269話 〝赤キ月ノ夜〟8ー魔力酔いと、給仕。
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「んく、んくっんくっ……ぷっは〜! まっず〜い! もういっぱ〜い!」
赤い月が照らす夜の下。
みんなのもとへと到着した僕とロココが見たのは、そういってぺたんと座りこむディシーが二本めの魔力回復薬を飲みほし、地面に転がす姿だった。
「来たか。ノエル。ロココ」
「ノエルにいさま……! ロココも、よく無事で……!」
「あ〜! ノエルってばってば、ロココちゃんだっこしちゃってる〜! いいな、いいな〜!」
――指先が、震えてる。
一見すると、ろれつもあやしくまるで月夜の晩酌をひとしきり愉しんでできあがったみたいな高揚感だけど、そうじゃない。
魔力枯渇のその寸前。そして、そこから薬で急速に回復したことによる魔力酔い。
そう。あの赤き終末の捕食粘体の巨体に決定打を与えるために、それこそ限界ぎりぎりまでの魔力をディシーは振りしぼったのだ。
「いや、ディシー。飲みすぎはあんまりよくないし、三本めはやめたほうがいいかな。二本でじゅうぶん回復できてるはずだし。そうだ、ネヤ。かわりにレイス家に伝わる精神を落ちつかせるお茶を――」
僕はロココをすとんと下ろすと、しずしずと近よってきた妹にそう指示をだす。それを聞いたディシーはあからさまにふくれっつらになると、地面を左右の手でバンバンバン! とたたいた。
「え〜! やだ〜! 飲みたい飲みたい! もっと飲みた〜い! 蜂蜜酒も飲みた〜い!」
「だめですよ。ディシー。そんなふうにあまりにいさまにわがままをいっては。はい、どうぞ。あたたかいうちに」
「え〜! ネヤちゃんのいけず〜! あ! じゃ〜あ、じゃ〜あ、えへへへ……!」
ぽうっと赤くなった頬のとろけたような瞳で上目づかいにディシーが僕を見上げる。
「ノエルが飲ませてくれるなら、いいよ……?」
「ふぅ〜っ。ふぅ〜っ……よし。はい。口開けて。まだ熱いから、ゆっくりふくんでね。ディシー」
「あ〜ん。んくっ、んくっ……あちっ! えへへ……! でも、美味し……! んぅ〜、ノエルぅ〜? あたし、甘いものも欲しいなぁ〜?」
「では、こちらを。わたしが実家を出る際に持ちだした干した果実です。このお茶によく合うんですよ」
「わぁ〜! さっすがネヤちゃ〜ん! わかってるぅ〜! ん〜。じゃ〜あ、ノエルぅ〜? あ〜〜ん」
そういって、まるで親からのえさを待つひな鳥のように、無防備にうれしそうに口を大きく開けるディシー。
手のひらからその干した果実をつまもうとするとき、妹のその美しく整えられた眉がぴくりと動き、すっと僕の耳もとでささやく。
「安心してください。ノエルにいさま。この場は、わたしから見てもとってもがんばってくれたディシーにおゆずりします。だから、わたしが見事要としての役割を果たしたその労いは、あとでわたしとにいさま兄妹ふたりっきりで、たっぷりと心ゆくまで……ね? に、い、さ、ま?」
最後にふぅ〜、と耳もとで息を吹きかけられるといい表しようのない感覚に僕の背筋がびくん、と跳ねた。
「のへふぅ〜? まふぁ〜?」
「い、いまいく!」
いったいあとでなにをさせられるのだろう? と心臓をドキバクとさせながら、僕はひな鳥よろしく無防備に幸せそうに口を開けるディシーの給仕へといまはせっせと勤しむのだった。
ということで、(魔力)酔っぱらいディシーと、兄妹水入らずを画策するネヤでした。ちなみに甘えて満足したロココはニーベといっしょに周辺を警戒中です。
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では、次回「〝赤キ月ノ夜〟9ーそれは、なんら特別なことではなく。※」にて。別視点、災厄前半戦の〆になります。
2月19日公開予定!
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