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桜桜にして咲く櫻  作者: nor
第二章 蓮(高二夏編)
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第三十六話 掃除ってなかなか進まないよね

 影の家に泊まった日から、三日が経った。


 その後も私は影の家におじゃまして星ちゃんとだべる日が続いた。

 明後日は影のお父さんがいるらしいので、明日影の家に行ったあとは夏祭りまでバイバイである。

 

 今は夜で自分の部屋だ。親が二人ともいないため久しぶりに()になっている。

 夏休みに入ってから星ちゃんがいるのでなかなかこういう状態になれず、なかなか久しぶりだ。

 まあ、星ちゃんといるのは楽しいからいいけど。

 

ピロン


 星ちゃんと優愛からのラインが同時にやってきた。

 私は最初に星ちゃんからのラインを開いた。


 内容は、どうやら星ちゃんも明後日家にいれないようで、荷造りを手伝ってほしいようだ。

 私は、了解!、と書かれたデフォルメされたサメとヒトデのスタンプを送った。


 次に優愛からのラインを開いた。

 これは私と優愛と凛のグループラインに来ていた。

 

 内容は、楽しみすぎて待ちきれない~~、とのことだった。

 私は、耐えろ、と送った。

 同時に凛も、耐えろ、と送っていた。

 二人とも優愛への対応が似すぎである。



 星ちゃんは花火初めてって言ってたし、多分見えるよりもよっぽど楽しみにしてるんだろうな。


「…………寝よ」


 私は部屋の電気の下がっている紐を引っ張って電気を消し、ベッドの中に潜った。



ーーーーー



 翌日。

 わたしは影の家でお昼ご飯を食べてから、星ちゃんの部屋で荷造りを手伝っていた。


「ありがとね、葉菜ち★★

 手伝ってくれて」


 星ちゃんとわたしはクローゼットにあった服をたたんでスーツケースに詰めていた。

 スーツケースはいくつかあって、全部原さんに持たせるらしい。


「全然いいよ

 こういうのしてないとあまりに暇すぎて死にそうだし」


 最近勉強して寝て、星ちゃんとしゃべって寝て、おやつ食べて寝て、そんな生活ばっかしである。

 あれ?高2の夏薄い…………?


「でも、葉菜ちの家からここまでって遠くない?★

 それなりに運動になるでしょ★★」


「そうなんだよね」


 ここのところあまりに暑すぎて死にそうである。

 でも森の中は影が多くて少し涼しさに感動する。


「ていうかそのおかげで、最近体重減ったんだよね」


 前ここに泊まった時計ったら、五キロほど痩せていた。

 革命である。


「そのくらい距離あるもんね★★

 山道だし、帰り、上り坂になるでしょ?★」


「うん、だから帰るときのほうが……きつく…て…………」


 わたしはだんだん服をたたむのが遅くなり、やがて止まった。


「…………わたし星ちゃんに家教えたっけ?」


「あーーーー★★

 まあ言ってたよ?★」


「言ってない」


 再度言おう。

 わたしは一日、一か月、この人生でのほぼすべての会話をきっと覚えているほど、記憶力がいい。


「ん…………☆彡

 影兄が…………★★」


「影にも言ってない」


「…………☆彡」


 星ちゃんの手元も気づくと止まっていた。


「…………あーー★

 これ影兄の小さい頃の写真ーー★★」


 見つけたかのように言って、星ちゃんは後ろにあったスーツケースの中から写真入れを取り出した。


「そらしたねえ」


 話を。


「これ、影兄と一緒にここ来た時の写真★★」


 そらされたが、まあ興味はあるので、わたしはその写真のほうに目線を映した。


 写真には小さい頃の影がお母さんと一緒に、あの蛍がいた川で、月を見上げている写真だった。


「これ影いくつ?」


「あんまり覚えてないけど、多分小3とかかな?★★」


「そのころから髪の長さは健在なんだ」


 中二こじらせてああなったわけでもなく、ただ昔からああだと思うと、すこし面白くて笑ってしまった。


「影お母さんっこだったの?」


「まあそうだね★★

 結局父親も、ほかの親戚もちょっとあれだったから☆彡」


 確かに、影は自分の家の人を嫌っている節があるし、お母さんは唯一の存在だったのだろう。


 そんな人が亡くなって影は…………

 やめとこ。考えすぎはよくない。


「あとね、これは影兄とUSじぇいに行った時の★」


「わあ!まだひねくれてなさそうでかわいい!」


「あとねえこれは…………★」


「おい星、これ忘れもんじゃ…………」


 わたしたちがなぜか影のみの写真がまとめられた写真集を見ていると、黒いジャンパーを持った影が部屋に入ってきた。


「何見てるので?」


 影は少し声を小さくして聞いた。


「えっとこれは★★」


「影の写真集!」


 わたしは言い籠る星ちゃんの代わりに写真集を奪い取り、適当なページを影に見せながらそう言った。


「…………これ」


 影は近づいてきて、その写真をまじまじと見た。


「おい星これ俺が昔捨てろって言ったやつじゃねえか?」


「い、いやあ★★

 覚えてないかな❢★★」


 星ちゃんが開き直った。

 わたしは気になってその写真を見ようと写真集のページをこっちに向けた。

 写真は影が確実に身長以上にあるギターを弾いているときのものと、ピアノの発表会の時の写真だった。


「没収です」


「あ、ちょ」


 影に写真集がとられてしまった。


「影兄?★★

 捨てたりとかはしないよね?★★」


「ピアノの発表会とか黒歴史でしかねえよ」


 影はパラパラと軽く中身を確認した。


「うわ、これも、うわはず…………ああ、死にてえ」


 だんだん影がネガティブになっていった。


 すると影はぱたんと写真集を閉じた。


「とりあえずこれは回収だ」

 

 影は写真集をぶらぶらとしながら言った。


「そんな~~★★」


 星ちゃんはそう言いながら影から取り返そうと手を伸ばした。


「ちょっ、くっつくな…………!」


 星ちゃんと影が写真集をめぐってじゃれてるうちに、わたしは無関係化のように服をたたみ始めた。


 そうして、盆と夏祭りの1日が近づいていった。

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