第25話/女の子は人類の財産です。
花粉ヤバイ。花粉ヤバイ。花粉ヤバイ。
またもや遺憾の意を念話にて連呼されたのを宥めた後、報酬の話になりどうやらオレ様も貰えるらしいとのこと。
マルメル姉妹は通常の護衛費と、魔物を食い止めた臨時報酬があり喜んでいた。
報酬額を聞いたマルガリーゼが、
「やったわ!今日の夕飯はお肉が食べられる!」
と言っていたのがいとかわゆし。
自分の発言に周りから温かい目で見られている事に気づいたマルガリーゼが、「し、しゅみません……」と俯いて顔を真っ赤にさせてもじもじしていたのは、正直萌えました。
あと隣ではメルナリーゼが息を荒げながら「ああ、姉さま、メルは疼いてしまいます……」と呟いていたが、どこがだと深く追求しない方が平和だと思うのでスルー。
ちなみにオレ様の報酬はというと、Cランクの魔物を討伐したことで三十万ゴールを貰えるようだ。
異世界での金銭感覚がいまいちだったので、念話にてエルモに聞いてみると、日本円がそのまま単位を変えただけと言われて驚いた。
まさかゲームでは千~一万ゴール程度にしかならないレベルの魔物が、異世界では元の世界の一ヶ月分程になるとは……。
なんか金銭感覚が狂いそうでちょっと怖い。
「次いで少し現金な話になりますが、魔核をギルドで買い取らせてもらってもよろしいでしょうか?
価格としては相場の一・五倍出させていただきますが」
この程度の魔核ならゲームならいいとこ五千前後なんだけど、さっきのこともあるし先に値段を聞いときたい。
「……ちなみにおいくらに?」
「はい。ランクの割りに魔力純度が高く、また容量も多いことから、そうですね。
相場が二百万ゴールなので、一・五倍で三百万ゴールとなります」
『高っ!!』
予想外の値段にオレ様とマルメル姉妹の声がハモる。
異世界の物価事情恐るべし。
「いかがでしょう?」
「オレ様としては構わないけど。マルガリーゼとメルナリーゼはどうする?」
『え?』
なんか二人揃って、なんで私達に聞くの? みたいな顔をされた。
いやだって、魔物と戦ってたじゃん?
そこへエルモから念話が入る。
《先輩、基本的にパーティーを組んでるか横取り行為でもない限り、魔物の素材なんかは倒した人のものになるんですよ》
《じゃあ今回の場合はオレ様のものになるとか?》
《そうなりますね。救援に駆けつけた命の恩人なわけですから》
エルモの説明に一応納得したものの、オレ様としては魔物と戦ってたわけだし、マルメル姉妹にも権利はあると思うのだが。
「二人は魔核をどうしたいとか希望ある?」
「え、いや、魔物を倒したのはアビゲイルなんだし、助けてもらった私達が魔核をもらうわけにはいかないわよ」
「姉さまの言う通りです。魔核はアビゲイルさんのお好きなようにしてください」
二人の様子を見るに遠慮してるとかじゃなく、それが当たり前という感じだった。
ううむ。ここで押し問答しても意味はないし、それじゃ好きにさせてもらおう。
「じゃあ、買い取りでよろしく」
正直、所持金が初期状態の金額なので心もとないのは確かだ。姉妹からの心意気はありがたく受け取っておく。
はぁ、ほんとにオレ様の十億どこいったんだか……。
「わかりました。ではファンナ、取り急ぎアビゲイルさんのギルドカードの発行と報酬の用意をお願いします」
「かしこまりましたギルド長。それでは皆様、失礼いたします」
支持を受けたファンナさんはテーブルの上にあった道具や魔核を持って部屋を退出していく。
それを見送ったエルモがこちらに向き直り、真剣な表情をして話しはじめた。
「それではここから少し込み入った話になります。今回現れたキマイラと思われる魔物は、本来ダンジョン内部にしか生息しません。
それがダンジョンの外に現れたという事は、それがどういうことかわかりますか?」
エルモにふられたマルメル姉妹は揃って首を横にする。
しかしその横で、オレ様は思いついたことを口にした。
「…………もしかして、”ダンジョン喰らい”か?」
「う、嘘でしょ!?」
「そんな、まさか……」
オレ様の言葉にマルメル姉妹が悲愴な表情を浮かべる。
「残念ですが、その可能性が考えられます。
おそらく今回のキマイラは、ダンジョン喰らいから逃げ出して外へ出たのでしょう」
ダンジョン喰らい。
それは文字通りダンジョンを喰らう特殊な魔物である。
ダンジョンは基本的に再生する資源のようなものだが、ダンジョン喰らいが発生すると喰われた場所や魔物は再生することがなくなってしまい、最終的にはなにもない廃ダンジョンと化してしまう。
廃ダンジョン化してしまうと、例えばせっかく鉱物資源が豊富だったダンジョンから資源の採掘が不可能になってしまうこともある。
そして厄介なのがダンジョン喰らいは喰らいながらレベルを上げ、ダンジョンの属性等に応じて様々な進化をしていくことだ。
進化したダンジョン喰らいは次のダンジョンに移動するのだが、その際に進路上に存在するあらゆるものを破壊したり喰らっていく習性がある。
このおかげで進路上にある町や村に自分の家や財産を持つプレイヤーは涙目になり、ダンジョン喰らいのイベントが発生した際には出来うる限り高レベルプレイヤーに頼み込み、全力で迎え撃つ程だ。
なにせ破壊されれば自宅に飾っていたり、倉庫等に預けているアイテムは全て消失してしまうんだからそりゃ必死になるだろう。
しかしここはゲームではなく、生命が生命として生きる異世界。
もしダンジョン喰らいが現れてこの町を襲ったとしたら、その被害は物も人も計り知れないものになるのが予想される。
下手をすれば人懐っこいミールちゃんや、ドジっぽいリリベルちゃん、健気なアリシャちゃんに今隣にいるマルメル姉妹という、可愛い女の子達が失われてしまうかもしれない。
うん。そう考えたらなんだかムカついてきた。
だったらやることはただ一つ。
「じゃあオレ様がやっつけてやるよ。そのダンジョン喰らい」
オレ様は不敵に笑ってそう宣言した。
あ、ちなみに男達は自力でがんばればいいと思います。
なんとか物語が動き出しそうな予感がします! 予感で終わらせないようにがんばります!!
最近、雨が降った次の日の花粉がヤバイです。超ヤバイです。
マスクしても薬飲んでも貫通してきやがります。
早く梅雨こないかな。長雨は長雨で嫌だけど(わがまま)。
活動報告にも書きましたが主人公の一人称を「俺」から「オレ様」に変更してみました!
あざとい理由ですが多めに見て下さい!
これもろくに設定考えずに見切り発車した作者のせいです! すいません!!
あ、それともしよろしかったら評価や感想いただけると作者がわっほいわっほい喜びます!




