247話(閑話) 旅立ちのディシー。※
※別視点。
ちょっと掘り下げの機会があり、突発的に書き上げた短編になります。時系列は本編より前。
では、本日もよろしくお願いいたします。
――いまでもふとしたときに思いだす。
それはきっと、あたしの心の奥底に刻みつけられた傷とそして、ひび割れで。
「いったいなにしてるの!? あの子と遊んじゃいけないって、何度も何度もいったでしょう!? あの子は私たちとは違うんだから……!」
夕暮れの町の中。つないでいた手を無理やりはらわれると、そのあたしと同じ年の男の子は、母親に背を押され去っていった。
困惑するように、ちらちらと何度か立ちすくむあたしのほうを見ながら、それでもその足を止めることなく。
そして、十分に離れてから、一度だけその男の子の母親のほうが立ちすくむあたしを振り返り、その目でにらみつけてきた。
「っ……!?」
すぐにあたしは、その場から逃げだした。そして、決める。二度とあの男の子には会わないと。
――だって、見られたくは、ないから。あの母親と、他の町のひとたちと同じように、あの嫌なものを見るような、怖いものを見るような、目で。
「ぐすっ……。ねえ、おばあちゃん……。お話、して……? お母さんと、お父さんの、お話……」
「ああ、いいともさ……。私の可愛いディシー……」
町外れの、半ば森の中に隠れたように建つあたしたちの家。
涙ぐみ、すがりつくあたしの背をあやすようにそっとなでながら、揺り椅子に座るおばあちゃんはしわがれた、やさしい声で語りだす。
――またなにか、あったのかい?
もう、そう聞かれることさえなくなったくらいに何度も何度も何度もせがんだ、冒険者だったお母さんとお父さんのお話を。
家をとびだしてずっと独りで旅をしていたお母さんが、運命のひと――闇属性でもかまわないって、変わり者のお父さんと出逢ってゆっくりと愛を育んで幸せになって……そして死に別れて、まだ生まれて間もないあたしを連れて、ここに戻ってくるまでのお話を。
「ぐすっ……。ねえ、おばあちゃん……。あたしにもそんな素敵なひと、どこかにいるのかな……? いつかあたしにも、見つけられるのかな……?」
「ああ、もちろんだとも……。私の可愛いディシーや……。だから、いつかおまえさんが独りで旅立つその日のためにも、私のもてる魔法と知識のすべてをおまえさんに授けよう……」
――おばあちゃんのやせ細った手が、そっとやさしく、何度も何度もあたしの背と髪をなでた。
◇◇◇◇
「ぐすっ……。さよなら、おばあちゃん……。いままで本当にありがとう……。えへへ……。あたし、もういくね……。そして、いつかまた帰ってきて、おばあちゃんにも見せてあげる……。このひとがあたしが闇属性でもかまわないっていってくれた、運命のひとだよ、って……」
両親のとなりに並ぶ大好きだったおばあちゃんの小さなお墓の前。
精いっぱい集めた色とりどりの花々を供えると、独りになったあたしはきびすを返して幼いころから育った町を出ていった。……一度たりとも、振り返らずに。
――このときのあたしは、もちろんまだ、知らない。
旅にでたけど、なにひとつうまくいかなくて。たとえ人助けをしても裏目にでてばかりで。
いつのまにか心がすり切れて疲れきってしまったあたしがたどりついたあの街で待つ――
『ひゃはは! 深い絆で結ばれた真の仲間に属性なんて関係ないって!』
――偽りと。
『……遅くなってごめん、ディシー』
――本当の運命のひととの出逢い。……それから。
『ロココ。呪紋使い。よろしく、ディシー』
『いまよりは〈輝く月〉のニーベリージュ! 私が認め、私を認めた友とともに真の"英雄"となるため、参る!』
『にいさま……! みなさま……! あらためまして、ネヤ・レイスです……! ふつつかな"妹"ですが、どうかこれからよろしくお願いいたします……!』
――その先に広がる、ともに生きる家族たちとの表舞台で脚光を浴びつづける最高に輝く宝物のような日々も。
――このときのあたしは、いまはまだなにも知らずにいた。胸の奥にうずく、傷とひび割れとともに。
※重要なことですが、ディシーの胸はすごく大きいです。設定では作中一番。どれほどすごいか気になる方は、ぜひマンガBANG連載中のコミカライズをどうぞ!
そして今回は、そんな大きな胸を痛めていた子が、前話では魔物の大群を手玉にとるくらいに立派になっていました。というお話でした。
さて。ブクマ、評価、いいね! などの応援いただきありがとうございます。まだの方、ぜひお願いいたします! 感想もご自由にどうぞ!
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ぜひご一読を! クオリティは、この「闇属性」に劣らないと自負しています!
次回「追い立てる波」
では、また書き上げ次第。
それでは今後ともよろしくお願いいたします。





