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桜桜にして咲く櫻  作者: nor
第二章 蓮(高二夏編)
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第四十八話 夏祭り⑦ 話

 わたしたちはそのままけもの道を進んでいった。

 途中には小さい鳥居や地蔵があった。


「ここはね、影のお母さんに昔連れてきてもらったところなんだ★★」


「そうなんだ」


 なんだろう、違和感…………あ…………


「星ちゃん、今影のこと―――」


「それにここは隣の神社が移転される前の場所に続く道なんだ★★」


 そう言って星ちゃんはわたしの言葉を切った。


 するとすぐに、茂みが明けて、少し開けた場所に出た。


「…………すごい」


 そこには木製のちょっとした神社のような建物と、石で作られた池、あと一つのベンチが置いてあった。

 池の石には苔が生していて、水面にはきれいな蓮が咲いていた。


「本当はこんな道通らなくても来れるんだけど、こっちのほうが秘密基地感あるでしょ?★★」


「うん…………」


 そう言って星ちゃんは歩き出し、ベンチに座った。

 わたしも、星ちゃんの隣に座り込んだ。


「いい景色だね」


 目の前には海が広がっている。

 少し小高い場所のようで、下には砂浜が見える。


「ここは花火を見るのにちょうどいい穴場なんだよ★★」


「へ~」


 わたしはそう感嘆しながら、その景色に見とれていた。

 光が少なく、星がきれいに見えるのに加えて、海も星の光を反射してとっても美しい。


「よくこんな場所、影のお母さんは知ってたね」


「ここはあの人の地元だからね、多分神社の移転前から知ってたんじゃないかな★★」


 ここって影のお母さんの出身なのか。

 影がここ出身じゃなくてあの別荘に引っ越したことは知ってたけど。

 だから影はここに住んでるのかな。


「なんでここに連れてきてくれたの?しかも影をハブって」


「ハブったわけじゃないよ★★

 離したのは事実だけど★来年くればいいし★★」


 そう言って星ちゃんは海を見つめた。


「葉菜ちをここに連れてきたのはお話があるから★★」


「話?」


「そう★★

 今まで話したかった事★★」


 そう言って星ちゃんは、少しベンチに深く座った。


「あたしね、影のことが()()なの★★」


「うん」


「分かる?あたしね影のことが血縁とか、幼馴染とか関係なく恋愛的に好き★★」


「分かるよ」


「…………え?★」


 星ちゃんはくるっとこっちを見た。


「分かるって…………☆彡」


「いや、見てたらわかるよ

 見せつけてたんじゃないの?」


「そんなわけないじゃん❢★」


 違かったのか。

 普通にあそこまでくっついているのに知らないという方が無理だ。


「だって、恋愛的にだよ❢?血縁者が❢」


「うん、まあだって、星ちゃんと影、兄妹じゃないし

 ていうか妹と弟居るんでしょ?」


「うっ…………❢」


 当たり前を言ったはずが、なぜか星ちゃんはダメージを受けていた。


「ん~でーも❢❢

 葉菜ちは女心がわかってない❢」


「わたし女なんだけども……」


 これまた当たり前の話である。


「だって、考えてみてよ★

 ちっちゃい頃からずっと片思いしてる男子がさ?知らない間に知らない女性とお家で二人っきりでいるって聞いた時のあたしの気持ちとか★★」


「ああ…………まあ」


 つまるところあれだろうか、嫉妬だろうか。


「でもわたし、別に影とは…………」


「それでもだめのなの❢

 あたしにとっては❢

 これからあたしが帰っても、葉菜ちだけは影と居続けられるじゃん★★」


 それだけでダメなのか。


「ふう…………」


 すると星ちゃんは、笑顔を消して、いつもよりも黒い目になった。


「だから、私がしたい話はこれ」


 星ちゃんの口調が、いきなり変わった。


「私はね、これまでずっと葉菜のことが()()だった

 私とは違って、影と一緒に居れて、話せる

 そんな葉菜が()()()だと思った」


 そう言って星ちゃんはわたしの手をつかんできた。


「だから、私は葉菜と影の関係を断ち切りたい

 葉菜には影にもう二度と関わらないでほしいの」


 そう言って星ちゃんはわたしの手をさらに強くつかんできた。


 

ーー凛視点ーー


「夕、まだ腹に隙あるか?」


 私たちはいまだ屋台街を歩きながらフランクフルトを一緒に食っていた。


「ん…………そろそろ限界が近いかも」


 夕は私が持っているフランクフルトを食いながら答えた。

 金魚は全部夕に任せている。


「そっか、あ…………ほい」


 私は夕の頬についていたケチャップを手で拭って食べた。


「?」


「ついてたぞ」


「ああ、ありがとう」


 夕はそう言ってまた一口食べた。

 限界とか言いながら食えはするようだ。


「あ~~~~!!!

 凛たんだ~~~!!」


 そんな声が右斜め前方から聞こえてきた。

 私と夕は互いに一気に知らない他人になった。


「優愛…………お前こんなとこにいたのか」


 私はそう言いながら、フランクフルトを食った。


「…………凛たん、私たちのこと探してなかったでしょ」


「いやいや?そんなことねえよ?」


「だってフランクフルト買ってるし…………ていうかライン見た?」


「あ?…………ああええと」


 私は目を少し泳がせた。

 すると優愛の後ろのほうに、なぜかうずくまってやられた後の敵キャラみてえな体勢で倒れてる晴斗がいた。


「それよりあいつはどうしたんだ?」


「ん?晴斗のこと?

 ああ…………さっき勢いで殴って蹴り飛ばしちゃったから」


「お前下手なチンピラより暴力的だな」


「う…………ぐはっ」


 そこらのチンピラでも大体何か目的をもって殴るが、勢いで殴るは怖すぎる。


()()()()()より凛たん!葉菜ちゃん見なかった?」


「いや、見てねえな」


「そっか~…………

 さっきから探し回って、もう大体の会場は周ったんだけど、どこにもいなくて…………」



「じゃあ、会場にはいねえんじゃねえの?

 たとえば、外れの公園とか」


「確かに!!

 花火まであとちょっとだから早く見つけなきゃ!!!」


 そう言って優愛は走り出した。

 私も優愛を追いかけようと走り出した。

 最後に見た晴斗の姿は、こちらに助けを求めるように手を伸ばしていた。


「た、たすけ…………ぐふ」


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