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閑話 ある鶏の生末

side.フレウド・アルイン


 それは唐突に俺の身に起こった異変。原因なんてわかるわけがない。

 ただただ体がすごく熱かった。熱いのに熱いものが食べたかった。

 そう思うと、自分自身で熱いものを作り出すことができた。ただ、それを食べて少なからず満足感はあったけど、むしろ作る時の消耗分で空腹感は増えていく。

 それでも熱を食べたくて、耐えられなくなって作り出してしまう。空腹感から今まで食べてた植物も食べてみたけど、口に入れた途端、俺は吐き出していた。体が拒絶したんだ、味も含めて食えたもんじゃなかった。

 食事問題だけじゃない、いつのまにか周囲の奴らが俺から逃げるように遠ざかって行き、助けてもらえる存在もいなくなっていた。

 そんな状態でどれだけ過ごしただろう。限界が来て俺は地に転げ、動けなくなっていた。

 まだ生きてるけど、俺はその日死ぬのだと思った。目の前の存在に、食われるのだと思った。


『この付近で一番強い感覚にきたけど、お前一匹なのか?』


『何の話だ?』


 現れた大狼にすぐ食われるかと思ったけど、なぜかその言葉から始まった。


『ここの奴らは集団的に動くだろ?』


『他の奴らは俺から逃げていっちまったよ・・・』


 そう、俺はもう孤独だ。空腹の限界でろくに体も動かせない。さっさと食って、俺を終わりにしてくれ・・・


『そうか、お前はまだ生きたいか?』


『なんだそれ・・・そうだな、もしまだ生きれるならな。でもお前に見逃されても、俺はもう空腹で動けない。』


『孤独、空腹か・・・お前、何食うんだ?』


『は?まぁいいや、今食いたいのは熱いものだ、たぶん火とか炎っていうやつ。』


『なるほど、それなら主が火術を使えたはずだ。よし、俺に乗れるか?』


 は?俺に乗れるかだって?その大狼は俺の前に顔を下ろした。そこに乗れってことか。ギリギリそこまでなら、転がって動ける。

 意外と大狼の頭上は居心地良いな。まるで俺が乗ってるためのようにしっくり居座れる。


『少し走るぞ、危なそうなら声かけろ。』


『お、おう・・・』


 どこに連れてかれるっていうんだろうか。主とか言ってたからそいつのところか。不安感はあるけど、逆らう気力もなかった。


 そして連れていかれたところにいたのは聖族人種だった、こいつがこの大狼の主人?

 そいつの言葉は俺にはわかるけど、俺の言葉はわからないらしく、俺が上手く腹が減ってること、火がほしいことを伝えると、火の塊を用意してくれた。

 その魅力的な火の塊を、俺は余すことなく吸い込んだ。自分で用意した火がちゃちな味といえるほどにうまくて、夢中で吸い込み切ってしまった。

 なるほど、大狼も主などといっていたが、食事目当ての関係ということか。なら俺もこいつから餌をたかってやろうじゃないか。

 温かい力に包まれて、こいつが主人となったことがわかる。だがそのあと、俺はまた戦慄した。その聖族から降りてきた存在によって。


『貴様、よもや代価なしでとは、考えていないよな?』


『そ、そんなことはありません。確か人種は卵を求めていましたよね?』


 降りてきた兎の魔物に、俺なんかでは絶対かなわないと思った。俺はとんでもない奴についてしまったのかもしれない。

 おとなしく卵を一つ産めば、聖族は喜んだようだ。それで兎からの威圧もおさまった。

 それで俺の気も緩んだのか、一気に眠気が襲ってきた。頭に何かまかれたけど、それも気にせずに眠りについた。




 主人がなにか料理という食べるものを作っていたのだが、そこで使ったらしい熱いものの液体が気になった。

 ファイアボールという火の塊でも飯にはなるのだけど、空気を食べてる感じで、いまいち満足感が低い。だから固体のものを食べたいのだけど、何が食べれるのかわからない。でも熱い液体ならばと思ったわけだ。

 思った通りだ、この熱い液体なら飲める!味はひどいかもと覚悟してたけど、思ってるよりもうまい。主人が作ったなのだからだと後でベードから言われた。

 翌日、あの熱い液体の味を思い出す。火を思い出して火を作るように、その液体を熱くない状態で作ることができた。

 これじゃ飲むことはできないけど、この液体が燃えやすいということは本能でわかった。新しい力の使い方が何となくわかる。火を作るのと同じだ。

 というか、この力の液体はそもそもで食していいものじゃなさそうだ・・・

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