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《完結》 ∞【無限】ミッション!~俺だけに与えられたシークレットミッションを達成して手に入れたSSS級の能力や神器で世界を見返す史上最強のハンターへ~  作者: 陽和
第9章~日常の変化~

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瘴気の謎④~開拓者の未来~

エスリンさんが澄人へ個人的な疑惑の話をしております。

「それはどうしてですか?」


 俺はあえて悲痛な表情を浮かべるエスリンさんを突き放すような言い方をする。


 何の根拠もなくそんなことを言うとは思えなかったからだ。


 エスリンさんは俺の態度に動じず、まっすぐな眼差しを向けながら説明を続ける。


「ジョンさまは、開拓の必要がなくなった今、開拓者が何をしているかご存知ですか?」


「今……ですか? それは……」


 考えたこともなかった。


 生活圏にすべて新しい結界が張られたため、今は開拓者の仕事がなさそうだった。


 その開拓者が何をしているのか問われても、実情を知らない俺に答えられるはずがない。


(開拓者の姿をギルドで見なかったのは復興が理由? たしかに依頼書もほとんどなかったな……)


 俺が言葉に詰まっていると、エスリンさんは小さく頷く。


「大半の開拓者は日々の生活のため、イアンのように別の職に就いております」


「そうなんですね……」


「はい」


 エスリンさんはそれこそが問題だと言わんばかりに顔をしかめる。


「そして、私が調べた限りですと、これは一度目のことではありません」


 エスリンさんは俺に視線を向けたまま、声を震わせていた。


「かつて神の使者さまが私たちの祖先の前に降臨され、勾玉を授けてくださいました。その後、今回と同じようなことが起きたのです」


 エスリンさんは一度言葉を切ると、俺の反応を窺っているようだ。


 その目は何かを訴えかけているようにも見える。


 俺は最初の発言と話の内容を結び付け、自分なりの答えを出した。


「つまり……結界が強固になり、戦う必要がなくなったから開拓者が弱くなっていくということですか?」


 エスリンさんは静かに首を縦に振る。


 俺の発言が正解だったようで、少しだけ安心した。


 だが、それならなぜエスリンさんはこんな話をするのだろうか。


(モンスターを倒さないと弱くなるのは普通のことなんじゃないのか?)


 一度上がった能力は下がることはないものの、戦い方を忘れて弱体化してしまうのはよくあることだ。


 俺が不思議に思っていると、エスリンさんが持っていたカバンから紙束を取り出して再び口を開く。


「これは私の家系が記録してきた、開拓者の能力推移です」


 エスリンさんがテーブルに並べた資料を目にする。


 資料には過去数百年にわたって、能力の推移らしきグラフが記録されている。


 しかも、特級・一級・二級とランクごとに分けられてあり、それぞれの欄に細かい数値も書かれていた。


 エスリンさんは真剣な表情で俺を見据えている。


 俺は声を出すのを我慢して無言で資料を手に取り、じっくりと見つめる。


(こんな資料があったなんて……すごい情報量だ……)


 記録を取り始めた四百年前には神格の平均が【7.7】あったが、今では【4.6】まで下がっている。


 一級や二級はそこまで下がってはいないものの、二級の平均が【1.8】というのは大きな変化だ。


(少しずつ確実に年々弱くなっている……数字的にも如実に表れているな……)


 年を重ねるごとに徐々に低下していく数値は、確実に開拓者たちが弱くなっていたことを表している。


 俺が資料に目を通していると、エスリンさんが心配そうな表情で話しかけてきた。


「開拓者が戦えなくなる未来が来るというのは私の考えすぎでしょうか?」


 エスリンさんは不安げな様子で俺の返答を待っている。


 俺は顎に手を当てながら考えを巡らせた。


 今の話を聞いただけでも、この世界に訪れようとしている大きな問題について理解できた。


 それと同時に、自分が抱いていた疑問の答えも見つかった気がする。


(確かに俺もなんで開拓者の能力がこんなに低いのか疑問を持ったな)


 資料に目を通した俺はエスリンさんの質問に対して、率直な意見を述べる。


「考えすぎではないと思います」


 俺の言葉を聞いたエスリンさんは目を見開き、動揺した様子で体を震わせた。


 俺はここまで用意をしてくれたエスリンさんの気持ちを汲み取り、自分の考えをすべて吐き出す。


「今は四百年前よりも結界が強固になっていることもあり、以前よりも格段に早いペースで弱体化が進むでしょう。あと――」


 エスリンさんは俺の言葉を聞いて、苦悶の表情を浮かべた。


 エスリンさんがこの問題を解決したいと思っていることは伝わってくる。


 しかし、結界を壊すわけにもいかず、開拓する場所がない以上手の施しようがない。


(それに人々は森の恐怖から立ち直ったばかりで平穏を望んでいる)


 様々な街を見回って感じたことだが、人々の顔からは笑顔が失われていた。


 結界があるおかげで安全は確保されているものの、七色の森による恐怖が拭われるのは相当先だろう。


 それは開拓者も例外ではなく、戦う必要がないのなら武器を持ちたくない人が大勢いる。


 モンスターと戦う機会がない日々が続くため、その実力が落ちるのは間違いない。


 俺がそう説明すると、エスリンさんは静かに耳を傾けていた。


 そして、話が終わると同時に大きく息を吐く。


「私たちの子孫はこのままではいずれ……またモンスターによって……」


 エスリンさんは俯き加減に視線を落とす。


 その姿はとても小さく見えた。


「エスリンさん」


 俺が声をかけると、エスリンさんはゆっくりと顔を上げた。


 エスリンさんの思い描いた最悪の未来を回避する方法を俺は知っている。


 それをエスリンさんに伝えるべく、俺は口を開いた。


「そんな未来が来ないようにする方法があります」


 エスリンさんは一瞬呆気に取られたような顔をしていたが、すぐに表情を引き締めると俺の目を見て問いかける。


「どのような方法ですか?」


「今、リリアンさんにモンスターと雨の関係について資料を集めてもらっています」


「モンスターと……雨? 活性化するだけじゃなく、関係があるんですか?」


 エスリンさんは不思議そうな顔をしていた。


(当然だ。開拓者として生活をしていた俺でもそうだった)


 普通に生活していると、雨とモンスターの関係にそれ以上考えることはない。


 俺はエスリンさんに詳しく瘴気についてわかっている範囲で説明する。


「雨が降ってモンスターが活性化する理由は、雲に含まれている瘴気が地上に降り注ぐからです」


「瘴気? そんなものが……」


 エスリンさんは眉間にしわを寄せ、続きを促すように視線を向けてきている。

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