異界の異変解決⑨~ガーディアンオーガの正体~
澄人がガーディアンオーガの能力を解析しています。
(なかなか強力なスキルをお持ちで……攻撃が効きにくかったのは【要塞の心得】が理由だったのか……)
俺が取り込んだことを確認した瞬間、周囲の敵から強烈な殺意を向けられる。
「やっぱり……お前たちは知性があるんだな……よくわかったよ」
以心伝心というスキルがある以上、こいつらは協力して俺を倒そうとしてくるはずだ。
盾を持つガーディアンオーガを守るように連携したのは偶然ではなく、スキルによる指示があったためと考える方が自然だろう。
(一撃で倒せるこちらが圧倒的に有利だ。一気に倒して——逃げた!?)
少しの沈黙の後、数体のガーディアンオーガが俺に背を向けて駈け出した。
逃げた敵を追いかけようとした俺の前へ、残りのガーディアンオーガが立ちふさがる。
(あれは逃げじゃない!! こいつらにミッションの内容が漏れているのか!!??)
こいつらの目的が俺のミッションを失敗させることならば、あれは逃走なんかではない。
ここから離れたガーディアンオーガが向かった方向は、リリアンさんたちがいる建物がある。
(急いで止めないと!!)
そう思って俺が足に力を入れると、視界の隅から影が迫る。
「グオオオッ!!!」
「ちぃ!!」
離れていくガーディアンオーガを追おうとしていた俺の前へ、別のガーディアンオーガが大剣を叩きつけてきた。
「くそっ!!」
慌てて後ろへ跳んで回避をした俺に、今度は槍が突きこまれてくる。
「こんなときに……こいつらも!!」
後ろに跳躍しながらヒヒイロカネの剣で槍を切り払った。
着地後、すぐに横を見れば、盾を持ったガーディアンオーガが俺の退路を塞ぐためにじりじりと近寄ってきていた。
「すごくいやらしい連携だな……」
ガーディアンオーガが盾を前に構え、隙を作らないように接近してきている。
他のガーディアンオーガはすべて、身を隠すように盾の後ろへ退避した。
これは俺の攻撃が盾を通らないと決めつけての行動だろう。
四方を囲まれてじり貧になっている状況を変えるために行動を開始する。
(舐められているな……メーヌ、そっちはしばらく耐えてくれよ!!)
俺は雷でヒヒイロカネの剣をコーティングし、さらに草薙の剣による身体強化も重ねていく。
神性属性を持っているだけで勝てると思っている敵を全身全霊で倒しにかかる。
「いくぞっ!!!」
俺は自分へ発破をかけるように声を出し、盾を構えている二体のガーディアンオーガへ突撃していく。
剣を振りぬこうとすると、それに反応した他の敵が左右に分かれて挟撃を狙ってくる。
「お前たちに付き合うつもりはない!」
片手を空けて、無造作に草薙の剣を取り出す。
神気を解放させながら、盾を持つガーディアンオーガへ更に接近した。
「神のっ!!」
左右に分かれた敵も俺が草薙の剣を振り上げると、再び盾の後ろに隠れてしまう。
「引っかかったな!!」
神の一太刀を防ぐために全てのガーディアンオーガが盾の後ろに密集した。
剣の軌道をそのままに、魔力を乗せた斬撃を盾の裏に隠れている六体のガーディアンオーガへ放った。
——ピシャァァァン!!
雷鳴が周囲に響き渡り、稲妻の軌跡が空を走る。
「「「「ギィアアッ!!?!?」」」」
剣を振り抜いた後に見えたのは、雷が当たった個所から黒焦げになり、体中から煙が出ている複数のガーディアンオーガ。
盾も横一線に焼け焦げついて切断されており、使い物にならなくなっていた。
倒れたガーディアンオーガたちを見下ろす。
「さて、お前らは特別なスキルを持っているのかな?」
動かないガーディアンオーガを捕食の付与をした魔力で包み込む。
魔力に触れたガーディアンオーガは塵のように消える。
「他にないのか……ん?」
なんのスキルも得られないとため息をついたとき、足元の焼け焦げた七色の盾が気になった。
(この盾……もしかして……)
ふと気になった俺は、試しに盾を吸収してみる。
【スキル獲得】
神性:C
神性属性が付与される
(神の一太刀の無力化にはCで十分なのか……なんだか複雑……)
ミュルミドネス以外の敵をすべて一撃で葬ってきた神の一太刀がこれだけで防がれると思ったら、少し虚しい気持ちになってしまった。
『澄人!! 敵が攻撃してきているよ!!』
「今行く!」
メーヌが助けを呼ぶ声でハッとした俺は、残っている盾の残骸をアイテムボックスへ放り投げる。
(無駄だと思うけど行くか)
ガーディアンオーガが建物に接近したとなると俺が今から向かってもできることはない。
捕食で余裕ができた魔力をフィノに注ぎながら、この場を離れた。
「……やっぱり急いでくる意味がなかったな」
建物付近には炎によって丸焦げになったガーディアンオーガらしきモンスターが二体倒れている。
フィノには森の焼却と、リリアンさんたちが休んでいる建物を守るように頼んでいた。
念のために剣を抜いて周囲を警戒するが、近くに敵の気配はなかった。
(ただ、またいつガーディアンオーガが襲ってくるのかわからない……)
これからまたミュルミドネスと戦うため、いつまでもここの警戒をフィノに任せているわけにはいかない。
どうしたものかと考えながらリリアンさんのいる部屋の扉を開ける。
「戻りました……」
「使者さま!! 外にいたモンスターについて教えてください!!」
部屋に足を踏み入れた瞬間、リリアンさんが立ち上がって駆け寄って来た。
「モンスターについて……ですか? えーっと……人型の巨人種で強靭な体つきをしていて、口元には牙がありました」
ガーディアンオーガの外見を思い出しながら説明をすると、真剣に聞いていたリリアンさんが顔を伏せる。
「やはり……」
「リリアンさんはあいつらのことを知っているんですか?」
「はい……」
返事をしたリリアンさんは俺へ顔を向け、涙ながらに口を開く。
「使者さまが戦ったのは【終焉の使徒】……世界が終わるときに現れると、初代クサナギさまが予言したモンスターです」
「草凪澄が? リリアンさん詳しく——!?」
聞き捨てならない言葉を聞いたので、追及しようと視線を向けると、彼女は声を押し殺して涙を流していた。
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