ゆいこのトライアングルレッスンB〜赤い糸と皆既月食〜
トライアングルレッスンウィーク!
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「わー! ステキ!」
誕生日の夜、ひろしとたくみが、わたしを展望台に連れてきてくれた。
「ここの夜景、凄いだろ!」
たくみは自慢げに言った。
「とっても綺麗! 下にも星空が広がってるみたい!」
「でも、ゆいこが一番綺麗だぞ!」
「もう、何言ってんのよー」
「キザな台詞は、たくみには似合わないな」
いつものようにおどけるたくみに、ひろしは呆れていた。
わたし達は、しばらく幻想的な世界に浸っていた。
「この夜景も、ゆいこも、独り占めできたらいいのに……」
不意にたくみが、ぽつりとこぼした。
へっ……? 今なんて!?
どうしてそれは、冗談ぽく言ってくれないの?
なんで、目を合わせてくれないの?
心の奥が、ざわざわした。
「今日は、起きてられて偉いな」
ひろしが優しく、わたしの頭をポンポンする。
「誕生日の夜に、主役が寝るわけないでしょ!」
「この前は、スヤスヤ夢の中だったのに」
「だって、あれは真夜中だったから!」
わたしがムスッとすると、ひろしは優しく微笑んだ。
でも、本当はあの夜、わたしは起きていた……。
× × ×
「ったく、ゆいこ、寝ちゃったぞぉ」
たくみの声が近くで聞こえる。
「寝かせといてやれ。はしゃぎすぎて疲れたんだろ」
「子供かよ。皆既月食、あんなに楽しみって言ってたのに。写真でも撮っといてやるかぁ」
わたしは2人の会話に目を覚ました。
9月8日、この日は3人で皆既月食を見ようと約束していた。
「なぁ、いつまで、こうしていられるんだろうな」
「何言い出すんだよ」
「ひろし、赤い糸って本当にあると思うか?」
「えっ?」
「赤い糸が結ばれてるのは、たった1人だけなんだぜ?」
「それは……」
「月にいるうさぎさん、運命教えてくれねーかなぁ?」
「きっと餅つきが忙しいさ」
「太陽と月と地球が一直線に並んだらさ、月は地球の影に隠れちまうんだよ……」
「でも、無くなりはしないだろ? そこに変わらず存在してる……。って、俺の話、聞いてんのか?」
「お! ひろし! これ、月食始まったんじゃね? ほら!!」
「え!?」
「すげぇー! 写真撮らなきゃ! カメラ! カメラ!」
皆既月食に、2人は興奮気味だった。
「すっぽり隠れると、色が変化するんだな」
「ハムだよハム! ハムハム!」
「なぁ、たくみ。俺は今が変化しても、ずっとゆいこのそばにいるよ」
「そっか。俺は、そんなの我慢できねーかも。相手がひろしでもな」
2人に声をかけられず、わたしはそのまま寝たふりをした。
× × ×
「ひろし、たくみ、今日はありがとう!」
「来年も、また一緒に祝おうぜ!」
「ああ、そうだな」
「それ、絶対なんだからね!」
わたしは自分にも言い聞かせるように言った。
写真のように、いつまでも、このまま時が止まればいいのにと、思いながら……。
満月は、ハム!
ゆいこのトライアングルレッスンD〜プラネタリウム編〜にもどこか繋がってる物語?
明日は、サプライズ誕生日会!
2人のまさかのサプライズとは?




