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14話 王子様登場



お茶会は二人の王子が来る前にレリア様の意向により始まった。子供たちは各々話に花を咲かせたり、出された菓子類に夢中になっている。

そこに、一人の侍女がレリア様に近付き何やら耳打ちした。



「ルイーズ嬢、ソレンヌ嬢ちょっといいかしら。此方にいらっしゃい。」


私もソレンヌ嬢と仲良くなるべく培った話術で距離を縮めているとレリア様から他の人達に気付かれないようにひっそりと呼ばれる。

私は、何だろうかと疑問に思っているもソレンヌ嬢は直ぐ様席を立ち上がるとレリア様の意図を汲んでいるようで素直に従ってレリア様の元へと向かう。その後に続くように私も内心慌てながら着いて行くと庭園からは死角になっている王城の廊下へと連れ出された。



「「母上、お待たせ致しました」」


曲がり角にいたのは二人の美少年。茶色の髪に青い瞳。

噂には聞いていたが……ここまで、瓜二つとは。彼等はソレンヌ嬢と同い年の6歳で一卵性双生児だ。

間違い探しかと思うほどによく似た二人は声音もそっくりだ。……まあ、ゲームでも同じ声優が二役やっていたから当然と言えば当然か。因みに彼等は大きくなっても瓜二つで見分けがつかない。

ドッペルゲンガーかと思うほどにそっくりな二人に唖然としているとスイ、とソレンヌ嬢が前に出て第二王子と第三王子に挨拶をする。



「お久しゅうございます。レナルド王子、ルイス王子」

「「久しぶり。ソレンヌ」」



息もピッタリかよ!と心の中で突っ込みつつも何時までも呆然とはしていられない。私も一歩前に踏み出しカーテシーをして挨拶をする。



「お初にお目にかかります、レナルド王子、ルイス王子。此の度ルイス王子の婚約者候補となりましたわたくし、カプレ公爵家が長女ルイーズ・カプレと申します。どうぞお見知り置き下さいませ」


「レナルド、ルイス。二人は何れ貴方達の婚約者となる者達です。しっかりとエスコートなさい」



レリア様は王子の名前を呼ぶ時にそれぞれを私とソレンヌ嬢の前に立たせる。目の前にいるこの方がルイス王子か、なんて思いながらも心中ではこの先ずっと彼の婚約者にも配偶者にもなる予定は一切無いけどなと悪態を吐いた。

しかし、それを気取らせないように自慢の笑顔で何とかその場を押し切る。

レリア様は恐らく、端っから他の候補者達には興味が無いのだろう。私もソレンヌ嬢も家柄は公爵家だ。その公爵家の令嬢が第二王子だけでなく第三王子の後ろ盾にでもなれば、彼女が正妃となれずともスタン様がいない今第二王子のレナルド王子の王位は確約されたも同然だ。それに、第三王子にもカプレ公爵家という後ろ盾があれば彼女が齎す権力はかなりのものとなるだろう。

私とソレンヌ嬢を先に王子と引き合せる事で王子達に私たちが将来婚約者の位置に座する者達だと理解させる。

本当に悪知恵だけはよく働く女だ。



「初めまして、ルイス王子。どうぞよろしくお願い致します」



本当にどっちがどちらか分からない。

ルイス王子を私の前に立たせてくれた事が救いだ。間違えずに済んで良かった。

彼等は瓜二つなせいで第二王子の婚約者、ソレンヌ嬢以外の誰からも見分けて貰える事が出来ずに捻くれた性格となり悪戯をして周りを困らせ楽しむような青少年となってしまう。

だが、私は此処で重大な事を見逃していた。それに、気付かぬまま再度改めて挨拶をした私は頻りにソレンヌ嬢が此方をちらちらと伺っている事など露ほども知らなかった。



「わたくしは先に戻ります。貴方達は少しお話でもして来なさいな」



そう言うと、レリア様は庭園へと戻って行った。残された四人の間で沈黙が貫く。すると、初めにソレンヌ嬢が動いた。



「ルイス王子、お久しゅうございます。レナルド王子も一週間前にお会いした時以来ですわね」



ソレンヌ嬢は初めに自分の目の前にいる人物に挨拶をして次に私の目の前にいる少年に向き直る。

私は瞠目したまま硬直してしまう。

重大なミスを犯してしまったのだと気付いた私が取った行動は頭を下げて謝る事だった。



「誠に申し訳ございませんっ。レナルド王子とルイス王子はとても似ていらっしゃると聞いていたとはいえ、お二人を見間違える等ととんだご無礼を致しました。」



二人の王子が気分を害し婚約者候補から降ろされたらどうしようだとか今後一切接触が出来なかったらとグルグルと思考が渦巻く。



「「……ぷっ」」



計画が潰えてしまった。と、思ったその時、噴き出す音に思わず顔を上げる。



「ルイーズ嬢顔を上げて」

「君は初めて僕達に会うんだし、第一お母様が間違えて僕達を逆に君の目の前に立たせたんだからそこまで気にしなくてもいいよ」



ルイス王子とレナルド王子はくすくすと笑いながら言う。確かにレリア様がルイスと名を呼びながら私の前にレナルド王子を立たせたから彼がルイス王子なのだと思ってしまった。

遠目には二人を見たことがあったとはいえ、直接接触するのは今回が初めてで本当に良かったと胸を撫で下ろす。



「でも、何故ソレンヌ嬢の言葉が合ってると思ったの?」

「僕達自身が母上の言いつけを守らず逆の位置に立っていたとはいえルイーズ嬢は如何して母上よりソレンヌ嬢の言葉を信じたの?」

「わたくしとしては信じて頂けて嬉しい限りですが、今までのご令嬢でしたらわたくしを嘘吐き呼ばわりしていましたのに何故わたくしの言葉を信じて下さったのかわたくしも知りたいですわ」



母親の言いつけ破るなよ、と思いつつもレナルド王子、ルイス王子、ソレンヌ嬢に詰め寄られ軽く背を反らす。

三人はキラキラと目を輝かせて見つめてくる。


うっ…美幼女に美少年とか可愛過ぎて母性本能が、っ。


頭を撫でくりまわしたくなる衝動を抑えて頭ではどう応えようかと思案する。

ゲーム内では()()()()()()()の誰からも見分けて貰える事が出来ずに捻くれたとあった。と、言うことはだ。つまり、本当の母親であるレリア様でさえも二人を見分けることが出来なかったのだということ。そして、ヒロインに対して二人はこう言う「僕達を見分けられたのは君で二人目」だと。それに思い至ったからこそソレンヌ嬢の方が正しいのだという結論に至った。だが、本当の事は言えない。さて、どうしたものか。




「レナルド王子、ルイス王子はソレンヌ嬢とよくお遊びになられているとお聞きした事がございますの。なので、御二方とよくご一緒されているソレンヌ嬢はレナルド王子とルイス王子の個々の輝きを見極められていてもおかしくないと思った限りでございますわ」



スラスラと口をついて出てくる言葉。少し苦しいか?と思いつつもまあ、まだ子供だから何とか誤魔化せるだろうと三人を見遣る。すると、三人は案の定なるほどー、と頷いてくれた事に安堵した。


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