自分の店舗と接続倉庫
結局フレウドの様子見も兼ねて昨日はそのまま宿で過ごしたけど、そのあいだにトレビス商長から店舗ができ上った連絡を受けていた。宿を出る前に先払いで延長してもらって置いて、今日は帰宅の時だ。
教会について、神官の人に一礼しつつ、自分でトランスロケーションを発動。みんなで一緒に家の簡易神殿に帰宅。うーん、ちょい狭いか?ぎりぎりだな。さっさと簡易神殿の部屋から出てリビングに。
「さて、僕はこれから出来上がったらしい店を見に行く、みんな自由行動でいいぞ。」
「きゅ。」「コ!?」
珍しくレイトが僕の上から降りて、フレウドをベードの頭上から突き落とす。おいおい大丈夫か?
「なにするかわからないけど、昨日せっかく治ったんだから無理はさせるなよ。」
「きゅ。」「コ・・・」
そのまま鼻先で転がされていく。引き戸はどう開けるのかと思ったけど、レイトが飛び、足を指かけ部分にかけてズイッと開いてしまった。まぁあれなら玄関のほうのドアも開けれるだろう。
って僕も一緒に出ればいいだけじゃん。慌てて追いかけてみたけど、もう二匹の姿は扉の先のようで、扉が閉まり始めていた。
なんか悪いことをしたなと思いつつ、ドアを開けてベードとモイザと家を出る。もうレイトとフレウドの姿は見えない、どこに行ったんだか。まぁ大丈夫だと思っておこう。
家の横に新しい建物ができてる。これがコネクションストレージみたいだな。今は触らないで、後で使い方ちゃんと聞いておくか。
モイザは自由行動として、外の料理セットで料理したいようだ。そういえば作る量制限してるからな。そのせいなんだろう。
一応錬金セットと染色桶も置いておこうか。そうだ、あとでフレウドのハチマキとか染色してほしいと伝えておこう。
伝えたら料理セットにスタンバってた体勢から脚立を降りて染色桶のほうに。やりたいことやっていいんだぞ?といったんだけど、なんか料理セットのほう向いたり錬金セットのほう向いたり、染色桶に向きなおったりしたあと、足をわちゃわちゃさせていた。なんか可愛いな。
結局自分の糸を布状に編み始めた。どうやら染色することにしたようだ。手伝いとしてなのか、レササと2匹の蜘蛛が近寄ってきた。
モイザとレササが足を絡め合う。そしてレササが二匹に何かいうと、糸玉をポーチからだしてモイザのように布にとし始めた。
ってあれ?他の蜘蛛達も軒並みポーチをしている?おかしいな、ハウレッジ達にしか渡してなかったはずなんだけど。
その辺もトレビス商長に聞くしかないな。さっさと店のほうに向かうとしよう。ベードとレササがついてきてくれるみたいだけど、自由行動してていいんだけどな。ついてくるのも自由だけど。
露店のあったところには、露店なんて目じゃない大きさの1階建ての店舗ができ上っていた。もっとこぢんまりとしたのを想像してたんだけどな・・・
「お帰りなさいませ。リュクス様。ご注文通り店舗設営が終わりました。コネクションストレージのほうも設置済みでしたが、見られましたか?」
「はい、確認しました。けどこの店舗は、いささか大きいんじゃないかと思うんですけど。それに今は僕の出せる商品も少ないですし。」
「そうでしょうか?もし今後商品が増えた場合、この大きさではもの足りなくなると思いますよ。」
「そ、そうですか。あんまり増えるかどうかわからないですけどね。」
「ところで、今はアレを付けてらっしゃらないのですね。てっきりつけてくるかと思ったのですが。」
あれって、なんだ?あぁ仮面のことか。そういえばせっかくもらったのに旅商の時以来付けてないな。
「今日はトレビス商長だけかなと思って付けてきませんでした。でも旅商やる時なんかには使わせてもらいますよ。」
「すばらしい!他の街で旅商をする予定があるのですね!ぜひその際は私に商業結果をお教えくださいね。」
「は、はい。」
「では店舗とコネクションストレージについて説明させていただきますね。まずは店舗内にどうぞ。こちらが裏口になっております。」
裏口用のドアはちゃんとベードも楽々通れる大きさになってる。その辺まで考えて作ってくれたのか、これが標準サイズなのか。
店の中は入口と清算用水晶の置き場、そして裏口の場所以外の壁沿いに、ずらっと展示ケースが並ぶ。さらに中央に3列の展示ケースが並ぶ。
「この店舗の形で50種類の商品を並べることができます。基本無理にすべてのケースを埋める必要はありません。初めのうちは水晶に近い位置に商品を3,4個並べるという店舗も珍しくありませんよ。」
「そうですか。それなら少し安心です。僕たちの商品は種類はそんなにはないですから。」
「今はそうかもしれませんが、今後どうなるかはわからないですよ?とりあえずすぐに始められるよう、こちらで露店で売り出していた商品を、同じ値段で並べさせていただきました。よろしかったでしょうか?」
「全然!むしろありがたいですね。」
「判断が正しくて安心しました。今後商品を追加する場合はこの店舗に来て、直接展示ボックスの設定をする方法と、もう一つコネクションストレージから設定する方法があります。その説明のためにコネクションストレージのほうに向かいますが、よろしいですか?」
「大丈夫ですよ。お願いします。」
トレビス商長を追うように店の裏口から出る。そのまま来た場所を戻り自宅横のコネクションストレージに到着。
「本来ならこちらでお待ちしたかったのですが、先に店舗の紹介をしないと、こちらでの説明に結び付きづらいと思いましたので、店舗でお待ちしていました。さぁ、このコネクションストレージはすでにリュクス様のものです。」
「え?もう僕の物なんですか・・・?」
