261話 前夜祭(2)。※
お待たせしました。応援いただき、ありがとうございます!
別視点。あちらの視点、一話増えました。
次回で終了予定です。
本日もよろしくお願いいたします!
「――と、段取りについては、おおまかにはこんなところかしら?」
「ヒャハハ! つまり、殺り放題に喰い放題ってわけか……!」
「クフフ……! 高貴なる方々に、それに……! じゅる、希少にして価値ある血が吸えそうで愉しみです……!」
煌々と照らされた豪奢な部屋。
愛らしい見目のふわふわとした白い髪の少女――【錬金魔王】〝冒涜〟のアーリケ・リリミエスタの説明を聞き終えた二体の実験体【狼魔将】ハルヴと【血魔将】ラルド・キュレは、口もとを裂けたように粘つくつり上げる。
冒険者然とした赤髪の偉丈夫に、貴公子然とした長い黒髪の細面。偽装した人間の姿に似つかわしくない、その獰猛そのものな本性のままに。
「うふふ。祭りの会場であるディネライア王都に着くまでに、もう少し人間らしい表情を練習したほうがいいかもしれないわね? あなたたち」
「……ところでよぉ。アーリケ。こいつは、何だ?」
「ええ。私も気になっていたのですよ。淑女アーリケ。ことここに至り、まさか我々のあずかり知らぬものが現れるとは」
くすくすと可笑しそうに笑うアーリケから、ハルヴとキュレの目がいっせいに壁際に背を預けてだまったままのもうひとりの仮面の男に向かう。
「うふふ。そんなに気になるなら、少しだけ教えてあげる。彼は〝E〟。察しのとおり、あなたたちと同じ【創魔争喰祭】の参加者であり、【魔王】創生の実験体のひとり。まあ、あなたたちに与えた因子の実験とは、また別のアプローチなのだけれど。それで、〝E〟と呼ぶのは、うふふ。彼はわけあって元の名前を捨てた身なのだけれど、かわりに名乗ろうとした名があまりに大それていて名前負けしそうだったから、頭文字だけ許してあげたの。侮蔑と嘲笑の意味をこめて、何者でもなくなったいまのあなたは、ただの〝E〟で十分よって。うふふ」
あからさまに見下し、実験体と言ってはばからないアーリケの態度にわずかに同情をいだいてから、ハルヴとキュレは〝E〟の姿を眺めまわす。
先端が黒く染まった、くすんだ青の髪。口の上までを覆う仮面により、表情はようとして知れず。
「ん……!?」
だが、アーリケが用意したと思わしきその剣士風の黒い衣装の下に、わずかにそれを嗅ぎとったハルヴは、思わず反射的にその胸ぐらをつかみ上げた。
「なんだ、てめえ……!? 妙なにおいさせやがって……! 闇だけじゃねえぞ……! むしろこれは、ひか――」
「そこまでにしてもらおうかしら? 実験体ハルヴ」
その瞬間、バッと手を放し、人間の姿に偽装したハルヴが数歩後ずさる。
「うふふ。あなたの死体を使った実験に切り替えてもいいのなら、話は別なのだけれど?」
その身にまとう魔力が爆発的に高まったわけでも、背筋が凍るような殺気を向けられたわけでもない。
常と変わらない優雅な微笑みを向けられただけのハルヴは、だが――
「い、いや……! もう十分だ……! あ、アーリケ……! す、すまねえ……!」
――心からの畏怖とともに、その愛らしい見目の少女に頭を下げる。
「うふふ。頭の悪いあなたたちに、ここはもう一度念を押しておこうかしら?」
そのハルヴの謝罪を無視して、謳うようにアーリケは告げる。
「【創魔争喰祭】がはじまるまでのあいだ、互いを害することは、わたしの実験の邪魔は、けっして許さないわ。もし、そんなことをしたら、そうね。殺してくれと頼むまで、そして死んでからも使いつぶしてあげる」
その偽装した偉丈夫の外見にも、獰猛な人狼の本性にも見合わず、言葉をなくし青ざめた【狼魔将】ハルヴがカタカタと震え上がる。
「それから、キュレ?」
ハルヴから、事態を静観していた【血魔将】ラルド・キュレに向けて、アーリケの微笑みが向けられる。
「さっき、おもしろいことをいっていたのだけれど、なぜわたしがあなたたちに直接関係ない実験のことをわさわざ伝えてあげないといけないのかしら?」
その愛らしく小首を傾げた微笑みに、だがキュレは絶句し――
「いえ。出すぎた真似を失礼いたしました。我が主たる淑女アーリケ・リリミエスタ」
――片腕を胸にあてると、貴公子然として、うやうやしく頭を下げた。
ということで、【錬金魔王】アーリケがパワハラに生き生きとしすぎて、増えた一話でした。【魔将】コンビは前半うきうき、後半ガタガタです。
絵面としては、小学生くらいの女の子に、強面と美形がやりこめられているかたちでしょうか。
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では、次回「前夜祭(3)」にて。11月15日更新予定!
今度こそ、あと1話あちら側の視点を挟み、2章最終盤の〝紅キ月ノ夜〟へと突入する予定です!
それでは、今後ともよろしくお願いいたします!





