前へ目次 次へ 19/38 苦渋の末に 2 怯える子兎である私が、 まさに清水の舞台から飛び降りるかの如き 覚悟をして行った歯医者だったが、 お盆休みだった。 その張り紙を見た時の私はといえば、 それはもう多幸感に包まれた最上級の微笑みを ついつい浮かべてしまって、 その場を通った名も知らぬ人々はその笑顔を見て、 絶対に、それはもう確実に、散歩中の犬でさえ、 窓際で微睡む猫でさえ、 私に一目惚れをしたに違いない。 あぁ、またも罪もない人々を魅了してしまった。 罪な女、私。