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別行動、そして蜘蛛との対峙

 昨日はギルドで魔物と火術の情報を集めておいた。そのあと宿で一応追加のサンドを作ってもおいた。

 そして商業者ギルドの店で中型袋ポーチを追加購入。そこでちょっと無理をお願いした。袋をベードでも使えるようにしたいと言ったのだ。

 そういうと1万リラで収納したい素材に袋を触れさせるだけで、アイテムポーチに収納できるものを紹介された。思い切ってそれも購入、証明内の残高は104464か。そう思っていたらいつの間にかトレビス商長が店に来ていた。

 切り裂き豚の肉の3C質のが大量に手に入った?1000個って、僕そんなポーチ持ってないですよ。

 え、特大の袋型ポーチなら1000入るから、それに入れてある?特大って、店に置いてないじゃないですか。

 大で12000リラですよね、いったいおいくらなんですか?え、肉も合わせて15000リラでいい?いえ、いくら何でも安いのはわかりますよ。

 なに、さらに醤油とマヨ、塩と油も3瓶付ける?いったいどれだけ僕に渡すつもりですか。

 まだ足りないのかって?そうじゃなくて、安すぎるって話で・・・これ以上付けられると僕がおかしくなりそうなんで、もういいです。

 そんな風なやり取りをして、押し付けられるように購入。40万以上あった金は、あっという間に89464リラに。まぁ別にいいんだけどね、これでも十分すぎるくらいだし。


 一旦の目的地の南東扉に行く前に、僕の露店を覗く。人はいないようだ、門前もまだ人は少ない。

 うげっ、サンド売り切れてる。

 兎肉も1000入ってるんだけど、水晶の残高21700か・・・兎肉はとりあえず100だけ小さい袋に入れておこう。

 これ以上は買い取る理由もないので兎肉の買取は一旦ストップ。昨日と同じサンドを100だけ追加。・・・値段185にしておくか。

 水晶から証明にお金をもらっておく。直接証明にためちゃうと、売り上げ、買い上げ金額がごっちゃになりそうなので、なんとなくこうして自分で回収することにする。また残額が10万を超えたな、まぁいいけど。

 自分の土地を通って目的の南東扉に到着。東門からここに来れるのは、僕が許可した人だけか。まぁこの扉使う人はまずいないらしいからちょうどいい。

 そういえば道中に植えておいた野草が増えてた気がする、気のせいかもだけど。ベードの従魔証に括り付けるように、中型のポーチを取り付ける。


「仕留めたらこれをくっつけろ、多分死体でもそのまま回収できるはずだ。4種類、100までしか入らないから気を付けろよ?なんとなくわかったか?」


「ばぅ!」


 ベードはうなずいたので大丈夫だろう。そして認証水晶にベードが従魔証をかざすと扉が開く。アーバーギルド長の言っていた通りだな、一応僕も証明をかざして外に出る。扉を出た先でしゃがみこみ、ベードに目線を合わせて話しかける。


「いいか、朝言ったとおりだ。僕は西の森に行く、クモからとれる糸を僕も欲しいからだ。

 でも、僕がそうしている間にも討伐隊は進み、きっとお前が見返す余裕はなくなる。お前がこっちに行くと決めたんだから僕は止めない。

 でも無茶はするなよ、危なかったらすぐに街にはいれ。ほかの[人間]、じゃなくて聖族の人種に会ったら、お前は襲われる可能性がある、反撃したりはせずに逃げろ。しつこい様ならほかの狼や犬にでも擦り付けてやれ。ちゃんと守れよ、いいな?」


「ばぅ!」


 今日の朝、ベードとつたなく話し合って決めたことだ。ベードがこっちに来たいという意思を示した。僕とは別行動になってもいいからと。ならば僕はそれを尊重しよう、まだ尾を引かれる思いだけれど。


「きゅ。」


「レイト、お前、ベードについていってくれるのか?」


 いつの間にか僕の上からベードの上にとレイトが移動していた。その顔を少し上げている、なでろってことか?顎下をなでてやると気持ちよさそうに目を細めた。

 レイトが付いていくならば、何か起きても何とかしてくれるのかな。それなら僕がこれ以上心配するのはよくない。レイトには帰ったらノビル大盛だな。


「僕が遅くなっても、街中の扉前の僕の土地にいるんだ。そこの中なら基本誰にも手を出されないはずだからな。よし、いってこい。」


「きゅ。」


「バウ!」


 ひときわ強くベードが声を上げて、森へと走っていった。結構早いな、あっという間に見えないや。よし、僕は僕のことをしよう、目指すは西の劣蜘蛛の森だ。




 西門に向かおうかと思ったけど、南端の大通りを進むことにした。せっかくなので道中に採石を見てみようと思ったからだ。現場の近くは大通りまでカツンカツンと音が聞こえてくる。

