臨時世界ハンター会議①~準備完了~
臨時世界ハンター会議の準備が完了し、澄人と師匠が食事をしております。
「澄人、メニューを選ぶ前にまずこれを見てくれ」
師匠から渡された紙を流し見て、すぐにテーブルへ置く。
内容からして簡単な感想を言っておけばよいと思い、紙を置いてタブレットを手に取った。
「特待生の枠へ志願者が500倍を超えたんですね」
「ああ……草根高校の歴史上一番高い倍率になっておる……」
今は臨時ハンター会議の準備が終わり、師匠が労ってくれるというので高級焼き肉店に来ていた。
俺と師匠が通されたのは個室で、他の部屋からの会話が全く聞こえない。
あとでじいちゃんも来るからここでこの話題なのかと思いつつ、タブレットでメニューを見始める。
「そうなんですね」と適当に相槌を打ちながら、何を食べようかなと考えていたら師匠が深いため息をつく。
「現在ハンターとして活動しているほとんどすべての中学生が草根高校に集結しようとしているんだ……お前の影響でな」
「へー、そうなんですか」
俺はタブレットを操作して注文画面を開いた。
俺のせいで草根高校の倍率が上がったらしいけど、そんなことより今は滅多に口にできない肉を食べることが重要だ。
(贅沢してもいいらしいから、A5ランクのこのお皿を頼んでもいいかな?)
手を止め、高い物を注文してもよいか聞こうとしたところ、師匠はテーブルに肘を置き両手を組んでうつむいていた。
「それでな……試験内容について澄人に相談がある」
「俺にですか? 生徒ですよ俺?」
師匠は顔を上げて俺の目を見ると真剣な表情をして口を開く。
「もちろん評価をつけさせることはしない。わしが求めているのは【境界】の提供じゃ」
「境界? ……実技試験でもするんですか?」
「どちらかというと実地試験じゃな。ハンター証には載っていない個々の能力を見ようと思っている」
「なるほど……神格を上げただけの無能をはじくわけですね」
「簡単に言えばそういうことじゃ。この受験者数だと合格するためにそういう生徒もでてくるじゃろう」
4000人を超える中学生が受験してくるとなれば、玉石混淆な状況になるだろう。
そこで将来的に優秀なハンターとなる芽を見逃しては試験の意味がない。
(境界での行動を評価するのは良いな……自分で戦ってきたのかそうでないのかはっきりとわかる)
納得するようにうなずき、注文画面を閉じると、師匠が腕を組んだまま俺のことを見つめていた。
「どうしたんですか?」
「……負担ばかりかけてすまんな」
「えっ!?」
急に頭を下げながら謝られて、思わず声が出てしまう。
俺はタブレットを置き、軽く咳払いをしてから師匠の言葉を聞き返した。
「なんのことです?」
「振り返ると……澄人がハンターになってからというもの、お前に助けられることが多いからな……」
師匠は目を細めて少しだけ眉間にしわを寄せている。
その表情からは悔しさのようなものが見え隠れしていた。
「まあ……そうかもしれませんね」
「お前がいなければ今頃……いや、これはワシが言うべきではないな……」
こぶしを強く握りしめる師匠は言葉を途中で切り、何かを振り払うように首を左右に振る。
そして、いつものように優しい笑みを浮かべた。
「ありがとうな澄人。お前がいてくれて助かっている」
「いえ、こちらこそ」
お互いに感謝をしているところで店員さんが現れ、注文した料理を持ってきてくれた。
師匠が任せろと言いながら俺を制止し、トングで生肉を網の上へ乗せる。
しばらくすると、肉の焼けるいい匂いが立ち込めてきて食欲を刺激してきた。
「もういいですよね?」
「まだじゃ」
箸を手に取り、網の上に並べられている肉を眺める。
じゅうじゅうといい音を立てており、もう待ちきれない。
「師匠!! 早く食べましょう!!」
「よそうから、もう少し待て……よし! これならいいぞ!」
「いただきます!!」
肉を焼いてくれている師匠に声をかけてから、自分の皿にある肉を口に運ぶ。
噛んだ瞬間に広がる甘美な味に感動しながら飲み込み、すぐに次の肉へ手を伸ばした。
「うまい……これがA5ランクのお肉……」
「存分に食べなさい、今のわしはこのランクの肉なら少しで十分じゃからな」
師匠は俺が食べる様子を嬉しそうに見ながら、自分も肉を食べ始める。
しかし、すぐに肉を食べる手を止め、じっと俺の顔を見た。
「澄人、お前は本当に美味しそうに肉を食べるのう……」
「えっ? そんなに変ですか?」
「いや、そんなことはない。むしろ、見ているこちらも幸せになれるわい」
師匠は微笑むと、肉を食べ始め、俺も肉を食べることに集中する。
最初に注文したものが終わり、次に何を食べようか悩んでいると、控え目に部屋の扉がノックされた。
「失礼しますお連れ様がいらっしゃいました」
「澄人! たくさん食べておるな!!」
部屋に入ってきたのはじいちゃんで、今日は外食だというのにアロハではなく甚平を着ている。
師匠と俺に話しかけながらもテーブルに重なっているお皿を見て、笑顔になっていた。
「うん、今日はじいちゃんがおごってくれるんでしょう?」
「おう、気にするな! わしからの労いだと思ってくれ」
じいちゃんが豪快に笑いながら師匠の横に座り、ビールをくれと店員さんへ合図をする。
「広よ、どこまで澄人へ話をしたんだ?」
店員さんが退出すると同時にじいちゃんが師匠へ問いかけた。
師匠は焼き上がった肉を俺の皿へよそいつつ、口を開く。
「境界の提供についてだけ説明しております」
「そうか」
師匠とじいちゃんはお互いを見ることなく会話をしており、俺は黙々と肉を食べる。
師匠が焼いた肉を食べるのは初めてだが、焼き加減が絶妙だ。
「澄人、特待生を希望する中学生をお前の鑑定で能力を見極めてほしい」
「俺が? ほかにも鑑定を使える人いるでしょう? 夏さんもできるよね?」
俺は絶妙な焼き具合の肉を温かいうちに食べるため、食事をしながら会話を進めた。
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