


「それいいわね! そうしましょう!!」


 仲良きことは美しきかな。


 でもなんだか羨ましいのでオレ様も横から乱入!


「じゃあオレ様も違うの買うから一緒にどうだ?」


「よかったですね姉さま。これで三種類も食べられますよ?」


「!? ほんとだわ! ありがとうアビゲイル!!」


 はい、満面の笑みを頂きました。ご馳走様です。


 あーもう、ほんと可愛いわこの子。 

 

 そんなことを話しつつ屋台を一回りしたので、来た道を戻りながらそれぞれが被らないように食べたいものを買い、広場の中央に並んでいる一番手前のベンチで食べることにした。


 座った順番はオレ様を真ん中に左にマルガリーゼ、右にメルナリーゼ。


 可愛い女の子にサンドイッチなんて我が子(女の子)冥利につきます。


 ちなみにマルガリーゼはグレイホーンという牛の串焼きで、メルナリーゼは蒸したホワイトダックという鳥の肉の炒め物、オレ様はワイルドシープという羊肉を煮込んだ豚の角煮のようなものを選んだ。


 飲み物も三人共違うものを選び、ついでにご飯やパンの代わりに平べったいもちもちしたナンのような物も一緒に買い、マルガリーゼからこれに包んだりタレや汁につけて食べるのだと教えてもらった。


 それから過ごした昼食タイムは、今まで一番楽しくて幸せな時間だったと思う。


 学生時代から知り合い以上の友達というものはあまり縁がなく、お昼時は一人で食べてさっさと寝ていたものだ。


 社会人になってからはそれは変わらなかったのだが、それがいまはどうしたことだろう。


 誰かと一緒に食べるどころか、可愛い女の子達とお互いに食べさせあうというオレ様的偉業を成している。


 なんと素晴らしい、ありがとう異世界転生。


 そんな気持ちを噛みしめつつ、オレ様は姉妹との食事を楽しんだ。


 しかしそんな楽しい時間は儚くも終わりを告げてしまう。


 それはご飯を食べ終わった余韻を楽しみつつ、三人で飲み物を飲んでいる時だった。


不意に目の前に見知らぬ人影が現れたと思ったら、


「おい、そこの貴様! 貴様だ貴様!!」


 無遠慮に人を貴様と呼び捨てる声が投げかけられる。


ジュースを飲みつつ前を見ると、十代後半くらいだろうか、町の人とは違って高級そうな生地の服を来た男が目についた。


 なんだこいつ。服は貴族っぽい格好だけど見た目がなんかチャラ男だぞ。


 その後ろには無駄に腕や胸を露出している筋肉バカみたいな取り巻きっぽい男二人が、ニヤニヤとこちらを見下ろしている。


 こんなのに絡まれるとは面倒な。


「マルガリーゼ、コレと知り合いなのか?」

 

「え!? なんで私!? アレなんかと知り合いじゃないわよ!?」


 あるぇ? マルガリーゼに関係あるかと思ったんだけど、本人はほんとに知らない様子。


 とすれば、


「もしかして、メルナリーゼか?」


「いえ、私もソレの知り合いではありませんね」 


 メルナリーゼもほんとに知らないようで首を傾げていた。

 

 うーん。オレ様も知らないんだよなぁ。見覚えないし。


「悪いんだけど、人違いじゃ――――」


「い、いい加減にしろ貴様ー!!」

  

「おろ?」


 人違いを指摘しようとしたら、チャラ男が叫んだあげくビシィッと指差してきた。オレ様を。


 いやなんでだよ。ほんとにお前なんか知らないってば。


「さっきから聞いていれば、貴族であるボクのことをアレソレコレなどと!不敬だぞだと思わないのか!!」


「いや全然。それ以前にお前のことなんて知らないしな?」


「なにをー!?昨日路地でうろついて貴様に声をかけてやったこのボクの顔を忘れたか!!」


 昨日、路地、という言葉を聞いて、顔を赤くして怒るチャラ男を無視して思い出してみる。

 

 確か路地を通ったのは姉妹と別れて一人でギルドに向かったときだったか。


 うーん、三バカにギルドまで案内されたのは覚えてる。


 その前に何組かナンパされて穏便にお引き取り頂いたくらいで…………あ、もしかして。


 目の前にいるチャラ男、貴族、路地、というキーワードを並べて考えて、思い出したことが一つある。


「オレ様をナンパして断られたあげく、ちょっと脅かしたらお漏らしして逃げ出したヘタレ野郎か?」


「人聞きの悪いことを言うなあああああっ!!」


 せっかく思い出してやったのに怒られた。



ちょっと展開が煮詰まった頃に読み返したら、路地の部分でフラグを発見。


チャラ貴族とか定番ですよね!!


どういう風にチャラ貴族の心をへし折るのかを考えるのが楽しいです。



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