245話 最小の竜(ミニマムドラゴン)。※
※三人称別視点。
本日もよろしくお願いいたします。
しゅるり。
【六花の白妖精】――闇の勇者パーティー〈輝く月〉のひとり、【呪紋使い】の少女ロココ。その身にまとう外套がぶわり、と魔力を含んだ風とともに六枚の白い花弁にも似た羽を広げた。
同時にまとめていた腰のリボンがほどかれ、身につけていた色とりどりの長い帯のような布が首すじからたなびく。
「穿て。鎧え」
そんな見惚れるような、ある種幻想的ですらある光景の中、そのあらわになった褐色の肌――全身から赤い呪紋が伸び、楔のように地面に撃ちこまれた。
次に、その小さな体でぐぐっとひざを曲げ地面に屈みこむと。
「じゃあ、いってくる。ディシー。ネヤ」
「うん! よろしく! ロココちゃんなら大丈夫だと思うけど、気をつけてね!」
「はい。ロココ。どうぞ、存分に。地上はわたしたちにまかせてください」
「うん。……ふっ!」
鋭い呼気とともに、赤く鎧わせた呪紋による脚甲、そしてしならせた無数の楔の反動を利用して、一気に天高く跳び上がった。
「お、おい!? ひ、ひとりでいっちまったぞ!? あの褐色の子!? い、いやそれどころじゃねー! 『動くな』とか、あんな大群前にそんなありえねー指示聞いてられっかよ! プリス! マジク! なにしてんだ! さっさと空に向かって魔法ドカドカぶちこんで――」
「騒ぐな。ユース。だまって見ていろ」
「っ……!? ロ、ロトルのオッサン! で、でもよ……!」
「勝手な行動は作戦の瓦解を招く。勇者パーティーの指示に従え。いま俺たちにできるのは、目を凝らすことだけだ。他の冒険者と同じように。次になにが起ころうと、すぐに動けるようにな」
勝手な行動をとりかけた冒険者パーティー〈熱き血潮〉のリーダー、ユースを叱責したのは、パーティー最年長のロトル。
その魔力を極限まで集中した目は、まっすぐに上空に向けられていた。他の歴戦の冒険者たちの目と、同様に。
「……けっ! わーったよ! そのかわり、あの褐色の子がやられそうにでもなったら、俺は躊躇しねーからな!」
遅れてそうつぶやくと、ユースも魔力を集中した目を上空に向けた。
「穿て。尽く」
ある程度の高さまで達すると同時、空中でロココはその両腕をまっすぐに向けた。
『『ギィィッ!?』』
それは、鋲。そのまま叫びを上げる怪鳥に突き刺さった赤い呪紋を伸縮させて、一気にロココは――怪鳥、半鳥人、巨大羽虫――翼もつ魔物たちの群れの中へと突入する。
「纏い、鎧え。……墜ちて」
『『ギィィァァァッ!?』』
それは、爪。何重にも束ねた鋭利な呪紋で強化した四肢を振るい、群れの翼を次々と裂いていく。
『『ギィィオオオッ!』』
多勢に無勢、何体もの半鳥人が爪を振るうロココの背面へとまわりこんだ。だが。
「穿て」
『『キュピィァッ!?』』
無防備なはずの背中から無動作で放たれたいくつもの呪紋がその体を刺し貫いた。さらに。
「壊せ」
『『ギュビィガァァァッ!?』』
下で固唾を飲んで見守る冒険者たちには、半鳥人たちが一瞬不自然に動きを止めたようにしか見えなかっただろう。
それは、魔力組成の根幹への干渉。破壊するまでには到底至らないごく一瞬だけ――だが、体勢を整えなおすには十分なそれを使い、敵の囲みを抜け、墜とし、次なる足場へと楔を撃ちこむ。
「な、なんだ……!? あれは……!?」
それは、数多の戦闘経験を持つ歴戦の冒険者、この場に集った猛者たちであっても、いまだ目にしたことがない異質な戦闘だった。
刃、矢、ほとんどの魔法。地上から人間が放つ届かないそれらを嘲笑うかのように、空を優雅に周遊する翼もつ魔物たち。
それが、安全地帯のはずの空の上、たったひとりに次々と一方的に、なすすべもなく蹂躙されていく。
「穿て」
『『ギャィィッ!?』』
それを可能としたのは、〈輝く月〉の仲間たちとの数多の戦闘訓練により磨き上げられた、半ば反射レベルまで鍛え上げられた呪紋の展開速度と、戦闘センス。
「壊せ」
『『ギゴゴガァァッ!?』』
さらには、かつてレイス家の刺客との戦いで、その身の回復のため余儀なくされた魔力組成の再構築。その際に半ば無意識で行われた、以前より強化された呪紋と体躯。
「墜ちて」
『『ギィィァァァッ!?』』
そして、地の利。致命傷を受けずとも翼をもがれた瞬間から、逃れようのない地の底への処刑台と化すこの高空こそが――ロココの蹂躙を可能とした。
そのあまりにも一方的な様を目にした冒険者のひとりが幻視し、つぶやいた。その縦横無尽に舞う小さな白い影をいまこの場にいない空の絶対王者たる魔物になぞらえて。
「最小の……竜…………」
『『『ブオオオオッ!』』』
「うわっ!? な、なんだ!? こ、今度は地上からだとっ!?」
そして、戦いは次なる段階へと移る。岩山の上方から山崩れのごとく迫りくる無数の魔物の群れと。
「さっすがロココちゃん! よーし! 今度は、あたしたちの番だよ! がんばろうね! ネヤちゃん!」
「はい。ディシー。お師匠さまとの修行の成果、存分に披露させていただきます」
目を爛々と輝かせ、やる気満々の様子を見せる〈輝く月〉のふたりの少女。
「う、あ、ああああ……!?」
そして、高空のロココの蹂躙と怒涛のごとく押しよせる地上の魔物の群れ。
自らの理解をはるかに超える事態を前に、慄き叫びを上げる光剣士のユースは、いまだ蚊帳の外のままだった。
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マンガBANGでコミカライズ連載中!
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さて。ということで、ロココの蹂躙でした。イメージとしては、ARMSの白兎です。
そして、本日より別作品を開始しました!
「クビからはじまるぶっぱ無双〜魔力を使えない最底辺のゼロの少年と無能と追放された天才錬金少女。最強欠陥錬金魔道具〈魔砲〉ですべてを見返しすべてを手に入れ、すべての理不尽をぶっ壊す〜」
第一話公開中。ストックが続く限り毎日更新。ストックは現在20話ほどです。初動が肝心なので、ぜひ読んで、ブクマ、評価等で応援していただけると……!
スクロールした以下のリンク先よりお読みいただけます!
では、また書き上げ次第。
それでは今後ともよろしくお願いいたします。





