草凪澄人の選択②~神域の男性~
螺旋階段を登ろうとする澄人が神域にいる男性に止められています。
俺の肩に手を置いていた男性は、「まだ早い」と言いながら俺へ戻るように再度言ってくる。
どうやら本当に神格が足りないとここから先は行けないようらしい。
「神格が足りないのなら、今ここで補います」
「無理だろう、320万ポイントでは足らなすぎる」
理由はわからないが、男性は俺が持っているポイントを正確に把握している。
ただ、ポイントが足らないのは百も承知なので、別の方法で神格を底上げするつもりだ。
「大丈夫です。方法はあります」
男性は興味深そうな目つきで俺のことを見ながら、少し口角を上げていた。
俺が何をしようとしているのか楽しみに待っているようだ。
「それなら見せてもらおう、きみの言う方法とやらを」
男性の言葉を合図にしたかのように、降りるための階段が砕け散る。
先にしか進めなくなった状況でも、俺は自分の可能性を信じた。
(可能なはずだ! ヨルゼンさんで確かめることができた!!)
俺の神格を上げる方法は、ステータス画面でポイントを消費するだけではない。
俺だけに現れている画面外の能力を行使して神格を上昇させる。
その方法を実行するため、俺は自分へ神の祝福を何度もかけ始めた。
(俺の持っているハンターの才能を掛け合わせることで神格を上昇させる!)
神格2の才能を2つ合成することで神格3の才能が出来上がる。
同じように、神格3の才能を3つかけ合わせると、神格4の才能が手に入った。
自分の中にある才能を次々とかけ合わせ続け、俺の神格へ意識を伸ばす。
(俺は数千人分の能力を保有している! これなら神格10に届くはずだ!!)
「おぉ……これは……」
自分へ神の祝福をかけて神格を上昇させると、男性から感嘆する声が漏れる。
おそらく、この方法を予想することができなかったのだろう。
保有している才能が無くなりかけたとき、俺の神格を10まで上昇させることに成功した。
すると、あれだけ体にのしかかっていた重圧がなくなり、呼吸が楽になった。
「神格10になりました。どうですか?」
俺が神格を10へ上げたことに驚いているのか、男性は言葉を失って固まっている。
「頂上で待っていてください。お話を聞きにうかがいます」
俺の言葉を聞いた瞬間、男性の表情が真剣なものに変わった。
今までの雰囲気とは一変し、俺のことを品定めするような鋭い視線で射貫いてくる。
「……いいだろう。神域の頂上で待つ」
俺の言葉に対して、男性は短く返事をした。
それだけを言うと再び姿を消してしまった。
姿が消える直前に笑みを浮かべながら消えたよう見えた。
「よし、行くか」
ひたすらに白い石で作られたような階段を上る。
周囲に気を配りながら歩いていたが、何も変化が無いため、少し気が緩み始める。
「あの人は誰なんだろう……普通じゃなかった……」
男性のことを考えながら、ただ黙々と螺旋階段を上っていく。
あの男性にどこか懐かしさを覚えるのは、何度も夢で見たからだろうか。
(それとも、過去に会ったことがあるかもしれない)
そんなことを思いながら階段を上がっていると、いつの間にか一番上に辿りついていた。
頂上は小さな神殿のような作りになっていて、奥にある椅子へ男性が座っている。
「やっと来たか」
俺が近づくと、男性はゆっくりと立ち上がり、こちらへ向かって歩き出した。
何か話そうと口を開こうとした時、男性が両手を広げて俺を抱き寄せてくる。
「うっ!?」
突然の抱擁によって驚きの声を上げたが、なぜか抵抗することができない。
「よく来てくれた。お前という存在を待っていたんだ」
抱き寄せられたまま、耳元で囁かれる。
俺の体を包む腕は力強く、振り払うことができない。
「……俺を待っていた?」
なんとか声を出すことができ、疑問を口にした。
男性は俺を解放すると、嬉しそうに微笑んでうなずく。
「そうだ。お前がここに来ることはわかっていた」
「どういうことですか? 俺を知っているんですか?」
「ああ、よく知っている」
男性の笑顔を見て、なぜだかわからないが俺の心臓が激しく脈打ち始めた。
次の言葉を待っていると、男性は俺の目をじっと見つめながら話し出す。
「私は草凪澄。きみが祖先と呼んでいる存在だ」
「……そこまで知っているんですね。どこで見ていたんですか?」
目の前の草凪澄と名乗る男性は、俺が祖先と呼んでいることまで知っていた。
こうなると、俺の行動が逐一覗かれているのではないかと疑いたくなる。
俺の考えていることがわかったのか、彼は優しく諭すように語り掛けてきた。
「私はミッションの画面を通して、澄人……きみのことを見ていたよ」
「ミッションを通して?」
「ああ、こんな感じで」
そう言って彼が指を鳴らすと、空中にモニターのようなものが映し出される。
その画面には見覚えのある光景が広がっていた。
「ここが……映っているんですか?」
俺と草凪澄が映っているモニターを見つめ、思わず質問をしてしまった。
すると、草凪澄は静かに首を縦に振った。
「私は試練の書を読み終えた時からきみのことをこうやって見ていた」
「ずっと俺のことを監視していたということですか?」
俺の問いかけに対し、草凪澄が苦笑いをしながら口を開く。
「監視ではなく成長を見守っていたんだ。きみに合ったミッションを出すために」
「それって……ミッションの内容を決めていたのもあなただったってことですか?」
俺の問いに対して草凪澄はまた首肯する。
この画面越しに俺を見ていたのなら、俺のやることなすことが筒抜けになっていたことになる。
そのことに少し恐怖を感じていると、草凪澄が俺の考えを読んだかのように話し始めた。
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