259話 ずっと見ていたい。※
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――なんだか、すごく心地いい夢を見ていた気がする。
「う、ううん…………? あれ、ユース…………?」
「プリスっ……!」
「ひゃっ……!?」
ぼうっと目を開くと、視界いっぱいに入ってきたのは、いつも見ている幼なじみの男の子の顔。
いつもと違うのは、その顔が涙でいっぱいでくしゃくしゃになってることと。
「よかった……! よかった……! 傷はとっくに癒えてるのに……あんまり心配させるんじゃねーよ……!」
力いっぱいにわたしを抱きしめてきたこと――え、ええっ……!?
「ちょ、ちょっと待って……!? ゆ、ユース……!? きゅ、急にどうしたのよ……! わ、わたしいま、なんか体べたべたしてるし、そ、それに心の準備が……!」
「は……? お前……。覚えて、ねーのか……?」
それから、説明を聞くうちに、だんだんと思いだしてくる。
なにか突然、強い衝撃に襲われて、それきり意識がなくなってしまったこと。それ以上に、その前に落ちこむユースを見て思わず――
(ねえ、ユース。次は、どうするの? もっと進んで、英雄になりたい? それとも……故郷にでも、帰ってみる? ……わたしと)
――こ、告白めいたことまで、いってしまったこと……!
ひ、ひぁぁぁ……!? な、なにいってるのよ……!? わたしのバカ! い、いくらいつも自信満々で生意気なユースがめずらしく落ちこんでて、ちょっと可愛くてほっとけなくて、キュンときちゃったからって……! そんなの、考えなしにもほどがあるじゃない……!?
「なあ。プリス。それで……さっきの答えだけど」
「は、はい……!」
内心では頭をかかえたくなるような、それでも必死で平静をとりつくろうわたしに向かって、ユースがその熱いまなざしをまっすぐに向けてくる。
わたしはもう、胸がドキドキと高鳴りすぎて、どうにかなってしまいそうなほどに緊張していた。
「俺は、やっぱり英雄になりたい……! この王国の希望と呼ばれるほどの冒険者のひとりに……!」
だからこそ、その答えにはっきりと落胆し……同時に、やっぱり、と納得してしまう。
そんなわたしに、なおもユースはつづけた。
なにかにあせったようになっていた最近は見られていなかった屈託のない心から楽しそうな表情で。
「俺が相討ち覚悟でも倒せなかった風の竜を倒した闇の勇者ノエルさんや、その仲間の〈輝く月〉のひとたち……! それと、今日同じ戦場で戦った、いまの俺たちよりもずっとずっと強くて、超すげー冒険者……! 俺は、この〈熱き血潮〉のみんなでそれに並び立ちたい……! 今日、ノエルさんに認められた王国の希望の〝光〟に真にふさわしい冒険者に……!」
きらきらとした瞳で夢を――ううん。つかみたい未来を熱く語るその表情は、わたしの大好きな表情で。ずっと、その背中を追っていたくなる表情で。
だから――うん。いまはこれでいいよね。ってそう思った。
「だからよ……! プリス……!」
「ふひゃっ……!?」
その瞬間。不意打ちのように、わたしの両手が握られる。
逃げられないように、がしっと傷だらけの、ひとまわり大きな手でつつまれる。
「その夢を叶えるために、〈熱き血潮〉の一員としてだけじゃなく、俺のとなりで……ずっと俺を支えてくれ……! いまも、これから先も……! ずっと……! ずっと……!」
潤んだ、まっすぐな、これからもずっと見ていたい、となりで支えていたい、大好きな瞳がわたしを見つめていた。
わたしは、
すぅ……。はぁ……。と息を整えると、
「はい…………!」
鏡なんか見なくてもわかる、涙をにじませた、まちがいなくいままでの人生で最高のとびっきりの笑顔で、そう答えた。
ということで、ユースとプリス、幼なじみカップルが想いを通じあいました。尻に敷かれる日々のはじまりともいいます。……いままでとあまり変わらないかもしれません。
淡いあこがれをいだいていたっぽいマジク少年には、まあそのうちいい出逢いがあるでしょう。
そして大規模討伐編、これにて終了です。
元々は成長した〈輝く月〉の力をしめすリアクション、あるいはヘイト要因として生まれた〈熱き血潮〉の面々(特にユース)ですが、書いてるうちに実質この編の主人公に。いまではお気に入りなので、また機会があればぜひ出したいです。
ノエルと違った荒っぽい言葉づかいが書いててけっこう楽しかった。
読者のみなさまにも気に入っていただけたら幸いです。
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では、次回「前夜祭(前編)」にて。
10月15日公開予定!
しばらくなりを潜めていた(裏ではずっと動いています)あちら側の視点を挟み、いよいよ2章最終盤の〝紅キ月ノ夜〟へと突入します。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします!