 腰にピッケルを付けている人が多くいるから、あのピッケルで採石する音だろう。

 固定されるように木組みの張ってある洞窟から、両手に抱えるほど大きな箱を持って出てくる人がちらほら見える。

 アイテムポーチのない人はあんな感じで運ぶんだな。腰にポーチと思われる袋を付けてる人は、ピッケルのみで行き来してる。

 南東以外の大通りは人通り多いと思ったけど、ここはもっと多いな。ちょっとこの波をうまく超えれるのか不安になってきた。


「んん?新人か?採石か?」


「え、あ、いえ、違います、ちょっと通り抜けようと思ったんですけどね。」


 道横でいつ行くかとタイミングをうかがってたら、急に後ろから話しかけられた。

 猪のビスタだ、僕よりも頭3つ分は高いし、ガタイもでかい。ちょっと身じろぎしちゃったよ。


「通る?ここをか?変なやつだな!ついてこい!」


「えっ?」


 猪のビスタがずかずかと大通りの壁沿いを歩き始める。なんか他の人が彼が通ろうとすると止まるので、僕はおとなしくついていくことにした。

 なんというか、止まってる人も不機嫌という感じはなく、むしろどうもとか、お疲れ様ですとか、おはようございますとか、挨拶をしてくる人ばかりだ。

 採掘地帯の7つの洞窟を過ぎると、南西の扉がすぐのところに見えた。結構近くなんだな、普通に目に入る場所だ。まぁ南東の扉が変なだけか。


「通れただろ?ガハハハッ!」


「っ、あ、ありがとうございます。」


 バシッと背中をたたかれて、少しびっくりしたけど、助かったのは確かだ。


「蜘蛛森か?ここから?西門行けよ!それか呼べ!ガハハッ!」


「え、あぁ、はい。」


「サンギリーだ!気軽に呼べ!あばよ!」


「えっと、では。」


 なんかすごい豪快な嵐のような人だったな。一番近い洞窟に入っていっちゃったけど、ピッケル持ってなかったような?まぁいいか、僕は森にと出よう。

 扉をくぐれば東の森と同じように目の前が森となっている。ちょっと違うのは木々に緑の実が時折なってるのが見れるくらいか。あれは何だろうか。


----------

≪識別結果

緑甘樹の実 質:2E

緑甘樹の木になる実、皮の部分がとても固い。中部から出る汁はとてつもなく甘い匂いがする≫ 


≪識別結果

緑甘樹 質:2C

緑色の実を宿す木であり、樹液は甘いため、虫型の魔物が好んで樹液を食す。

実も好物となるが皮が固すぎるため放置される≫

----------


 なるほど、ここの蜘蛛は樹液が主食ということか。そしてこのたくさんなってる木の実は皮が固い?リンゴほどの大きさのその実を一つもいでみると、蔕の部分だけへこんでほかは真ん丸な形をしている。触るとわかるけど確かに皮が硬い。

 ナイフを突き立ててみたけど、皮がむけるどころか逆に刃こぼれしそうだ。これ投げつけたら凶器になりそうだな。

 ん、なんだ?もいだ蔕の部分がなんか変な感じがする。気になってぐいぐいとねじっていると、見事に蔕の部分から皮が取れた。


「ウゲっ!」


 何とか手放すことはなかったけど、ひどい甘ったるい匂い。前に一度だけ似た匂いを嗅いだことがある。安いチョコレートの匂いとかいう香水だったか。だいぶ前だけど、会社の同僚が試供品で付けてきたとか言っていたな。その匂いを思い出す、匂いはチョコではないけど、似た感じがする。

 少し収まってきたか、まったくひどい目に合った。これ、これだけ甘い匂いってことは味も甘いんだよな?人でも平気なのか?ちょっと勇気出して舐めてみるか。

 ・・・ん、砂糖そのままなめてるみたいだな。不味くはないが、美味くもない、でも料理には使えそうかもしれない。この街で甘いものは食べてないからな。パンと一緒にうまく作れば、甘いパンでもできそうだ。実はそこらじゅうの木に生えてる、せっかくだし取っていくか。


