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桜桜にして咲く櫻  作者: nor
第二章 蓮(高二夏編)
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第三十話 誘い

「おう、久しぶりだな」


 今日は、影の家ではなく、優愛と凛と一緒に街まで来ていた。

 凛のコンクールも終わり優愛が招集したのだ。


「久しぶりだね、凛」


「久しぶり!!凛たん!!」


 そう言いつつも、なぜか優愛はわたしに抱き着いてきた。


「優愛。早くいかないと時間なくなるよ?」


「はーい」


 優愛はしぶしぶわたしから離れてわたしたちはあっつい中、駅から歩き出した。


「たんはやめろよーー」


 「まともに言えた…………」と凛は謎の達成感を吐露した。

 しかし、わたしたちはその願いにこたえるつもりはなかった。


ーーーーー


「で、今日はどこに行くつもりだ?」


 わたしたちは優愛が行く通り、人通りの多い道を大通り沿いを歩いていた。

 つまるところ、わたしたちはいったいどこを目指しているのかわかっていないのだ。


「お昼ご飯食べるまではぁ、普通にお買い物とかかなぁ」


「お昼ご飯食べたあとは?」


 なかなか含みのある言い方をするものである。


「ん!」


 優愛はすごく楽しそうに笑って


「それはまだお楽しみ!!」


 と、さぞわたしたちにサプライズをしたくてたまらないという感じで言った。


「お前ほんとそういうの好きだよなあ」


 凛があきれるようにそう言った。


「だって今日の主催は私だよ?

 つまり!!私が先導者なのだ~~!!」


 優愛は腰に手を当てて決めポーズをした。


「てなわけでーー、今日は存分に振り回されてもらうよ?」


「「ほほう?」」


 そんな一連の優愛の言動にわたしと凛は同じような悪だくみを思いついた。


「ならさ、優愛

 さぞかしわたしたちのことも喜ばせてくれるんだよね?」


「いっちばんえらいもんなーー?」


「え、あ。うん!もちr」


「じゃあさあ?」


「もちろん」


 わたしと凛はそう言って優愛にじりじりと詰め寄った。


「「奢り?」」


 わたしたちがそう言うと、優愛は目をくるくるとさせて口をパクパクさせていた。

 圧をかけすぎたかな?と凛のほうを向こうとすると、


「ま、ま、うううう、ます!!!」


 と優愛は飛び跳ねて叫び、わたしたちは後ろに後ずさってしまった。


「もちろん!私がえらいので!皆様に!おごらせていただく所存でございま~~す!!」


 わたしと凛は顔を見合わせてしめしめと、悪い顔を見合わせた。


ーーーーー


 ある程度買い物(わたしは特に買っていないが)などをして、昼時になり、わたしたちは優愛が予約していたおしゃれな喫茶店のようなお店に来ていた。


「というわけでえ…………」


 ある程度昼食を食べた後、三人でデザートを食べていると、優愛が涙目でそう話し出した。

 なぜ涙目なのかは…………わたしの隣にいる凛の満足げな顔と、優愛の隣に置いてある三つほどの紙袋を見れば、おわかりだろう。(あと軽くなった財布)


「今日三人をここにお呼びしたのはほかでもありませんっ!一つお誘いしたいことがあったのですっ!!」


 優愛は背中をピシッと伸ばしてそうわたしたちに宣言した。


「で……ちゅーーー……なにがあって……ちゅーーー……私たちを」


「さそったの?」


 ずっとジュースのストローから口を離さずに話す凛に代わって、わたしが述語を補った。


「中一。雨で中止。

 中二。私、親のせいで不在。

 中三。受験期により不参加。

 高一。台風。

 何かわかる?」


「…………?」


 凛はストローからジュースを吸い上げながら頭の上に?を浮かべていた。


()()()ね」


「ザッツラーーーイト!!!」


 凛はそれを聞くと、ああ、と納得した様子で、やっとストローから口を離した。吹部の肺活量とか、もうそういう類じゃないのでは?


「つまりその誘いのために私たちを呼んだのか?」


「ラインだけで済んだくない?」


 わたしもそう言った後、ジュースをストローで吸い始めた。


「ノンノンノン。

 ナンセンス。君ひじょーーーにナンセンスだよ?」


 どこでそんなセリフ覚えたのだろうこの子は。


「なんかほかに用があんのか?」


「夏祭りといえば!

 金魚すくい!

 りんご飴!

 綿あめ!

 花火!

 恋!!」


 優愛は妙に情熱を込めて語りだした。


「でも、何を差し引いても重要なのは~~」


「「重要なのは?」」


 わたしもストローから口を離してその問いかけにこたえた。


()()でしょ!!」


 優愛は机をバンと叩いて立ち上がりなんかやり遂げたみたいな表情になった後で、パフェの残りを勢いよく食べつくし、ほっぺにピンクのクリームが付いたまま


「てなわけで今日は!三人で浴衣を買います!!」


 とわたしたちに顔を近づけて人差し指をぴんと立てていった。


「付いてるよ」


 とわたしは優愛のほっぺについていたクリームを取ってパクっと食べた。


「ポッ…………!」


 と優愛は顔を赤らめて爆発し、すとんと椅子に座った。


 凛はなぜかわたしにむかって「これだから…………」と言いながらまたジュースを飲みだした。


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