15話 ルイス王子
私たちはその後直ぐに庭園へと向かった。
ソレンヌ嬢はレナルド王子の傍に寄り添いとても楽しそうに談笑している。ソレンヌ嬢の心がレナルド王子に無いことに願っていたのだがどうやら時期が遅過ぎたようだ。
頬を桃色に染めてレナルド王子に笑いかける瞳が彼が好きだと如実に語っている。
「ねえ、ちょっと」
そんな二人を観察しながら後ろからついて行っていると腕を捕まれ後ろに引かれる。
「ふーん。あんたがルイーズ嬢か。まあ、顔は悪くないよね。あの硬っ苦しい言い方は自分は聡明なんだと見せびらかしてるみたいで嫌いだけど」
なんだなんだと思っていると腕を引いたのはどうやらルイス王子のようで振り返ると至近距離にルイス王子の顔があった。
あの方と同じ青い瞳。だけど、何処かが違う。あの方の吸い込まれるような何時までも見つめていたくなるような澄み渡る瞳では無い。
私の姿を映すルイス王子の瞳は何処か歪んで見えた。
「スタン兄さんのお下がりっていうのがネックだけど顔だけはいいから精々僕の役には立ってよね」
…………は?
ルイス王子はレナルド王子よりも歪んでいることは事前に知っていた。だけど、この歳から既に屑だとは流石に思わなかった。
ルイス王子の役に立つとは、ルイス王子も見目だけは麗しいので近寄る令嬢が後を絶たない、その為私という婚約者で盾を作りまた自分が遊んで誑かした令嬢に飽きたら私という婚約者の後ろに身の隠れする為ということである。他にも彼が言うように自分でいうのも何だがお母様の血を濃く継いだ私は悪役令嬢なだけあり美少女である。その為、他の令息たちに見せびらかして愉悦に浸る歪んだ性癖もお持ちでゲーム内ではルイーズの事を都合のいい女、又は自分を着飾るステータスに過ぎない所有物程度にしか思っていたかったのだ。
「ねえ。聞いてんの?スタン兄さんが死んだ所為で僕がお前のこと引き受けなくちゃいけなくなったんだから僕の言うことはちゃんと聞いてよね」
このガキャさっきから黙っていれば好き勝手にペラペラと。
「ルイス王子、あまりそのような事は仰らない方が宜しいかと思いますわ。何時どこで誰が何を聞いているか分かりませんもの」
私は苛立ちに引き攣る口角を手の甲で口元を隠し穏やかに見せるように目元に笑みを刻む。
「痛っ、」
「おい。僕に指図するんじゃない」
すると、ルイス王子はいきなり私の髪を乱雑に掴み眼孔を見開いて脅す。
他の令嬢ならば、顔は恐怖に歪み震え上がってルイス王子の言いなりになっていただろう。ゲーム内でのルイーズもルイス王子の本質を知っていたから何をされようとも年下相手に利用されていようとも何も言わなかったのだろう。
「これは失礼致しました。ルイス王子、どうかお怒りをお鎮めください」
私は頭を下げて許しを乞う。
すると、その様子に満足したのかルイス王子は鼻息荒く「初めからそうしてろ」と何とも拙い品位に欠ける言葉を残して庭園へと向かい、私も数歩後から付き従った。
王子が参加してからのお茶会は酷いものだった。
初めは二人の見目麗しい王子の登場に幼いながらも令嬢たちは色めき立ち二人の王子にまとわりついた。
レナルド王子と離されたソレンヌ嬢は遠目から他の令嬢とお茶をするレナルド王子を寂しげな眼差しで眺め直ぐに私は彼女の元へと向かった。
しかし、ソレンヌ嬢と話して数刻もしない内に天使の容姿をした悪魔がやって来た。
私は前世の年数分と今世令嬢として学んで来た全てを駆使して無礼にならない程度にルイス王子を適当に躱した。
ルイス王子は私に飽きたのかレナルド王子の元へと向かい二人揃った王子は悪戯の限りを尽くした。
どちらがレナルド王子なのかルイス王子なのか当てっこしたりとかは可愛いものだったのだが…お茶に慣れた二人は色んな令嬢に悪戯を仕掛けたりして一人二人と泣かせてしまい、この日のお茶会はお開きとなった。
私は極力ルイス王子には近付かない事を心に決めた。
そして、ソレンヌ嬢という友人を得た私は後日ソレンヌ嬢の邸にご招待される事となりお茶会自体は最悪のものであったが私は至極満悦とした表情でお母様と帰宅した。
次回から第二章に入ります。
途中からですが、漸く最愛のあの方が登場致します(*´ω`*)