 集めながら森の奥に入っていたのだけど、小さい袋のポーチがいっぱいになったところで気が付く。

 なんかいる、こっちをじっと見てる。

 一つや二つの気配じゃない、20はいるんじゃないか?やばい、そりゃそうだよな、クモの森だもんな。なんで警戒緩めてるんだ僕は。

 でもなんで襲われないんだろうか、まさか襲ってくる感じの魔物じゃない?今まで襲われることの連続だったけど、レイトみたいなのも居たし。いや、あいつは例外中の例外か・・・

 さて、多分正面以外は囲まれてるなこれ、どうするか。正面からもなんか一匹近づいてきてる感じがする。杖を構えて、いつでも戦えるようにはする。

 とりあえず、僕の見える位置まで近づいてくるのは、正面のだけのようだ。姿を現したのはやはり蜘蛛、でも僕が見ておいた情報とはちょっと違う。黒の体毛の少ない蜘蛛という点は情報と似てる。でも体格が違う、腰と膝の間くらいの大きさはあるぞ。


-----------

≪識別結果

レッサーマザースパイダー 危:F

レッサースパイダーの生みの親たる存在の一匹。

その生み出す糸は粘着性が低く、生地として編み込む糸として使用できる≫

----------


 あぁ、なるほど、調べた通りレッサースパイダーの系統でしたか。でもその親ですか、なるほど・・・

 でもそれならおかしい、レッサースパイダーは比較的弱いけど、縄張りに入ったら好戦的に襲ってくるって書いてあったぞ?

 ならこれから戦闘が起こるのかといわれると、そういう雰囲気でもない。マザーは僕のことを右前足?で指さしているようだ。いや僕じゃないな、腰のポーチをさしているように感じる。腰のポーチ、そうかあの木の実か。

 なるほど、おそらく僕にあの木の実の匂いべっとりついてるなこりゃ。そしてこのマザー、僕のポーチに木の実が入っているのをわかってる。

 木の実の匂いがするということは、あれの皮をむいたってことだ。おそらくこいつらは皮の向き方を知らないんだな。

 それで僕に目を付けたのか、集めてるところも見てたかな?さて、どうするか、別に上げてもいいんだけど。目的はこいつらの糸、僕が使えるのかは知らないけどほしいんだよね。

 資料室でこいつらの糸を商業者ギルドにもちこんで、格安で服を作ってもらえるのを知っちゃったからね。

 別にお金に困っているわけじゃないけど、素材を集めて作ってもらうなんてまさに冒険者。そういうのをやってみたいんだよね。

 21匹か、おそらくファイアメモリーの火力を上げるあれならいけるかもしれない。ただ、それだと体内の糸を炭にしちゃう可能性があるから、それに、むやみに倒すのは何というか・・・


「よし、木の実の中身がほしいなら取引しよう。言葉はわかるかはわからないが、僕は君たちの糸がほしい。糸をくれたら中身をやろう。」


 さて、伝わったかな?ちょっと首をかしげている、やはりだめか。

 いや、体を丸めて尻から出た糸を器用に足で丸め始めた。しばらく見ているとバスケボールほどの糸の塊ができていた。そして僕に差し出してくる。なるほど、伝わってたか。

 ポーチから木の実を一つ取り出して、蔕をうまく取れば蔕部分だけ剥ける。その木の実をそのままマザーにと投げてやる。

 上手い具合に足でキャッチし、触肢を突き刺して吸い始めたようだ。ガサガサッと一気に周りから音を立てて蜘蛛が近寄ってくる。音に軽く振り向くと膝より少し小さいほどの蜘蛛が、大量に森から姿を出していた。


「――――。」


 思わず身構えたが、蜘蛛たちはその場で動きを止めた。マザーに向きなおると、マザーが片前足を上げて静止させたようだ。

 止まる前に、マザーが何か言ったように思えたけど、それを僕は言葉としては理解できなかった。


「――――。」


 マザーが地に足を下ろすと同時に、他の蜘蛛たちが一斉に糸玉を作り始めた。おそらくだが、あれを作るよう指示したんだろう。全部で20匹いるな、とりあえず20個をまた蔕取りしておく。

 全員同時にマザーと同じ大きさで出来上がったので、同じように一匹ずつに木の実を投げ与えていく。

 皆器用にキャッチして、すい始める。僕は虫平気だからいいけど、これだけの数だ。虫嫌いの友人はこのゲーム絶対できないだろうな。それにしても、糸玉21個か、マザーのと違いはあるのかね。


-----------

≪識別結果

劣母蜘蛛の糸玉 質:4A

レッサーマザースパイダーの作成した糸玉。

粘着性が非常に低く、耐久性にも優れているため、生地として編み込む糸として重宝されるだろう≫


≪識別結果

劣蜘蛛の糸玉 質:3C

レッサースパイダーの作成した糸玉。

粘着性が低く、生地として編み込む糸として使用できる≫

----------


 おう、同じ糸に見えるけど全然違うのね。さすがマザーといったところか、木の実啜りに夢中みたいだけど。

 とりあえずいただいたものなのでアイテムポーチにしまいこむ。これで一応目的は達成できたかな?たしか体内に残るこぶし大の糸玉が20もあれば胴着が作れるはずだ。この大きさならズボンとかも作れるかな?


