258話 ぐちゃぐちゃもどろどろも。※
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――感謝しか、ない。
だって、これで俺もプリスも、まちがいなく助かったのだから。
命の恩人に、敵意なんかあるわけが、ない。
けど………!
肉塊と化した風の竜の死骸を一べつし、ぎり、と強く強く奥歯を噛みしめる。
あっさりと……かよ……!
泥臭く、ぼろぼろになって相討ち覚悟で、命を懸けてそれでもとどかなかった自分。
突如現れ一蹴し、触れさせることすらなく涼しい顔で、秒殺にしてみせた闇の勇者。
その差。その目の前のほとんど年も変わらない黒髪の少年に、俺はどうしてもその言葉を口にだせず、ただぐちゃぐちゃな感情のままに見つめつづけるしかなかった。
「……ありがとう」
倒れたプリスにちらりとその目が向けられた直後だった。なぜかその言葉を闇の勇者が俺に向かって口にだす。
「な、なんのつもりだよ……! なんであんたが……それを……!」
うろたえる俺に、目の前の黒髪の少年はなおも語った。
「だって僕じゃ、まにあわなかったから。僕の手がとどいたのは、どうしたって君だけだ。いまの君の姿を見れば、その場にいなくたっていやってほどわかるよ。君があの女の子を守るために、どれだけ必死で命がけだったのか」
――そうだ。俺は、必死で。ぼろぼろになって。それでもとどかなくて。結局、あんたが。
「君は、あきらめなかった。最後の最後まで。僕が助けたあの瞬間だって、君は、剣を握りつづけていた。それは、その姿は、生きることを、守ることをあきらめずに未来を切り拓こうとしつづけるその姿は、かつて僕がだれよりもきれいでまぶしいと思った、なによりも大切な仲間――輝く希望の〝光〟たちと同じだから」
目の前の黒髪の少年が、微笑む。
「だから――ありがとう」
なんっ……だよ……! それ……!
俺が、俺が、これでもかってほど、力の差を見せつけられて、苦しんで、ぐちゃぐちゃのどろどろになってたあいだに……!
あんたは、そんな、笑顔で……! 助けた相手に礼なんかいって、そして……なんで、なのにあんたに希望っていわれて……! 俺は、こんなに、うれしいんだよ……!
「う、うおおおおおおおおおおぁぁぁぁぁっっ!」
――叫ぶ。
ともすれば、ぽろぽろとこぼれそうになる涙と、吐きだしそうになる、ない混ぜになった感情のかわりに、ただ、俺は、吠えた。
この、ぐちゃぐちゃとどろどろがすべて――空へと昇華されていくように。
「……遅くなって悪い。闇の勇者ノエル・レイス――いや、ノエルさん。ありがとう。俺と、プリスを助けてくれて」
「だからそれは、君が――」
「いや、それでもだ。どうか、受けとってくれ。頼む」
首を振り、その、ほとんど年も変わらない少年の黒い瞳をまっすぐに見つめかえす。
「……わかった。受けとっておくよ」
「ああ」
「それと、君の名前を教えてほしい」
――ドクン、と胸の高鳴りを隠すように、一度だけ息を大きく吸いこんだ。
「ユース。光剣士のユース・ノービスだ」
「そうか。なら、ユース」
闇の勇者ノエルが腰の剣をすらりと抜いた。青と黒の〝光〟をまとう刃――伝説の聖剣を。
「ここで君と会えて、うれしかった。〈輝く月〉以外にも、君のような希望の〝光〟がいてくれるって知ることができて」
闇の聖剣が天高く掲げられ、俺も、ずっと手に握ったままだった剣を天高く掲げる。
「だから、ユース! これからも互いに戦いぬこう! 精いっぱいの力をこめて! この王国と、人々の未来に、平和と希望をもたらすために!」
「ああ! ノエルさん!」
そして、互いの剣の切先を重ね、キィン……! と打ち鳴らす。
ぐちゃぐちゃもどろどろも、そんな感情はもうとうに空に消えて。
――ただ、その小気味良い音と誓いだけが、すうっと俺の胸の中を通り抜けていった。
ということで、危ういところでユースの憑き物が落ちました。どこまでもまっすぐな主人公気質な少年です。闇属性のノエルには、ホントにちょっとまぶしいかもしれません。
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では、次回「ずっと見ていたい」にて。
10月10日公開予定!
大規模討伐作戦編の最終回。ある人物視点でのエピローグ的な話になります。あ、いままだ寝てますね。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします!





