臨時世界ハンター会議⑪~森からの刺客~
澄人が森から出てきたモンスターと戦っています。
「邪魔をするな!」
正面にいた3体のハーピーウォーリアへ飛びかかり、1体は首を斬り飛ばす。
残り2体を蹴り飛ばして森へ落とし、他のハーピーウォーリアを剣で牽制する。
「グェエエッ!!?? ギァァァアアアア!!!!」
地面に落ちたハーピーウォーリアはアーミーアントに囲まれ、醜い悲鳴を上げながら嚙み砕かれる。
俺はその様子を見ながら、アリテアスの街にいた人たちがアーミーアントへ食べられてしまう光景を連想してしまった。
(……ん? そうか!!)
アリテアスで生活をしていた人たちを思い出し、話を聞くならその人のところへワープすればよいと閃く。
そうなると、ハーピーウォーリアの相手をする時間をもったいなく感じ、魔力を多く使用する永遠の闇で相手を制圧することにした。
「闇よ、すべてを奪え」
俺が魔法を発動させると、周りにいたハーピーウォーリアが五感を失い、喚き声を上げながら地面へ落ちる。
落ちていくハーピーウォーリアを一体だけ足を掴んで確保し、残りの敵を見送った。
「ギィ……ギャァァアアア!!!」
そのまま地面へ落ちたハーピーウォーリアは一体残らずアーミーアントによって粉々に噛み砕かれる。
確保したハーピーウォーリアを魔力で包み込み、【捕食】を使って飲み込んだ。
だが、新たに獲得できたスキルはなく、微量に魔力を回復しただけだ。
「簡単にスキルを増やせるわけないか……」
アリテアスの住人を食べたハーピーウォーリアを捕食しても、得られるスキルはなかった。
あまり期待をしていなかったので気落ちせず、ワープを発動させようと視線から森を外そうとした時——
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
森全体が大きく波打つようにうごめき、地響きが鳴り響く。
「こんなのを目の当たりにして、何もせずにどこにも行けない……明日の会議に間に合うかな……」
揺れる大地の謎を解明してからではないと異界を離れられない。
次に来た時、マルタ大陸全体が森になっている可能性もある。
(それに、学校の異界ゲートと繋がっているライコ大陸にも森が広がるかもしれないからな……)
動いている今じゃなければ何が原因でこうなっているのか見当もつかない。
俺はこの原因を突き止めるため、サラン森林の上空を飛び回ることにした。
「これを引き起こしているヤツは俺に森の上を飛び回ってほしくないようだ」
森の上空を飛んでいると、地上から次々とモンスターが飛び出してくる。
ハーピーウォーリアだけではなく、グリフォンなどの大型種も混ざっていた。
それらを相手にしながら森を観察していたが、一向に異変の原因を見つけることができない。
「これだけ探して見つからないなんて……どうなっているんだ?」
森全体を飛びながら眺めても異変を起こしている存在を発見することができなかった。
これだけ大きな動きをしていれば、すぐに見つかる思っていただけに困惑してしまう。
「森の進行が止まって、モンスターも追ってこなくなったな」
あれだけ響いていた地鳴り音が消え、モンスターの気配も遠ざかり、辺りには静寂が広がっている。
しばらく森の中を見下ろしながら飛行していると、大陸の端に着いてしまった。
「本当に何もないな…………刈り取ってみるか?」
原因を探すことが面倒——時間が惜しいため、手っ取り早く解決する方法を考えることにした。
まずは見渡す限り生い茂っている木をすべて切ればなにか反応があると思い、実行に移すことにする。
地図で一度に多く刈り取れる場所を探し、そこへ移動してから草薙の剣を取り出した。
「森の中に何がいるかわからないから本気で剣を振らないとな」
【神の一太刀】を発動させるために剣に溜まっている神気を全解放する。
剣を覆う黄金の光が徐々に強くなり、まばゆい光を持って神の一振りを放った。
「神の一太刀!! 森のすべてを叩ききれ!!」
水平に空を斬った瞬間、視界に入っていたすべての木々が黄金の光に飲み込まれる。
黄金の軌跡を描く一閃が、目の前にあった森のすべてを切り裂いた。
その威力は凄まじく、巨大な光の刃がどこまでも伸びていき、森を消滅させていく。
「どうだっ!?」
黄金の光に触れた樹木が次々と倒れていく光景を見て、相手から何かしらの反応がないか注意深く観察していた。
だが、結果は変わらず刈り取られた森はそのまま残っている。
「…………なにもない……か」
何かしらの反応を期待しての行動だったが、何も変化がない結果に肩を落としてしまう。
再び森の上に飛んでから周囲をぐるりと見まわしたが、やはり異常は見つけられなかった。
削り取られたようになくなっている森だった場所には何の変化もなく、ただ地面が見えるだけだ。
「森が生きているとでも思ったけど、勘違いだったな。じゃあ何が……」
神の一太刀によって刈り取られた場所を眺めつつ、そうつぶやく。
すると、背後から突然巨大な気配を感じ、慌てて振り返る。
「なんだっ———!?」
そこには、俺の身長と同じくらいの大きさの剣を持つ、全身が真っ黒に染まった人型の化け物が立っていた。
「グォオオオッ!!」
黒い化け物は雄叫びを上げながら剣を振り上げ、こちらへ向かって駆け出してきた。
その速度があまりにも速く、避ける暇もない。
「ちぃ!!」
アダマンタイトの剣を横薙ぎにして相手の攻撃を防ぐが、あまりの力強さに弾き飛ばされてしまう。
「一撃で折れた!?」
空中で体勢を立て直し、剣をアイテムボックスへ放り投げつつ、着地と同時に走り出す。
相手が人間でないことは一目でわかった。
(こんなに大きな体をしている人間がいてたまるか)
「グルァアアアアアアッッ!!!!」
3メートルを優に超える黒い怪物は、大きな剣を軽々と片手で持ち上げ、俺に向かって袈裟斬りを放つ。
それをギリギリで避けながら距離を取り、相手が何者なのか鑑定を行う。
【モンスター情報】
森を守護するもの:ガーディアンオーガ
(まさか、森の異変に気が付いた何者かが俺を排除するために用意したのか?)
今まで出会ったことのない強敵の出現に緊張が高まる。
ガーディアンオーガの見た目は、一言で表すなら漆黒の巨人。
大きさも尋常ではなく、3メートル以上はある巨体を誇っていた。
そして持っている巨大な剣が放つ禍々しい雰囲気から、相当な業物だとわかる。
そんなことを考えている間にも、敵からの攻撃は続いていた。
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