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閑話 従魔となった者たち

Side.ベード・アルイン?

 あの日、縄張り拡大のための群れの招集が行われた。その拡大のために以前、何匹の仲間が聖族に殺されたと考えているのか。ようやく一群れの頭になれたばかりで、参加は当然拒否した。その時は知らなかった、参加拒否したら追い出しのためにあんな事態になるなんて。

 重傷でその場から動けず、死を覚悟していた。現れた聖族にもうだめだと思ったとき、なぜか体をなでられていた。そして不思議なことに体の痛みがゆっくりとだが引いて行った。さらに食糧まで渡された、食べたことのない旨い肉だった。

 助けられた聖族により恩を感じていたので、見かけた戦いに手を貸したつもりだったが、兎に自分がいれば平気だった、余計なことをするなといわれたような行動をされ、いつか正しく恩返しするためにと従魔になった。決して豚肉に釣られたわけではない。

 街の中ではおとなしくするように言われていたが、聖族の連中がじろじろと見つめてくるので、何かしようとも思えなかった。主についていくのは退屈ではあったが、レイトさんもついていくのでついていくのが当然だと思った。

 大討伐の際にレイトさんのスパルタ教育でインヴェードウルフからナイトバイトウルフに進化した。夜通し使ったこともない魔法というものを練習させられたが、そのおかげで、群れから追い出した奴らを見返すことができたから、満足はした。元仲間たちの死体は森にと埋めてやった。そういえば、なんでも影術になったのは従魔となった影響で、魔物ならば影魔法を覚えると思ったとレイトさんが言ってた。聖族の連中に見られにくくなったし別に何でもいいと思ってる。

 主の住処となる場所にいるけど、ここは居心地がいい、宿とかいう仮の住処もよかったけれど、好きにしてていいといわれるとそれだけで気が楽だ。ただし何日かしたらこの街を出るそうだ、もちろんついていくつもりでいる、まだ恩は返せていないと思っている。今日しばらくはここにいるそうなので、暇なら外に行くかといわれたが、今日は寝てもいいといわれたベッドの上でゆっくりと寝ていることにする。宿では乗せてもらえなかったけど、この上気持ちいい、今のうちに堪能しなくては。




Side.モイザ・アルイン?

 森で出会った聖族から漂う、今までに感じたことのないほどかぐわしく、甘い匂いに釣られて追っては見たが、その匂いの元がほかの聖族の持つ鞄からすることがわかると、いったん子供たちに後ろを張らせて自分自身が正面に立ちふさがった。

 他の聖族よりも言葉がはっきりとわかる彼からの交渉に応じたら、緑甘樹の実の蔕部分の皮が剥かれたものを渡された。いつ聖族に襲われるかわからないこの森よりも、彼についていくほうが、種として長く生きられるのではないかと判断して、子供たちとともに下につくことを決意。そのときからモイザという名を与えられ、従魔というものになった。

 街の中で初めて見た赤い木の実がとても気になったので、主に頼んでみると用意してもらえた。甘さは緑甘樹ほどないのだが、吸うではなく食べることのできる実でとても気に入った。子供たちも気に入ったようだ。主がその苗木を植えてくれたので、育てば自分たちで食べれるだろう。

 主の力を借りて緑甘樹の実を自分たちも剥けると分かったのは、おそらく自分の力の影響なのだろう。ただ、それに関する力が何なのかまでは理解できず、力を得ることもできなかった。料理といわれる力を借りた際には、すぐに力を得てもやめられないほどに楽しく感じた。特に実を茹でたときの匂いがたまらなくいい。茹でた後ならば緑甘樹の実も食べれることがわかったので、木が育ったらたくさん茹でて子供達にも食べさせたい。今は主のために露店という施設に入れるのが優先だ、糸玉も並行して行うように伝えてある。自分も糸玉を作り露店にと入れることにしよう。

 主から離れても主の力である実の蔕とりができたことはいいことだった、おそらく従魔となったおかげなのだと思う。なにやらその日は露店付近が騒がしかったと思う。土地の中で主に聖族の方が話しかけてきた日だ、なんでも自分の行動を不思議がっていたようだ。生みの母から毒術を学んだ時と同じように、その聖族から力を借りて使って見せた。まさか力を自身だけでも使えるまで借りれるとは思っていなかったが、新たな力も手に入れることができた。これも主のおかげであろう、普通自分たちではこんな力を使うことはできない。同じ種族からしか力を受け継いでこなかった自分たちでは、絶対に無理だった。今はまだ森にすむであろう他の同族を少しさげすみそうになる。だが、主のような者と出会えた自分はきっと奇跡だったのだろう、他の聖族ならばおそらく惨殺されていたと思う。それが聖族のイメージなのだから。こうして付き合ってみなければわからないのだから。

 その次の日には主によると雨をしのぐための屋根なるものを作るといわれた、巣が濡れぬようにとの配慮だ。ベード殿やレイト殿とちがい、自分たちはこの地に住まわせてもらっているだけなのに、もうしわけがない。作業してるものの言葉には従うようにといわれた、顔を動かせば拒否、肯定は伝わるので、主がいなくとも何とかなるだろう。

 初めに作られたのは主の住まいとなるらしい家というものであった。閉鎖的空間に聖族の人種はすむらしい。中を見せてもらえたが、とてつもなくその角に巣を張りたい謎の衝動にかられたので、指示でない限りもう入らないようにする。

