王都を目指して
宿に戻りとさっそくリプレさんに素材売却を頼む。でもこうして頼むのも50層を越えたから少なくなっちゃうかもしれないな。
「あらま、50層を越えたのねー・・・冒険者ギルドの資料読んだのでしょう?向う側も同じ魔物なのよ。だから狩るかどうかは任せるわー。」
「戻って来るかはわからないですけど、いろいろありがとうございます。確か追加した8日分残ってると思いますけど、結局僕が払ってるわけじゃないので返金は不要です。また戻って来るかもしれませんし。」
「あらま?そうなのー?じゃあその8日間はお部屋そのままお貸ししちゃうわー。」
丁度40層を越えたところで延長するつもりだったんだけど、40層までの素材を渡した時に延長しておいたわよーと言われて追加の10日分はおまけしてもらっちゃったんだよな。
「それにしてもこのムカデの甲殻は素晴らしいわねー。10個ももらっちゃったけど、1匹しか倒してないのよねー?」
「そうですね、僕も確認してちょっとびっくりしました。」
まぁあの大きさから甲殻1枚だけ出てもどんだけの大きさになるんだと言いたくなる。10枚に分かれても十分に大きいけど、これはダンジョンポーチだけど、アイテムポーチの受け口はかなり広がるからな。出すのは意外と簡単だった。
そもそも袋の口部分から出し入れしなくてもいい能力もあるわけだし、ほんとこの袋だけだいぶ他のアイテムに比べて高性能な気がする。
「それで、明日からはもう向う側を降り始めちゃうのでしょう?一応注意しておいてほしいのは、向こう側で祭壇を灯すとこっち側の祭壇が消えて飛べなくなっちゃうのよー。まぁ出てくる魔物は一緒だし、50層はつながってるしでどっちに灯しても困ることはないと思うんだけどねー・・・」
「それは初耳でした。ちょっと灯すかどうか考えてもいいかもですね。基本的にはもう王都にまで行ったら戻ってこなくなると思うんですけど。」
ベードに駆け抜けてもらえれば多分2日くらいで向う側の王都まで到着できるだろう。でも道中にもう少し魔物たちと戦うのもいいかもしれないし悩みどころだ。
それに王都ではダンジョン素材を売っても問題ないとは聞いてるけど、実際どうなのかは自分の目で確かめたい。いろいろ考えると万が一のためにも一応宿をまだ借りておきたいんだよね。
「お部屋については大丈夫よー?このムカデの甲殻とか、ミミズの魔核も売ってもらっちゃって、私ほくほくだからねー。」
「そ、そういっていただけるとありがたいです。」
「知ってる?このミミズの魔核が一応攻撃用の魔道石に使われるのよ?またお店の在庫が潤うわー。」
「お店の在庫って、この宿屋の在庫ってことです?それともどこかで売りに出してるとか?」
「え?あぁ!えぇ!そうよ!この宿に在庫を持っておきたいのよー。うふふ。」
たまたま聞いただけなんだけど、なんか言いたくない事情があるってのはわかっちゃったので、これ以上は追及しないほうがよさそうだ。
とりあえず今日は寝て、ログアウト中にどうするか考えておこうかな。リプレさんにそれではと一言かけて部屋に戻った。
ゲーム内での夕飯と空間術特訓を済ませてログアウトしてきたわけだけど、現実のほうでもお腹はすいてる。こっちではこっちで冷凍甘酢タレ唐揚げをチンしていただく。向こうで作ってるせいもあってこっちで作る気が起きないのはちょいと問題だな。せっかくのガスタイプコンロが少し悲しそうだ。でも今はゲームのほうの世界にどっぷりつかりたいからな、ごめんよ?
時間が来たのでログインしようと思ったら何かお知らせが書いてある。王都にて武術大会の受付が開始されたそうだ。大会ルールは王都にて確認してくださいと書いてあった。大会系のイベントが発生したのか。参加するかはルールとか次第だけど、ちょっと気になるから見に行ってみたいな。受付は明日からゲーム内で5日間か、王都でもすぐに大会の開催場所になるちょっと急ぎ足で行かないと間に合わないかもな。
よし、道中の魔物討伐はしないでベードに走り抜けてもらうことにしよう。この後の予定は決定。いざログイン。
「ん、おはようみんな。予定が決まったよ、今日からベードに王都まで走り抜けてもらうことにした、それでいいかな?」
「きゅ。」「ばぅ!」「――――。」「コ。」
「よし、それじゃあ広げてる生産器具を片付けたらダンジョンに行こうか。」
一気に目指すとなると少しワクワクし始めてきた。王都か、どんなところだろうか?今までの街並みとは違うんだろうか?気になる所だ。
お片づけを終えてベードにみんな乗ったら、トランスアルターでいざ50階層へ。そして階段からすでに駆け下り始めていく。
道中特に何事もなく進み、闇の抱く刻には砂漠を越えて森の途中まで来れた、確か数えてた感じ23階層だったかな?これなら明日には王都につきそうな勢いだな。さすがベードだ心強い。
食事は道中軽く済ませてたけど、休まずで平気だと言うのでそのまま次の日も駆け抜けてもらうことになった。夜も走るなら確実に明日につくだろうな。




