270話 〝赤キ月ノ夜〟9ーそれは、なんら特別なことではなく。※
お待たせしました。
応援いただき、ありがとうございます!
別視点。
本日もよろしくお願いいたします!
ぱしゃっ。
「【瞬間増幅】。自らの制御を離れるその寸前、衝突の瞬間にさらなる大量の魔力を一気にそそぎこむことで威力を爆発的に引き上げる。なかなかおもしろい発想じゃないかしら? そうね。わたしなら、むしろ――うふふ……! 【黒元の精霊魔女】ディシー・ブラックリング。いままで添えもの程度にしか思っていなかったけれど、なかなかどうして。さすがは〝E〟の対となる闇の勇者が見いだした、あの子を支えるパーティーの一員ということかしら?」
淡い光に照らされた白い石造りの専用の豪奢な浴室。
まるで観劇のように自らの魔力のちりをもって虚空に広げた映像を視ながら、ふわふわとした白い髪の少女――【錬金魔王】〝冒涜〟のアーリケ・リリミエスタは、心から愉しそうに笑みを深めた。
――そのすべては、彼女にとって、なんら特別なことではない。
それは食事をし、その余韻をもってお茶を愉しみ、こうして入浴し身を清め、ベッドでゆっくりと眠りにつくことのように。
「そうね? どうしていままで気づかなかったのかしら? 【創魔争喰祭】の準備でわたしの頭がいっぱいだったせい? 添えものでないと考えてみれば、【恐慌騎士】ニーベリージュ・ブラッドスラインと、あの子の妹を名のる【魔糸の繰り手】のネヤ・レイス。たとえばあのふたりの特異な魔力特性も非常に興味深いものがあるわ。もし、あれを……いえ、あれほど過剰でなくても、近しいものを自由に付与できたら――そして、【呪紋使い】のロココ。これは初めて視たときからだけど、まだその力の深淵に気がついていない、彼女と同じ呪紋をもつ、彼女とはちがう時代にあらわれたあの子がいったいどのような果てを迎えるのか――うふふ。これはぜひ、最後まで特等席で視てあげないと」
感情のまったく感じられないメイド服を着た女使用人の手で、見た目相応の幼い少女のように泡まみれになりながら頭や体を洗われるあいだにも、次なる実験やいま得た新たな着想を研究にどう生かすか思考しつづけることも。
「さて。からかう〝E〟もいないことだし、お風呂はこれくらいにして、つづきは部屋にもどってベッドに寝そべりながらゆっくり視ようかしら。いまみたいに仲睦まじい〈輝く月〉の様子を視るのも悪くはないけれど――」
ぱちん、と指を鳴らし魔力のちりを自身にもどすと、女使用人に水滴をぬぐわれながら、その金の瞳を閉じる。
そこに映るのは――
『ビィィィィィィィィィィギィィィィィァァッ……!』
「うふふ。あまりに巨大くて、さすがに少し手間取ったみたいだけど、ようやく咀嚼も終わったみたいね。それに――」
いくつも同時に俯瞰して視ている各地に放った〝眼〟。そのひとつに焦点をあわせると、アーリケはことさらに唇をつり上げて裂けたような笑みを浮かべた。
「うふふ……! 遠路はるばる来てくれた最高の役者たちも、ようやくすべてそろうみたいだし、歓待してあげないと……! さあ、もう一度起きなさい……! 赤き終末の捕食粘体……! とってもとっても素敵な名前をつけてもらったお礼に、もっともっとあの子たちを愉しませて苦しませてあげて……! その身のひとかけらまで朽ち落ち果てる、その最期の瞬間まで……!」
――そして、その底知れない悪意をふりまくことも。この人間にとって最悪といえる魔王にとっては、なんら特別なことではないのだ。
ということで、またしてもお風呂に入りながら悪だくみをする【錬金魔王】アーリケでした。〈輝く月〉のメンバーから得た新たな着想は、はたしてどんな結果を生むのでしょう……?
さて。ブクマ、高評価、いいね! などの応援いただきありがとうございます。まだの方、ぜひお願いいたします! 感想もご自由にどうぞ!
さらに、マンガBANGアプリとweb(他より先行)、ピッコマとLINEマンガでコミカライズ連載中!
マンガ分冊版とwebから全面加筆修正した電子ノベルもAmazon、DMM等各種電子販売サイトで発売中です!
では、次回「〝赤キ月ノ夜〟10ー絶対なる悪意」にて。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします!