 続いて屋根を大きく張ってもらえたので、食事をしている唯一の声の高い存在を引っ張り誘導。主とよく話し、以前に裁縫という力をくれたこの存在ならばと思っての行動だった。巣の位置を動かしたいことをどうにか伝えることができ、なぜか土地の真ん中にと移動してもらえた、主になんと説明すればいいかと思っていたが、その者いわくこのほうが主は安心するだろうとのこと。聖族のことは聖族のほうがよく知るのであろう。以前の巣はきちんと処理しようと思ったが、その者に糸は回収してもいいかと聞かれたので許可した。とても喜んでいたようなので主に報いてほしい。

 土地に様々なものを植えていたが、おそらくすべて主に許可済みなのだと判断し、自分たちは邪魔にならぬように糸玉製作とレササとの交代で料理を行っていた。料理は料理小屋というものを作ってもらったが、この小屋は非常に快適である。

 主が戻ってきた後、家の中に入るかと聞かれたが、指示ではなかったので遠慮をしておいた。その後一度地を離れた主が帰ってきた後に重要な話があるといわれた、何でも数日のうちに街から旅立つそうだ。その際に連れていけるのは1匹が限界だと謝られた。そしてこの土地は自分たちが過ごすための場所として、こうして整えてくれたのだという。あの裁縫の力をくれたものも、時折様子を見に入ってこれるようにはしているが、他の聖族は露店までしか入ってこれないそうだ。それはとてもありがたいのだが、ならば急がなくてはならない。やはり選ぶのであればレササだろう。主の出発前にこの子にもここで過ごせるようにしてもらえたほうがよい。料理の力はすでに引き継げた、これからもう一つの引継ぎを行おう。




Side.レイト・アルイン?

 それは気まぐれだった、過去にいた地から最も遠くに逃げてきた己には、あれを見分けて掘り出す手段がなかったから。そう思ってその弱い聖族に愛嬌を振りまいた。過去に通り過ぎた地でこの方法で聖族より食をもらったことがある。しかし己が何かを知ったのか、次の日には大量の聖族を引き連れて種族名を叫んでいた。滅ぼすことはできたであろうが、一度は食を貰った身、己が引くのが当然であった。遠いこの地が似た種族のいる場であったのは偶然だったのだろうか。その聖族からも食をえることができた。今まで食べたものよりも、おいしく感じた気がした。その際何か複雑な力をかけられた、とても暖かく、包み込むような力で、拒絶するのにかなり意識が必要だったので、拒絶に成功した後はすぐに逃げた。

 翌日は聖族が大量に来ることを覚悟していたが、予想とは違い聖族の数は2であった。しかしゆっくりと様子を見ることにした、己を狩るためにその聖族を連れてきたのだろうと思った。何しろ無差別に似た種を狩っていくのだから。

 しかしどうやら違うようであった。先日と同じ謎の器具をそろえ、同じように何か作り始めた。少しの間だけ作り手でない聖族がいなくなった瞬間に、その器具の影にまで近寄っておいた。ここならば2つの会話が聞けるであろう。

 作り手の声は非常に鮮明に意味が分かった、今まで聖族の言葉を耳にしていたせいだと思ったが、少し違うようだ。もう一方の聖族の言葉は理解までが難しい。うまく話を聞いていたところ、自分のことはもう眼中にない様であった。眼中にないならば、昨日のことのようにはならないかと思い、もう一度アタックをかけた。そうしたら大量にあの根草を用意された。この根草の葉だって、ただの葉では出せぬ味だ。もちろん根のほうが好きな味だが。さらに器に盛りなおされて食べていると、どうやら己のことを理解してしまったようだ。このあとはまた聖族に追われてしまうのだろうか。この聖族も同じように?なんだかそれは嫌だなと足元にすり寄ってしまっていた。そうしたらまた体に温かい力が流れ込んできた、そう昨日のような力だった。不意だったのでその力をゆるしてしまったのだ。

 やけっぱちでこの力を取り消すように聖族にあたったのだが、己にレイトという名を付けた。一瞬そうじゃないと思ったのだが、名を付けられたことがうれしいと思いなおした。

 そうして己の新たな居場所ができてしまった、このリュクスとかいう聖族の頭上だ。ここだと聖族に認知させなくても済む。認知させても従魔となった己を無理に引きはがそうとする聖族はいないようだ。律儀に毎日しっかりと、しかもかなり大量にノビルというらしいうまい根草も用意してくれている。こんなにも居場所のいいところがあっていいのかと思っていた。ベードとかいう新参者が現れて、無謀にも一匹で群れに挑むというまでは。

 同程度の存在の群れに戦いを挑むのは無謀の一言だった。仕方ないので気配の消し方も知らないそいつにみっちり気配の消し方を教えた。さらに気配を薄めるために影術にも取り組ませた。通り過ぎた地で見た狼種が使っていた業だが、こいつも狼だから使えるだろうと、意識の仕方や夜でも使う方法など、みっちり教えてやったら進化を果たすことができた。そこからようやく群れと戦わせてやった。どうやら満足はしたようなのでまぁ良しとしよう。

 今の問題はリュクスが王都方面を目指すということだ。己はどうするべきなのだろうか。好きにしていいといわれたのは確かだ。今でもリュクスに対しても自分はいろいろ好きにやらせてもらっている。あくまでも己が動きやすいようにするために。

 ノビルという根草もこのリュクスの土地で育たせることができる、見分ける必要なく、食すことができるだろう。しかしそれではなぜなのか、少し味が落ちるのだ。リュクスからもらうときだけよりおいしく感じる原因が不明だが、そうなのだからしかたない。この弱い聖族のリュクスをもう少し見てるためにも、己もついて行ってやろうじゃないか。逃げてきた場所まででも。


できる限り一人称使わないようにしたかったけど無理だった・・・

うまく伝わるといいな。な感じの過去の話という感じです。

モイザのパートに変な部分があったので修正しました

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