242話 大規模魔物討伐作戦。※
お待たせしました。
本日もよろしくお願いいたします。
※三人称別視点。
今日も定刻を迎え、王都内に設置されたいくつもの大型拡声魔力器がいっせいに稼働する。この数日を通じ、もはや人々には聞きなじみとなった女性の声で、今日も同じメッセージを伝えはじめた。
『ただいま、ディネライア王国建国千年を記念する建国祭、その直前に訪れる大いなる厄災〝紅キ月ノ夜〟を無事に越えるため、王国全土をあげての大規模な魔物討伐作戦を実施しております。作戦の詳細は、各自最寄りの冒険者ギルドにお尋ねください。なお、期間中の討伐報酬、魔物素材の換金については、通常の1割増しにて算定しておりますので、奮ってご参加のほどを。また、期間中に一定数の討伐実績が認められない場合、冒険者資格を無期限に停止することがありますので――』
「――ごちゅーいくださーい。ったく! もう聞きあきたぜ! 昼メシくらい、静かに食わせろってんだ!」
ここは、冒険者ギルド近くにある食堂内のテーブルのひとつ。ある四人組のパーティーの昼食の席。
調子はずれの似ていない声真似をした剣士風の少年はそう吐き捨てると、大皿の中の腸詰め、その最後の一本にフォークを突きたてた。そのままあーんと大口を開けて、一気に咀嚼する。
「あ、ユース……!? それ、ボクの……!」
「へ? そうだっけ? 悪い悪い! ま、マジクがとろとろ食ってっから、こうなるんだってことで、痛えっ!?」
「そんなわけないでしょ! 年下の子をいじめないの! ごめんね、マジク。あとでもう一本注文するから……」
「あ、うん……! ありがと、プリス……」
「へっ! なんだよ、マジク? こんなガサツ暴力女なんかに、顔赤くしてもじもじしやがって、痛えっ!?」
「ハッハッハ! あいかわらず飽きないなあ! お前たちは!」
「っあ〜、痛え……! 笑ってないで止めろよ!? ロトルのオッサン! あんた、このパーティー〈熱き血潮〉の最年長だろ!?」
「リーダーはあんたでしょ」
いつものケンカ、いつものやりとり。そんなにぎやかな昼食を経て食後のお茶の時間になると、うってかわって真剣な表情になって四人組は話しはじめた。
まず口火を切ったのは、パーティーの最年長。長い茶色の髪を後ろに流しまとめ、あごひげを生やした男、土属性の槍使いロトル。
「さて。大規模魔物討伐作戦がはじまって数日が経った。王都についたばかりで出遅れたかたちだが、各自で集めたぶんも含めて、情報もだいたい出そろっただろう。そこで、決めたい。全部で三つある重点討伐地点。今後のパーティーの成長を考え、どこに向かうべきかを」
「えっと……三つって、暗夜の森と、古戦場跡と、ドルギガ山岳地帯だよね……?」
「うん。マジク。集めた情報だと、それぞれ派遣される冒険者団体の規模もちがうみたいだから、ここは慎重に決めないと――」
「んなもん、ドルギガ山岳地帯に決まってんだろ!」
パーティー最年少の目もと近くまで緑の髪で隠した風魔法使いの少年マジクと、フードつきの白いローブをまとう黒髪の少女、攻撃よりも癒しを得意とする水魔法使いプリス。ふたりの話し合いをさえぎり、リーダーのユースが声を荒げる。
それをとがめるように、ユースの幼なじみでもあるプリスがキッと視線を向けた。
「ちょっとユース! わたしがまだしゃべってるのに邪魔しないでよ! だいたい、なんで山岳地帯で決まりなわけ!?」
「はあ? わざわざ王都まで来て、常に真っ暗だっていう森の中で、魔狼どもや巨虫と追っかけっこなんて、いつもとたいして変わらねーじゃねーか! 古戦場跡はキモい不死系だらけだっていうから、ありえねーし! ま、【死霊魔王】でも待ちかまえてるってんなら、話は別だけどな!」
「えっと、ユース……? 【死霊魔王】は、光と闇の勇者パーティーに倒されちゃったから、もういないんじゃ……」
「んなこた、知ってるよ! マジク! だから、ドルギガ山岳地帯なんじゃねーか! その名の由来のとおり、ドラゴンも巨大級もいるかもしれないっていう魔境……! くー! ワクワクすんぜ!」
「もう……! このバカ……! あの、ロトルさんはどう思いますか?」
「ま、リーダーの決定だ。従おう。それに、考えようによっては悪くない」
「え?」
「最も激戦が予想されるドルギガ山岳地帯には、王都の冒険者の中でも精鋭が、それに例の闇の勇者パーティー〈輝く月〉も参戦するそうだ」
その言葉に、ピクリとリーダーのユースが反応する。
「ゆ、勇者さまが……! それなら……!」
「へっ! なーにが勇者パーティーだ! えっらそうにふんぞりかえりやがって! いったい劣等の闇なんかに、なーにができるっていうんだよ? 魔王討伐の件だって、どうせおこぼれもらって、かっさらっただけに決まってる!」
そう悪態をつきながら、ユースが椅子から下りる。そして、目を鋭く細めると、腰の刃を抜き放ち高々とかかげた。
「光の勇者ブレンさんがいなくなったいま、王国の新たな希望になるのは、俺だ!」
その手の中にある白刃に宿るのは、たしかな光。
短めの薄い金色の髪を前髪だけ立たせた少年。光剣士のユース。
光である自らの強さへの自負と、強い野心、そして希望をもって、彼はこの地へとやってきた。
そして――
「こんな食堂の中で、剣なんか抜いてんじゃ、ないっ!」
「痛えぇっ!?」
――ついにはじまる。大いなる厄災〝紅キ月ノ夜〟の前哨戦となる大規模魔物討伐作戦が。
それは、多くのひとにとっていまだ謎の存在だった闇の勇者パーティー〈輝く月〉がその力を公にしめす、はじめての戦い。
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さて。ということで、血気盛んな新パーティーの登場とともに大規模魔物討伐作戦のはじまりです。強さに自信はあるようですが、さて……?
次回「おもしろくない存在」
本格的な作戦に入る予定。
では、また書き上げ次第。
それでは今後ともよろしくお願いいたします。





