知恵者との出会い
翌日は道中の蛇は無視しつつ先にと進む。というか蛇くらいしかいないけど、他の魔物はいないのだろうか?
ただ、リザードマンの集落跡地と同じような集落跡は見つけたから僕の従魔になったリザードマンのほかにも集落をつくってたようだ。リザードマンたちからは特にほか集落の話聞いてなかったけど、もっと大きい範囲で柵で囲ってあったから彼らがいた後という感じではないと思う。
でもなんで集落を移動したんだろうか?何かやばいやつに襲われたんだろうか。とりあえず周囲に気配はないけど、気を付けて進んだほうがいいな。
そこからしばらく進むけど、ヘビの気配すらなくなるけど、逆にそれが何か不安になる。空気が重いという感じ?
『何かいるぞ。』
「やっぱりそうなのか、でも気配がつかめない・・・」
『あぁ、己もいるという感覚はあるが、どこにいるのか気配が全く読めない。』
「ベード、進むのは中断だ。」
『了解しました。』
その場で気配を探ろうとしてたら、さっきまで晴れた草原だったのに急に霧が立ち込めてくる。余計に気配をわかりづらくするつもりか。ならこっちにも考えがある。
「スペースエリアコントロール。」
あたり一帯を空間掌握、この範囲に入ってきたら気配がわからなくても入った感触で位置の特定ができるはず。とりあえず最大範囲にしてるけど、その中にはいないようだ。思ってるより離れてるのか。
『想定より力が強いようだな聖族よ!』
「え、誰!?」
離れたとこから急に声をかけられた。声の聞こえた方角から僕の空間掌握の範囲にと何者かが入ってくる。いや、ちゃんと気配も姿も出して僕にと近づいてきてる。
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≪識別結果
マジシャンズウロボロス 脅:A
その知恵により魔術師となった輪廻蛇。≫
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『我は四魔帝の一人だ。噂は聞いていたが、実際に目にした力は噂以上か。恐ろしいな。』
「え、えっと、はじめまして。それは僕の噂ですか?」
『そうだ、それ以外に何がある?少し話がしたいんだがいいかね?』
蛇特有の長い首と話すときに出す長い舌。体つきは人間と同じような感じだからリザードマンを彷彿とさせるけど、気配の重みというか、そんな感じが全然違う。その右手には真っ黒な杖が握られているが、地面をついてあるいているわけじゃないから、れっきとした武器なんだろう。
ただ話したいという通り戦闘態勢という感じではないようなので、一安心してベードから降りて、空間掌握も解いておく。
「話は大丈夫ですよ。それでええっと、どういう噂ですかね?」
『ふっ、わかっておるだろう?黒竜と引き分けたという噂だ。向うからよく襲ってきていた知能のないトカゲどもが少なくなったのも君があの戦闘狂に話したからなのだろ?』
うわ、そんなことまでしてるのか。というかそういう噂が流れてるってことはインテリジェンスリザードマンのようなのがやっぱり他にもいるってことか。
『それに我の地に保護した知能あるトカゲの集団がいなくなったのも、君だな?』
「うっ、すいません。連れて行くのはよくなかったですか?」
『はっ!構わないさ。魔物は基本自由に生きるものだ。我の下に一度ついたとしても、他に行くのは構わない。』
おどけた様子で言うので本当に気にはしてないようだ。脅威度Aとはいえその名の通り魔術に長けているんだろうから女帝蜂のようなときのように済ませられればいいけど。
『おっと、ただしイギルガブラグ様に会うために認めるには、少し試練を受けてもらうがな。』
「うっ、やっぱり戦闘ですか?」
『はっ!違う違う。我はあまり戦いは好まない。もっとも西には戦闘狂、東には競い好きがいて困ってはいるがな。我がほしいのは知恵だ。君は来訪者なんだろう?』
「はい、そうですね。」
『では、君のいる世界のことを聞かせてほしい。この世界にはないものや世界情勢、そして一番知りたいのは本来なら来訪者の転移は一度なのに、意識だけを何度も行き来させている技術もね。』
おっと、それはつまり僕がこのゲーム世界にどう来てるかって話か?一キャラクターがそれを知ってどうするのだろうか?というか知らされてはいないのか。まぁ話しても害はないだろうか。
「じゃ、じゃあまずこの世界にないものの話でも。一番はそうですね、やっぱ自動車ですかね。」
『ほう、それはどういうものなのだろうか?』
「この世界では馬車がありますよね。馬で引く車、あれが馬無しで動くっていうとちょっと違うんですけど、大体そんな感じだと思ってくれれば。」
ぱっと浮かんだのが自動車だったけど、よく考えたら形状とかにたようなのはないから説明しづらかった。そもそも僕もちゃんと仕組みはわかってないし。
『な、なんですか主!それは俺よりも早いんですか!?』
「え、いや、どうだろ・・・同じか少し遅いくらいじゃない?速さを求めた形状のもあるけど乗ったことないしわからないな。」
ベードが急に割り込んできたけど、それを聞いて少しほっとしたような顔をする。なんだろう急に。
『そんなものがあるのか。詳しく見れないのが残念だ。君の転移でこの世界に持ってはこれないだろうか?』
「無理ですよ、現実からものを持ってくるなんて。そもそも僕は自動車持ってないですし。」
『いや、できるはずだぞ?君はまだそのレベルにいないと思い込んでしまっているだけだ。すでに君はこの世界のほうに適合し始めているからなあとは気の持ちようだろう。しかし持っていないのであれば見れないな、残念だ・・・』
「え、それ、どういうことですか?」
『そやつの言葉のままだ。後はリュクスお前の気の持ちようだということさ。』
レイトにもそう付け足されたけれどよくわからない。いや、もしかしてと思うところはある。でもそんなことがあり得るのだろうか?
『ふむ、まだ無理だということだな。この世界にないものを聞くと見たくなってしまう。次は何か君の世界について聞かせてくれないだろうか?』
「僕の世界についてですか、うーん・・・ぱっと思いつくのはこの世界と違って魔物はいないこと、ヒュムと似たような種族はいますけどそれ以外の生物は動物とか昆虫とか、害があることもありますが基本襲われませんかね。あと違うのは、国が一つじゃなくいくつもあることとかですかね。」
困ったなぱっと思いついたのがそのくらいしかなかったぞ。地球と違いを言ってるだけじゃないか・・・
『ほうほう!国を作っているのはヒュムに似た種族だな。おそらくこの世界よりも力も数もあって分離しているのだろう?』
「た、確かにその通りです。」
『やはりな、それはこの世界でも起こりえたことだからな。それを防いでくださったのがイギルガブラグ様なのだ。やはり聖族人種は驕らせてはならないな。』
なんかこの世界の話にもつながったのか。起こりえたことって、この世界でも人が国分割しそうになったってことなのかな?
『よし、では一番聞きたかった話だ。君がどうやってこの世界と君の世界を意思だけ行き来しているのか、聞こうではないか。』
うっ、それが待ってたか。でも話せることってほとんどないんだけど、いいんだろうか・・・まぁわかることだけ話すしかないか。




