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ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。  作者: 隣の斎藤さん。
第一章 ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。 

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第27話/美女とお酒と賑やかし。

口内炎の薬を飲んでも効果が現れない作者です。


会話回が長い気がするこのごろ……!!





 オレ様の冒険者登録が終ったところで、ギルド長のエルモから皆で夕飯にしましょうと提案された。


 特に反対意見もなく、全員揃って一階の酒場へと降りて空いていた席へ囲むように座る。


 左にマルメル姉妹、真ん中がオレ様、右にエルモとファンナさんという順番だ。


 意外な事に酒場には数人の冒険者らしき人達が食事をしているだけで、受け付けの方もカウンターに”今日の業務は終了しました。緊急の要件がある方はベルを押してください”という札があるだけで静かだった。


 飲めや騒げやの賑やかしな夜の酒場を想像していたのだが、それを言うとエルモから、


「王都や大きな町ではそういうのもありますが、この町の冒険者は大体夜は早めに寝て朝は早く起きてそれぞれの依頼をこなす、というスタイルが基本なんですよ」


 と、教えられた。


 なので受け付けも夜になる頃には一旦閉めて、緊急の要件に備えて夜勤の担当がいるくらいで済むのだという。


 ちなみに今日の夜勤はファンナさんらしい。お疲れ様です。


「今日は私がご馳走いたしますので、皆さん遠慮なく頼んでくださいね」 


 おお。エルモ様が太っ腹であらせられる。


 テーブルにあったメニューは一枚だけで質素だったが、中身は定食からおつまみ、単品物や飲み物がなかなか多い。


 しかしやはりここは異世界。ウサギ肉をはじめ、定番のオークに森蛙(フォレストフロッグ)沼蜥蜴(マッドリザード)らといった魔物の肉が並んでいる。


 ……最初は無難なのでいこう。うん。


「ね、ねえメル。私、レッドボアのステーキ食べてみたかったんだけど、ちょっと高いし、ギルド長にはしたないとか思われたりしないかな? 大丈夫かな?」


「ふふふ。大丈夫ですよ姉さま。ただもしかしたら、あの子って意外と肉食なのね、なんて思われるかもしれませんが」


「ふえっ!? そ、それは困るかも……。うう、でも食べてみたい……」


 隣の姉妹の会話に耳をそばだてると、なんとも可愛い会話が聞こえてくる。


「ね、ねえファンナ。今日くらい、お酒いいわよね? ね? ほら、今日は新人の歓迎会も兼ねてるんだし、ね?」


「いけません。この前だって溜まった仕事を片付けたご褒美とか言って飲み過ぎてるんですから。二日酔いになってまた仕事を溜めこむのが落ちです」


「そ、そんなぁ……」


 反対側の会話にも耳をそばだててみると、なんとも駄目なお父さんとしっかりものの娘のような会話が聞こえてくる。


 つーか酒癖悪いのかエルモ。


 酒乱の美女エルフ。……いつか見てみたいもんだ。


 しかし両隣であーだこーだと賑やかでなかなか注文が決まらなそうである。


 そんな時は誰かが音頭を取れば後は流れでどうにかなるというもの(飲み会経験者談)。


「あ、すみません。このスペシャルステーキミックスセットと、リンゴジュース下さい」


 近くにいたウェイトレスらしきおばちゃんに注文すると、それを皮切りに他の皆も注文していく。


 そしてどうやらエルモはお酒を断念し、マルガリーゼも遠慮したのかお肉をウサギにしていた。


 仕方ない。ちょっとフォローしてあげようか。


「あ、追加でワインのボトルお願いしまーす。あと空のグラスを五つ下さい」


 オレ様の追加注文を聞いた瞬間、ちょっとしゅんとしていたエルモが、ばっとこちらに振り向く。


「ワインを頼んだから皆で食前酒に飲もう。食事の前に飲むと身体にいいらしいからね?」


 と、もっともらしい理由を言いながらエルモにウインクを送ると、祈るように胸の前で手を合わせながら目を輝かせていた。


 その横でファンナさんが「一杯だけですよ」とため息をついていたけど、ごめんねファンナさん。


「あ、マルガリーゼ。よかったらウサギ肉ちょっと分けてもらってもいいか?

 代わりにオレ様もレッドボアのステーキを分けるから」


「ほんと!? ありがとうアビゲイル!!」


「よかったですね、姉さま」


 こちらでもお肉のトレードに溢れんばかりの笑顔で喜ぶマルガリーゼの姿が見られた。可愛いったらない。


 それから注文した料理が来るまで、エルモやファンナさんから町の事を聞いたり、マルメル姉妹から今までの冒険者生活のことを聞きながら楽しい時間を過ごせた。


ほどなくしておばちゃんが料理を運んでくる。


 人数分の白パンとスープが置かれ、エルモとファンナさんは魚のムニエルっぽいものが、マルメル姉妹にはウサギ肉のステーキが並んでいく。


 オレ様はというと、ソードバッファロー・レッドボア・クローベアの三種のステーキがのかっている鉄板皿が置かれた。


 どれも肉厚でしたたる肉汁を弾けさせているのが食欲をそそる。


 マルガリーゼ、ちゃんと分けてあげるから口の端できらめくものを拭きなさい。


 そして最後に来たのは五つのグラスとワイン。


 エルモ、ちゃんと飲ませてあげるから獲物を狙うような鋭い目つきはやめなさい。


 マルメル姉妹はお酒が飲めるか聞いてみたが、ワインくらいならよく飲むということだった。


 ファンナさんが給仕を買ってでくれて、皆のグラスにワインが注がれる。


「それでは、マルメル姉妹の無事と有望な冒険者を祝って、乾杯!」


『かんぱーい!』


 代表して音頭を取ってくれたエルモの乾杯で、賑やかな食事がはじまる。


 両隣を美女美少女に囲まれながら食べる食事は、前世での一人飯より数倍おいしく感じられた。


 ほんと異世界にこれてよかった!



奢ってあげるから好きなのどうぞ、と言われても遠慮してしまうのは日本人の性でしょうか。


アビゲイル、けっこうお酒が好きな人です。あと女の子限定で気配りが出来る漢。



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