真っ白な真四角の倉庫。でも倉庫のどこにもドアはなく、倉庫横にポツンと1つ箱が付けてあるだけだ。
「えっと、どう入るのでしょうか?」
「ふふ、初めて見るとさすがにそう思いますかね。入口の外に箱が備え付けられていたのを見たと思いますが、あれがストレージへの接続部分です。中は保存用空間になっていますので、入るのはとても危険な状態ですよ。」
おうふ、なるほど。つまりこの倉庫はある意味でっかいアイテムポーチってことなのか。そのままトレビス商長と共に箱の前にと戻る。ちょうど自宅のドアと同じ方向につけてくれたようだ。
「ではご説明させていただきます。この箱の上蓋を開き、中に製作物、素材を好きに入れていただいて大丈夫です。そうすればコネクションストレージ内にと保存されます。またリュクス様の蜘蛛達に接続させたポーチをお配りしました。以降ポーチによって自由に出し入れすることが可能です。後、こちらはリュクス様用のポーチになります。どうぞお受け取りください。」
普通のポーチと違いが分かるようにか、ポーチの色は青色になっている。そのポーチの紐の結び目部分に、小さな水晶玉が付いているのがわかる。
「そのポーチの水晶でコネクションストレージ内の一覧を見ることができます。そこから取り出したいものを選択して取り出すことも可能ですよ。しまう場合はそのままそのポーチに入れていただいて大丈夫です。ただし魔物の死体は入れておくことをお勧めしません。一度解体して素材にしてからがいいでしょうね。死体のまま倉庫に入れすぎた方が、処理に困って倉庫を破棄した例がありますので。」
「な、なるほど。入れないように気を付けます。」
「その点はリュクス様なら大丈夫でしょう。続いて店舗との接続設定です。こちらの箱の天板についている水晶をご覧ください。」
言われると確かに閉めた箱の上蓋には水晶が付いていたな。
「こちらに触れていただきますと、接続店舗として、先ほどの店舗が設定されております。もし旅商鞄と接続したい場合は、接続したい旅商鞄を触れさせて、登録してくださいね。とりあえず店舗のお話をさせていただきます。
店舗の欄を選びますと、このように先ほどの店舗の見取り図が出てきます。今どの展示ケースで何を最大何量売っているのか、売ってる商品は倉庫にどれだけ残っているのかが表示されています。
このすでに入れてある展示ケース部分に触れていただき、値段や最大補充量などの変更もできますし、販売個数制限や販売停止をかけることも可能です。
続いて空いている展示ケースを選びますと、コネクションストレージ内のアイテムで何かを売りに出すか選択することができます。あとはすでに売っている商品と流れは同じですね。何かご質問はありますでしょうか?」
「いえ、ないです。大丈夫です。」
ちょっと一気に詰め込まれた感じはあるけど、まぁなんとなくは覚えられた。必要に応じて売り出すものを追加するとしよう。
「よろしいでしょうか。ではここまでが通常の方と同じ説明ですね。ここからはリュクス様に教える少し違った使い方です。そのポーチは使わず、コネクションストレージと声に出してみてください。」
「えっと、コネクションストレージ?うわっ!」
な、なんだ、急に目の前に変な歪みのある場所ができ上る。歪みができる場所をイメージでもうちょっと遠ざけて見やすい感じに。
乗ってる文字で分かったけど、これ僕のストレージ内のアイテム一覧だな。なんとなく劣蜘蛛の糸玉を選択。
「手の動き的に、何か選択されましたか?そしたらそのうつりだした空間に手を伸ばし入れてください。」
「えっと・・・こうかな?おぉ?つかんだ。出てきた!」
手元にちゃんと劣蜘蛛の糸玉を取り出すことができた。え?これどこでもできるの?便利じゃん!
「これはアーバーギルド長に依頼してできた使い方です。個人で術式なしで空間術を使える方でないとできない芸当ですので、むやみに人前で使わないようご注意ください。」
「はい、その辺は大丈夫です。ありがとうございます。」
「では証明をお出しください。私の証明と重ねることで契約が完全に完了します。」
おっと、支払いもこみかな?さすがに金はとるだろう。500万リラ行くかというくらいだったのに、1万リラほどしか残らなかったよ。というか払えてよかった。
「おっと、申し訳ありません。結構ギリギリでしたか?」
「大丈夫です!心配ありません!」
「そうですか。ではこれで私どもからスタッフを派遣して店舗を開始させますね。」
「あ、ちょっとまってください。レササ、店舗内にも蜘蛛巡回させてくれるか?」
「―――。」
お、大丈夫のようだな。少し待つと3匹のレッサースパイダーがきてレササから指示を受けた。びしっと敬礼風に前足を掲げると、すぐに店舗方面にと向かっていった。
「というわけで、店舗内にあの3匹がいます。客対応ができるかはわからないですが、彼らに客対応を教えていただけるとありがたいです。」
「なるほど!蜘蛛の方達にも商業を学ばせるのですね!では私が請け負います。そのまま始めさせていただきますので、ではこれで失礼。」
「え、あのちょっと?」
「おっと忘れてました。看板は兎と狼と蜘蛛と鶏の4匹の看板ですが、よろしかったでしょうか?」
「え、あ、はい、大丈夫です。」
「ぜひ後程ご確認ください。看板の変更ならば問題ありませんので。では失礼しますね。」
って、ほんとに店舗のほうに行っちゃったよ。一人で蜘蛛達への教育と客対応してくれるつもりか?ギルド長が?え、まさかさっきの値段それも込み?
はぁ、まぁいいや、もう好きにしてくれ。もはや僕の店じゃなくトレビス商長の店みたいだな。まぁ蜘蛛達も一緒ならそうでもないか。そのうち仮面付きで店の中を見てみますかね。




