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東方修練5

 

「『閻舞天嵐』!!!!!」


「『ショゴス』、『畏染布恐』!!!!」


「ーーーーーたりし非力な我らに、力を貸したまえ!『強旺の漣』!!!」


「『破躁閃拳』!!!!!!」


「砂術『奪精崩我』!」


「屍遺霊術『慰魂』!!」


 後衛三、中衛一、前衛二。バランスも実力も不足のないパーティー。互いを互いに理解し、信頼しあった彼ら彼女らの連携は、軽く鳥肌が立つ程に見事なものだった。


 だが悲しきかな。敵はより強大だった。


 束縛はすり抜け、連打はいなし、魔法は相殺、もしくは押し勝ち、連携は割って入りうち壊す。

 表情一つ変えずにフーリンらを圧倒するレブナントは、理不尽以外のなにものでもなかった。


(あったんない!!!!)


 従魔の回復に専念しつつも、フーリンは極度の焦燥に駆られていた。


 果敢に戟を振るうレブナント。付喪神である彼の体は実体であって本体ではない。いくら攻撃をしても意味がないのだ。

 そして、戟。依り代である戟を攻撃すれば、確かにダメージは与えられる。だが、微々たるものだった。

 もともと名匠が造り上げた武器。当然の様に最上位の頑丈さと切れ味を兼ね備えている。そこに、さらにレブナントによる強化が入っているのだ。脆い訳がない。


「『霊砲(ソウルインパクト)』」


 ドォンッ!!!


 前衛の二人が吹き飛ばされ、急接近したレブナントによって中衛のタピオカも袈裟斬りにされる。


 もともと、戦力に大きな差のある戦い。一手間違えるだけで、一手避け損ねるだけで、とたんに崩れるのはある意味必然的だったのだろう。


「お前はよく頑張った。足掻いて、踠いて。だが、そろそろ終わりにしようか」


 タピオカを切り裂いた刃。その返す刃でタピオカとフーリンの間を切り裂く。


「『縁絶』」


 プツンと、フーリンとタピオカの間のナニカが切れた感覚を、フーリンと従魔たちは感じとった。


 次だとでも言わんばかりに先ほど吹き飛ばしたマカロニの元へと歩を進めるレブナント。呆然するフーリンたちのなかで一番早く動けたのは、砂楼龍王のポテチだった。


「邪魔だ」


 ザンッ!!


 マカロニの元へと通すまいと、レブナントの前に立ちはだかったポテチを、レブナントは戟によって切り裂く


「ぐぅぅぅぅ!!!」


 血が吹き出し、ポテチの体がぐらつく。もともと搦め手特化の種族で、他の龍種よりも一段防御力に劣るポテチ。身体中に激痛が走り、今にも逃げ出したいという気持ちが脳裏を埋め尽くす。それでも彼女はその場から逃げない。


「退いて貰えないかな?」


「嫌じゃ!!!!」


 ザンッ!!!


「っ~~~~~!!!!」


 またも、ポテチの体を戟が切り裂く。今度は先ほどよりも傷が深かった。


「ぐぅぅぅ!!!嫌じゃ!!!!マカロニも、タピオカも、お主らには遣らせん!!!儂らの仲間なんじゃ!!!!」


 ザンッ!!ザンッ!!ザンッ!!ザンッ!!


 何度切り裂かれようと、何度退けと言われようと、ポテチはその場に立ち続けた。


「良い仲間を持ったね。出自を考えなければ素晴らしい友情だと祝福してたろうよ」


 スパァンと、ポテチの首がはねとばされた。


「でも残念だけど、盗品は返して貰わないといけないんだ」


 その後もナタデココやティラミスが立ちはだかり、即座に切り殺される。もう後がない。そんな状況でフーリンが取った行動は、


「、、、マカロニに近寄るな」


 自分を人質に取ることだった。召喚師(サモナー)従魔師(テイマー)死霊術師(ネクロマンサー)の系統は、マスターが死ねば従魔も消える。従魔の縁が繋がっている以上、フーリンが死ねばマカロニも消える。すなわち、自殺こそが最善の手なのだ。


 されど、後衛のフーリンよりも、全衛のレブナントの方が速かった。フーリンが喉に杖を突き刺しポリゴンとして消える直前、レブナントの『縁絶』が、フーリンとマカロニの間を引き裂いた。


















 ─────────────────────


 ガクンッ


「くっ!」


 度重なるフラメアの猛攻に、アレクセイはついに膝をついた。


「人間ごときが、魔王様に歯向かおうだなんてするからそうなる。さ、さっさと死ね」


 荒い呼吸を繰り返すアレクセイに対し、笑顔でフラメアが近づいていく。

 そも無理のある戦いであった。戦闘能力を産み出した装備で補っているアレクセイは、そもそもとして持久力が低い。そして、フラメアの種属不死者の王(ノーライフキング)。体力などという概念がない種族を相手に、持久力が低いということはかなり致命的である。

 加えて彼我の実力差はフラメアが圧倒。そもそも、十数分も持ったことが奇跡だった。


「黒病彼岸」


 疲れ果て、うずくまるアレクセイ。フラメアは、躊躇も慈悲もなく黒いもやを宿した大鎌を振り下ろした。


「近づいてくれてありがとう」


 ドンッ!!!


 振り下ろされた大鎌がアレクセイに届く直前、アレクセイの手のひらの石から放たれた光がフラメアを貫き、吹き飛ばした。


 まさしく起死回生の一手。アレクセイの表情に薄い喜色が宿りかけ、、、視界の端で崩れ落ちるフラメアではない祟る弑すのメンバーを捉え、苦笑に変化した。


「身代わりすら予測できない雑魚が、魔王様の前にのさばるな」


 吹き飛ばされながらも振り下ろしたフラメアの大鎌。放たれた黒いもやを纏った斬撃が、アレクセイの体を真っ二つに切り裂いた。





 ポリゴンとなって消えていくアレクセイ。その姿を傍目に、フラメアはわくわくとした表情でポータルの前へと移動する。

 先に脱走したゴミどもを捕まえたレブナントが、アレクセイを捕縛するのを待つ為に。


「縛魂は完了した。あとは貴方の繰糸があれば今まで通りいくだろうよ」


「そうか。レブナント、ご苦労様」


「んーーー!!」


 ポータル付近まで来たとき、フラメアの視界にはぐるぐる巻きにされて転がされるアレクセイと、敬愛する魔王様に褒められる同僚の姿が映っていた。


「魔王様!!!私も!私も頑張りました!!!!」


「フラメアも。良くなってくれたね」


「はぁいぃぃ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」


 ポンポンと頭を叩かれ、フラメアの心は幸せ一色へと染まっていく。いやんいやんとハートを飛ばしながら喜ぶ彼女から、先ほどの殺意溢れる姿を連想できる者は多くはないだろう。


「ぅん~~~。いい運動になったわぁ」


 和気あいあいとしたフラメアらの下へ、ビットに乗ったまま背伸びをするリリムがすぃーーっと近寄る。


「ああそうそう。とんでもなくヤバいの(先代の勇者)がそろそろ動くそうだからぁ、よろしくぅ?」


「「それを先に言え」」


 リリムの気の抜けた発言に、フラメアとレブナントが一瞬で臨戦態勢へと戻る。


「だったら早く退散しないといけないな。エルバス」


 ドォン!!!!!!!!!!!!


「あと10秒で終わらせる」


 呼び掛けられ、答えた吸血鬼の周りには、砂塵と、血飛沫と、なおも果敢に攻め続ける人と樹皇人の姿があった。







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