「まぁいい取引だったな、僕は帰ることにするよ、別にいいだろ?」


「――――!」


 なぜかマザーに首を横に振られた。なんだ、まさかここまでして戦闘か?拘束されるのは嫌だから、抵抗させてもらうぞ?マザーと取り巻きたちがゆっくりと近づいてくる。

 もう木の実はすすり終わったか。不本意だけど、やはり戦いはしょうがないか。


----------

≪対象をテイムしました

対象:レッサーマザースパイダー

名前を付けてください≫


≪対象をテイムしました

対象:レッサースパイダー

名前を付けてください≫


≪対象をテイムしました

対象:レッサースパイダー

名前を付けてください≫


≪対象をテイムしました

対象:レッサースパイダー

名前を付けてください≫

----------


 ストップ、ストップ、うるさい!インフォうるさい!同種はまとめてお願いします!


----------

≪対象をテイムしました

対象:レッサーマザースパイダー

名前を付けてください≫


≪同種対象を20体テイムしました

対象:レッサースパイダー(20)

20個体の名前をそれぞれ付けてください≫

----------


 おう、マザーも再度インフォメーションされたか。頭の中に直接聞こえるのはいいんだけど、さすがに同じことの20連はきつい。スキル覚えたときみたいにわくわく感でもあれば別なんだけど。

 ・・・さて、逃避はこのくらいにするか。さっきまで恐ろしく感じていた赤黒い眼は、青く透き通った眼になっている。

 レイトの時は目を見る暇もなかったし、ベードは目が半目だから気が付かなかったけど、レイトは今は金色のような目だし、ベードも青い目だったな。

 そして魔物は赤黒い目の奴が多い、もしかしてテイムの効果なのか?まぁいいか、こいつら全員に名前?もうどうにでもなれだ。


「マザーだからマザでいいか?さすがにダメか。・・・そうだな、モイザでいいか?」


「――――。」


 うなずいたので大丈夫だろう、悪いがちゃんとつけるのはマザーだけだぞ。


「あとはもう雑に行く!雄は並べ。よし、モイザ、手伝ってくれてありがとう。

 左からレサキ、レサク、レサタ、レサト、レサヒ、レサム、レサヤ、レサガ、レサギ、レサグ、レサダ、レサド、レサブ、レサンだ。以上14匹な、よしあと6匹が雌だな。

 左からレサエ、レササ、レサナ、レサミ、レサヨ、レサリだ。文句は受け付けん!よしつけ終わったぞ!インフォはいらん!」


 どっと疲れた、もう帰りたい・・・ネーミングセンス?そんなもの僕に求めるな。20匹付ける時点で無理だ!


----------

≪個体名が確定しました

モイザ・アルイン

種:レッサーマザースパイダー≫


≪モイザ・アルイン配下の20体の個体名が確定しました。≫

---------


 まったく、インフォはいらんと声にまで出していったのに。まぁいい、これくらいなら許容範囲だ。

 はぁ、従魔証どうしよ。とりあえずトレビス商長に急いで話しに行かないとな。

ちょっと違和感あるかもしれませんが大量テイムです。

なんで主人公に木の実のヘタが取れたのかの話は出すかどうか悩んでます。

その場のノリと勢いで書いてるのが結構響いてるね。


※蜘蛛の名前一覧

■レッサーマザースパイダー(雌)

・モイザ・アルイン


■レッサースパイダー(雄)

・レサキ・アルイン

・レサク・アルイン

・レサタ・アルイン

・レサト・アルイン

・レサヒ・アルイン

・レサム・アルイン

・レサヤ・アルイン

・レサガ・アルイン

・レサギ・アルイン

・レサグ・アルイン

・レサダ・アルイン

・レサド・アルイン

・レサブ・アルイン

・レサン・アルイン


■レッサースパイダー(雌)

・レサエ・アルイン

・レササ・アルイン

・レサナ・アルイン

・レサミ・アルイン

・レサヨ・アルイン

・レサリ・アルイン


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