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10話 ピッピコの能力



「陛下の仰られる通りわたくしのストレンジは水を操る力でございます。しかし、つい先日幾つかの能力を使役出来るようになったのですわ」


「使役、とな。能力を複数保持したと言うわけではなく使役ということはストレンジ持ちのピッピコでも手に入れたのか」



流石は国王陛下だ。

言葉の端々に意識を向けて一の説明で十を理解する。

此処からが正念場だ。この賭けが吉と出るか凶と出るか。失敗すれば目的までの道のりが遠ざく上に下手に動けなくなるかもしれない。

気を引き締めて陛下の出方を伺う。



「しかし、今この国…いや、全世界を探したとしても恐らくピッピコだけで病を治すことは出来ないだろう」



ピッピコは本来単体の力は弱い。

その為、飼い主からストレンジの供給を受ける事でより強い力を発揮する事が出来るのだ。しかし、それは飼い主とピッピコが同じストレンジであればの話である。


例えば、回復系ストレンジ持ちの人間と回復系ストレンジ持ちのピッピコがいて飼い主がピッピコに力を分け与える事によって相性が良ければ最大飼い主の3倍は力を発揮する。



「出来るか出来ないかは此方を御覧になられてお決め下さい」


私は右手に水を纏い指先に力を集める、指先から派生した水は先端を尖らせ水流を発生させて循環させる。音域の速さで循環する水は時に凶器となるのだ。

私は早まる鼓動を押さえ付け生唾を飲み込む。ウォーターカッターと化した凶器を左腕に添え一気に切断する。身体から切り離された腕は床に落ちる。



「ぐうぅっ」



あまりの痛さに膝を着き(くずお)れる。下唇を噛み締め絶叫を堪え、冷や汗を噴出しながら朦朧とする意識を何とか保つ。

何をするのかと見守っていた重鎮達がざわめきだし北軍騎士団長が逸早く駆け付ける姿を目端に私は痛みに耐えながら声を上げた。




「らああぁぁぁい」

「ピッコォ」



声を上げたと同時に姿を現した黄色いピッピコ。



「いくよ、ライ!」

「ピッ」


私は名前がないと不便だからと全部のピッピコに名前を付けた。黄色いピッピコは『ライ』と名付け痛みに遠のく意識を何とか保ちながら声をかけストレンジポイント略してSTP(又はST)と呼ばれる力をライに分け与える。すると、ライは金色の光を発し未だ血が流れる腕にストレンジを流す。光は私の腕を包み込むと出血が止まり痛みが無くなる。痛みが治まり一つ息を吐き呼吸を整えれば、次に床に転がる切り離された手を持ち上げ切断部位にくっつける。光は切り離された部位にも移り左腕全体を包み込む。すると、切断線は徐々に薄くなり完全に見えなくなった。

私はくっついたばかりの左腕を持ち上げ掌をぐっぱ、と動かし状態を確認する。違和感無く動く腕に私は満足気に頷く。


「ライ、ありがとう」


ライに向けて両手を広げるとライは渦巻きの尻尾を左右に揺らし腕の中に飛び込んで来る。それを危なげなく抱き留め頭を撫でてあげると嬉しそうに双眸を細める。一頻り撫でるとライを腕に抱えたまま陛下に向き直る。



「あの…如何でしたでしょうか」


おずおずと尋ねてみるが、陛下は口を開いたまま微動だにしない。

他の重鎮も同様に硬直してしまっている。ピッピコの事を知っているお父様でさえも固まっているもんだから途端に私は不安が胸に広がる。



「あ、えっと。ライは傷は見ての通り完治させることも出来ますし、病気だって治す事も出来るのでご安心ください」



病気を治せると言いながら、怪我を治したのがいけなかったのかと思い至り私は慌てて弁明する。

何時まで経っても返答が無いことに不安になりライをギュッと抱き締める。ライはそんな私の様子に気付いて心配そうに顔を見上げる。安心させようとライの頭を撫でるが小刻みに手が震えて胸に抱き締めて誤魔化した。


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