表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は王子様を御所望です  作者: 茗裡
第三章 正編
48/75

15話 二人きり



態とらしく尻もちをついて瞳に涙を浮かべるラシェル嬢。

何時もの取り巻きはどうしたのか。彼女の側から離れる事がない双子王子もいないことに不審に思いながらも彼女に関わるとろくなことが無いからあまり関わり合いになりたくない。なので、彼女にはさっさと退場してもらうことにした。



「サビーヌ」

「お嬢様、此処に。」



私の呼びかけに何処からともなく現れたサビーヌに留学生の面々は驚いていたが、気にせず言葉を続ける。



「彼女を保健室まで運んであげて。」

「承知致しました。ラシェル嬢、失礼致します」



サビーヌはラシェル嬢に一言断り姫抱きで抱き上げると颯爽と大きな歩幅で保健室へと向かう。



「ちょ、降ろしてよっ!私に触らないで!あんたはお呼びじゃないのよおおぉぉ」



遠ざかるラシェル嬢が何か叫んでいたが、気にしないでおこう。

サビーヌが抱き上げてからじたばたと暴れていたから折れたというのは嘘だろう。



「それじゃあ、皆さん演習場へ向かいましょうか」



いい笑顔で振り返り気を取り直す。



「ドナシアン様、恐れ入りますがわたくしはソレンヌの手伝いをしてから演習場に向かってもよろしいでしょうか」

「分かった。じゃあ、僕達は先に向かってるね」



ドナシアン王子の了承を得てよろしくお願いしますと頭を下げる。一応、ソレンヌの従者レアンドルも傍にいる気配はするものの、主を守ることが出来なかった不甲斐なさを嘆いていそうで、また此処で彼を呼び出すのも忍びなくて私がソレンヌを目的地まで送る事にした。



「ならば、ルイーズ嬢とソレンヌ嬢には護衛としてジルを付けよう」

「しかし──」

「私にはセレスタンがついているから大丈夫だよ」



ロラン殿下の申し出に流石に他国の王子の側近を借りたり出来ないだろうと断ろうとするもロラン殿下に言葉の先を阻まれる。


「はい。ジェルヴェール様には遠く及びませんが俺も騎士を目指す者として殿下の身は死んでもお守りします!」


ソレンヌと同い年であるセレスタン様はマラルメ国の騎士団長を務めるお方の嫡男だと聞いている。彼は背筋を伸ばしそう宣言すればロラン殿下に頼られたのが余程嬉しかったのか目を輝かせ何処か誇らしげだ。

結界が張られた学園内にいて死ぬような事はないだろうが彼の意気込みはよく伝わってきた。


「彼がいればロラン殿下は大丈夫ですよ。それに、荷物持ちも必要でしょうから私で宜しければお供させて下さい」


ジル様はソレンヌが取り零した資料を抱えたまま私達に向き直る。


「では、お言葉に甘えさせて頂きますわ」

「ジェルヴェール様よろしくお願いします」



ロラン殿下の申し出に甘んじて受け入れジル様に同伴を頼む。

それから、私達三人は演習場に向かう面々と別れ生徒会室へと向かった。



「ルゥ姉様、ジェルヴェール様本当に助かりましたわ。ありがとうございます」



ソレンヌを生徒会室まで送り届け私とジル様も皆が待つ演習場へと向かうことにした。

まさか、こんな所でジル様と二人きりになれるとは思わなかったから緊張で何を話したら良いのか分からなくなってしまう。



「あの、ジル様。本日は本当にソレンヌを助けて頂いた上に資料まで運んで下さりありがとうございました」



私達は今、皆と別れた吹き抜けの廊下を歩いてる。風に揺れる髪を押さえながらジル様を見上げ御礼を言うと彼は双眸を細め口角を上げた。彼は、常に表情が崩れず冷たさを纏っている。だが、ジル様が私を見て微笑んでくれた事に目を大きく見開く。


「気にするな」


そう言って柔らかい笑みを浮かべるジル様。

ゲームでも彼は滅多に笑わないキャラで好感度がかなり上がってからでないと笑顔を拝見する事は出来ない。そのジル様が私を見て微笑んでくれた。その事に心臓が大きく跳ねる。どうしようもなく好きが溢れる。

最後にお会いしてから六年も待ったのだ。焦がれて焦がれて、待ち焦がれた想い人が目の前にいる。


「ジル様…」


私は足を止めて彼を見つめる。すると、ジル様も足を止めた。

両想いだったあの頃を思い出して、そう言ってしまいそうになる言葉を飲み込む。


「ジル様…わたくしは今も貴方様の事を──」


六年ぶりに紡ぐ想い。

今はもう子供の頃とは違う。久しぶりに口にするこの思いを彼は今も受け止めてくれるだろうか…そんな不安と期待を抱いて口を開いた時だった。


四方から物凄いスピードで石が飛んで来るのが分かり石を避けようとした時、腰を強い力で引かれる。



「わっ、」



腰を引かれたかと思えばすぐ目の前にジル様の姿があった。顔を上げると鋭い目をして石が飛んで来た方向を睨み付けるジル様の顔が至近距離にある。



「無事か?」

「は、はい。ありがとうございます」



飛んで来た石はジル様の作り出した氷の塊に打ち砕かれた。ジル様は一瞬だけ私を見下ろし無事を確認する。


「誰です。こんな事をするのは」



ジル様が私を抱き寄せながら声を張る。

ジル様からは凄い殺気を感じる。そして、その声に応じて姿を現したのはダルシアク国第三王子であるルイス王子だった────


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