265話 〝赤キ月ノ夜〟4ーほんの少しのさびしさと、ともに。
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「……だめだな」
そう切って捨てると、ニーベリージュは赤い月の照らす空の下、遠距離から赤き終末の捕食粘体に放っていた威力のかわりに威圧を強めた青の炎の波を止めた。
それから、くるりと僕に向きなおるとこうつづける。
「ノエル。反応はあったから、まったく効いていないわけではない。だが、周囲のものを食らい魔力をとりこもうとする捕食本能がどうやらそれをはるかに上回るようだ。口惜しいがこのままつづけても、おそらく無為に終わるだろう」
「ありがとう。ニーべ。なら――」
「むしろ、その本能を利用して惹きつければいい。そういうことですね。ノエルにいさま」
「――ネヤ」
しゃなり、と丈の短い黒い着物のそでを揺らして、妹のネヤが僕に向きなおる。
「止めないでくださいね。にいさま。わたしはもう、にいさまにただ守られるだけの妹ではありません。にいさまや仲間とともに肩を並べて戦う闇の勇者パーティー〈輝く月〉の一員なのですから」
やわらかに微笑む妹の、その瞳の中のかたく意志を宿した光が僕をまっすぐに見つめていた。
――その光の中に、心からの頼もしさと、ほんの少しだけさびしさを覚えながら、僕はネヤに向かって返事をする。
「止める気なんて、ないよ。頼んだ。ネヤ。いまから伝える作戦は、君が要だ」
「……っ、はい! にいさま!」
ほんの一瞬、息を飲んでからネヤはそう答える。驚きとうれしさを隠しきれない、やっぱりまだほんの少しだけ幼いころからのおもかげを残した表情で。
「よし! じゃあ、作戦どおり二手に別れよう! ニーべ! ネヤ! ディシー! 頼んだよ!」
「ああ! ノエル! 必ずやふたりは私が守ってみせよう! 我が騎士と、そして友への誇りにかけて!」
「要としての役割、必ずはたしてみせます! ノエルにいさま、ご武運を!」
「こっちはまかせて! ノエル! あのあともつづけたあたしの訓練の成果、ば〜っちり見せてあげるからね!」
そう答え、ニーベリージュの先導のもと、ネヤとディシーは駆けていく。
それを見送ると、向きなおり、僕はロココに手を差しだした。
「あっちは、みんなを信じよう。さあ、ロココ。僕らも――」
「ううん。ノエル。むしろ、先にいく」
しゅるり。
首を振ると、魔力を含んだ風が巻きおこり、ロココのまとう【六花の白妖精】が六枚の白い花弁にも似た羽を広げた。
まとめていた腰のリボンがほどかれ、同時に身につけていた色とりどりの長い帯のような布が首すじからたなびく。
「纏い、鎧え」
両足の先へと束ねた呪紋を幾重にも重ねて――
「ノエル。強くなったロココを、見てて」
そして、飛ぶような速さで、一気に走りだし、さらに呪紋を使い、次々と前へと進んでいく。
「あ……!」
――その姿に、心からの頼もしさを。そして、伸ばした手の先に、ほんの少しだけさびしさを。
その思いを胸に、僕は勇者のあかしたる闇の聖剣を抜き放った。
「……本当にみんな、強く、頼もしくなった。なら、僕がおいていかれるわけにはいかないよね……! 【黒衣隠形】……!」
聖剣から生みだした黒い〝闇〟を影のごとくその身にまとう。
「さあ、いくよ……! 赤き終末の捕食粘体……! 僕たち闇の勇者パーティー〈輝く月〉が全力でお前を――止める!」
そして、黒くたなびく影の尾をひいて、僕は戦場へと向かって走りだした。
ということで、幼い組の成長に少しだけさびしさを感じつつ、いよいよノエルたちと災厄との戦いの本格的な開始です。
ロココのお姫さま抱っこからの卒業。まあ、このあいだのニーべリージュみたいにまたやるかもしれませんが。
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では、次回「最小の戦い」にて。
1月8日公開!
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