248話 追い立てる波。※
※別視点。
何が一番新作の宣伝になるかと考え、がんばって数時間で書き上げました! プロットはできてましたが。
では、本日もよろしくお願いいたします。
――時は、作戦開始前に遡る。
「よし、到着……!」
ドルギガ山岳地帯の奥地。
――そう告げるとともに、私とともにここに来たノエルのまわりを覆っていた黒い"闇"が解け消える。
「ごめんね。ニーべ。窮屈だったでしょ?」
「そ、そんなことは……ない……!」
心配げな様子で下を向くノエル。
私は、そう返すのがやっとだった――恥ずかしくて。照れくさくて。胸の鼓動がおさまらなくて……!
そう。なぜなら、いま私は――ノエルのその腕の中に抱かれているのだから……! ま、まるで深窓の姫君のごとく……!
「僕が闇の聖剣の力を引きだして会得した、この【真・隠形】。こうしてようやく実戦レベルで使えるようにはなったんだけどさ。まだ広域に広げられるほどには慣れてなくて。おかげでニーべに窮屈な思いをさせちゃった。はぁ……。僕も、まだまだ訓練が足りないなぁ」
なのに、なのにこの男は――なんでそんなに平然とした顔をしていられるのだ……!? こ、こっちがどれだけ……!?
「も、もももういいだろう……!? ノエル……! 冒険者たちとあちらに残ったディシーたちも首を長くして待っているはずだ……! はは、早く作戦をはじめよう……!」
「あ、そうだね! ごめん。ニーべ!」
――そうして、ようやく私はノエルの腕の中から解放された……のだが。
「じゃあ、僕は向こうに戻るから」
「……ああ」
「ニーべは手はずどおり、ゆっくり来て」
「……ああ」
「ニーべなら心配ないと思うけど、気をつけてね! なにかあったら、すぐに通信の魔道具で呼んで! すぐに駆けつけるから!」
「っ!? ……あ、ああ」
「じゃあ、ニーべ! またあとで! 〝紅キ月ノ夜〟を無事に乗りこえるためにも、僕たち〈輝く月〉の全員で、この作戦、必ず成功させよう!」
――そういい残すと、ふたたび黒い〝闇〟【真・隠形】をまとったノエルは、影となって溶け消え、この場を去っていった。
「……ああ。ノエルも気をつけて」
私の返事を待たず、物音ひとつすら残さずに。
「ううぅぅ……!」
ひとりになった私はひざを折り、はしたなくも地面にしゃがみこむと、両手で顔を覆った。
ああ……! なにをしているのだ、私は!? の、ノエルの顔が恥ずかしくて見れないなど……しょ、少女でもあるまいし……!
――ふぅ、と長く息を吐くと、ようやく私は立ち上がった。
いまもまだ、胸の鼓動はおさまらない。この気持ちがなんなのかもようとして知れない。だが。
「【大火焔霊・恐慌】――」
青く煌々と燃え盛る霊火をその身にまとい、空の両手を前に向けた。そして、その質を変化させる。殺傷力のまるでないように。
(ニーべ! 僕たち〈輝く月〉の全員で、この作戦、必ず成功させよう!)
リーダーにそういわれた以上、私はその信頼に全力で応えるだけだ……!
「――退け! 【追い立てる波】!」
ごうっ、とうなりを上げて、私の体から薄く、高く、青い炎の波が前へと広がっていく。
『『ギギィィィィッ!?』』
『『ブオオオオォォッ!?』』
その波に追い立てられるように、地鳴りのごとく獣や巨虫の群れが我先にと駆け、木々の上からは怪鳥や鳥人の群れが一目散に飛び去っていく。
殺傷力をほとんどなくしたかわりに、威圧と恐怖感を極限まで高めた青い〝波〟にけっして触れたくないとその一心で。
よし……! あとは、手はずどおりにゆっくりと向かうだけだ……! とりこぼしのないように、威圧の幅を広げながら……!
『グルル……!』
と、そのとき、木々の合間を縫って、一匹の巨大な影が現れる。
「ほう……! 大猿か……! いまのこの私の威圧を受けて向かってこれるとは、なかなかの強者……! だが……!」
掲げた私の手の中に、青い光が迸る。
(ニーべなら心配ないと思うけど)
『グルオオォォッ!』
「〈輝く月〉の盾として、こんなところでノエルの期待を違えるわけにはいかない! はああっ! 【焔霊一点刺】!」
『グル……ォ……』
巨大な腕の振り下ろしを避けると、肉薄し、その脳天へと突き刺す。性質を変える前の青の霊火を一点集中した細剣で。
「【追い立てる波】!」
そして、手の中の細剣を亜空間収納にしまうと、私はふたたび青い〝波〟を広げた。
目指すは、殲滅。〝紅キ月ノ夜〟に障害となりかねない一定以上の力を持つ魔物を私たちと冒険者の力で殺しつくす。
必ず達成してみせる。王国より認められし闇の勇者パーティー〈輝く月〉の名にかけて。
ということで、魔物を追い立てていたのはニーベリージュでした。
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次回「〝黒の花〟舞う」
では、また書き上げ次第。
それでは今後ともよろしくお願いいたします。





