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12 『魔女のポーション』 2ーマティアスside

「ジャックも確か指を怪我していたな」


 ジャックも私と同じように魔物との戦闘で指を痛めていた筈だ。

 私が尋ねるとジャックは怪我をしていたことを忘れていたのかキョトンとした顔で左手の指を見た。


「ああ、これのことですか。あとで冒険者ギルドのポーションでも飲んどきます」


「いや、ちょっとこれを飲んでみろ」


 私は机の上にあるポーションを差し出した。


「魔女のポーション? いやいやいや、こんな怪我に魔女のポーションは勿体無いですよ」


 ジャックは手を振りながら後ずさっていく。

 どう考えても逃げているようにしか見えない。

 私はカイルとアルマンに目で合図をした。

 スッと二人はジャックを取り押さえる。


「お前ら、仲間を裏切るのか?」


 ジャックが往生際悪くカイルとアルマンに噛み付く。


「「悪く思うな。お前だって同じ立場だったら同じことをしたはずだ」」


 私はジャックの口に魔女のポーションを有無を言わさず突っ込んで飲ませた。


「グッ、ブボババ.....」


 魔女のポーションを飲み込むジャックの目には涙が浮かんでいる。可哀想だが猫になった原因を確かめるためには仕方ない。

 ジャックの全身を白い光が包み込む。ジャックの身が縮んでいくのがわかる。

 これは、私と同じように猫になるのか?


「「「うわぁ。かわいい」」」


 思わずハモってしまうくらいかわいい生き物に変化していた。


「なんだか視界が広くて、見えづらいぞ。まさか本当に猫になってしまったのか?」


 声は変わらないのでせっかくかわいい生き物に変化したのになんとも微妙だ。


「いや、ウサギだ。まさかジャックがウサギになるとはな。似合わな過ぎだろ」


 ジャックは三人の中でも大柄で、顔もどちらかというと厳つい感じで、ウサギのイメージではない。


「ウサギになったのか? 」


 ジャックは首(?)を傾げながら呟く。

 自分のことは見えないので、実感が湧かないようだ。


「でもこれではっきりしたな。魔女のポーションを飲むと動物に変化するってことだ」


「やはり呪いでしょうか?」


 アルマンに尋ねられたが答えは出ない。

 確かにそれしか考えられないが、魔女との契約は一年近く前に破棄したのに今頃になってというのが解せない。

 それにこの呪いからは悪意を感じない。数分で人間に戻れる呪いに意味があるのか?

 戦いの場でポーションを使用して動物になったら、流石に困るだろうが…それが狙いなのか?


「えっと、ところで人間に戻れるんだよな」


 ウサギになったジャックが不安そうな目をして私たちを窺っている。


「団長だって戻れたんだから戻れるさ」


 アルマンがそう言って慰めるが、ジャックウサギは納得しない。


「絶対に? 間違いなく?」


「.......たぶん?」


「おい!」


 確かに戻れる確証はない。無理やり飲ませたことは早計だったかもしれない。


「心配するな。万が一戻れなくてもお前のことは私が一生面倒は見るから」


 私にできる精一杯の慰めだったが、ジャックウサギはさらに落ち込んでしまった。






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