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救済の闇  作者: ケイ


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13/39

〜〜〜


「ジュリア様。此度の勇者……その中に、【救済の勇者】はおられるのでしょうか?」


白の空間。

大聖堂の祈りの間。

そこに、中性的で透き通った問いかけが響く。


そしてその問いかけは、視線の先の彼女に向けられていた。


両膝をつき手を組んだ、祈りの姿勢。

純白のローブ。それに身を包み、姿勢をとるジュリア。

そして、姿勢を崩さずジュリアは言葉を紡ぐ。

眼前に聳える神を模した偶像。そんな色褪せた石像を見上げながらーー


「えぇ。居ますとも。神様がそう仰ったのですから」


そう、熱っぽい声を響かせた。


金系のような金髪。青く澄んだ瞳。雪のように白い肌。そんな神秘的な美しさを醸す、ジュリアの姿。それはまさしく聖女そのもの。


「そして。勇者様は必ずこの世界を救ってくれる。わたくしはそう信じております。きっと、きっと」


言葉を紡ぐ、ジュリア。その表情には滲み出ていた。

【救済の勇者】に対する恍惚とした想い。それが、仄かに赤らむ頬と共に。


〜〜〜


勇者アレン殿はどこに?」


「あ、アレンですか?」


深くフードを被った、従者の言葉。

それに、白髪混じりの村長は額に汗を滲ませる。


「名はアレン。それが、聖女様がお告げで聞いた名でございます。時間がありません。はやくアレン殿を出していただきたい……村長ゼラス殿」


口調は丁寧。

だが、その眼差しに宿るのは微かな怒気。

そして従者の側に佇む騎士たちもまた、苛立ちを隠さない。


「これは聖女様の御意思だ。この村の意思。それが介入する余地等、無いと心得よ」


「し、しかし。今は夜半。せ、せめて日がのぼってからでも遅くはありませぬか?」


ゼラスは作り笑いを浮かべる。


「そ、それに。ちょうど今、アレンは出払っております」


「……」


「ぃ、いつ帰ってくるのか。わたくしめにも」


わかりかねます。


響かんとした、ゼラスの詭弁。

だがそれを、淡々とした従者の声が遮った。


「ゼラス殿」


瞳に瞬く、冷たい光。


「なにか隠していることはありませぬか? 貴殿のその目。わたくしには、偽りをおっしゃっている。としか思えませぬ」


同時に、従者は騎士たちに目配せをする。

それに応え、騎士たちはゼラスの屋敷へと押し入っていく。

一切の躊躇いもなく、王からの書簡をその大義名分として。


「お待ちください!!」


焦燥する、ゼラス。


「い、いくら王からの書簡があったとしてもこのようなこと!! アレンはただのーーッ」


瞬間。

騎士の1人は剣を抜き、ゼラスへと突きつける。

そして、吐き捨てた。


「弁えろ。この村の価値。それは、勇者アレン殿の故郷……その価値しかないということを」


「それに。わかっているな?」


ゼラスを睨み、騎士は更に続ける。


勇者アレン殿を侮辱すること。それは、王。加えて聖女様を侮辱することと同義。この村ごと殲滅してもなお、許されることのない大罪だと知れ」


へたり込む、ゼラス。

それを鼻で笑い、騎士たちは従者の命で村の調査を開始したのであった。


〜〜〜


屋敷を後にした、アレン。

月に照らされ、白く浮かび上がる屋敷。


それを背に、アレンは歩みを進める。

闇と共に。その顔に無機質を張り付けて。

胎動する闇。瞳に蠢く救済ヤミの力。


その姿。

それはまさしく、救済ヤミの勇者そのものだった。

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