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闇属性だけど脚光を浴びてもいいですか―追放された少年暗殺者はワケあり闇美少女たちと真の勇者へ成り上がる  作者: ミオニチ
【第3部 光と闇と混沌と】2章 集う希望、蠢く絶望。

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243/277

241話 影と主従。※

お待たせしました。

本日もよろしくお願いいたします。


※三人称別視点。


 足りない。


 足りない。気品が、優雅さが、髪の艶が、肌のきめ細かさが。


 礼儀作法が、楚々とした仕草が、はにかんだときの頬の朱が、つるりと濡れた唇が、見つめるその憂いをおびた瞳が。


 ――私を捨てた、あの女より、足りない。


(あの日の約束、守れなくてごめんなさい。ナルシシス。でも、私は、もうこのひとと……)


「うあああああぁぁぁっ!?」


 暗い部屋。テーブルに突っ伏していた男が、慟哭に似た叫びとともに勢いよくその身を起こす。その拍子に飲みかけのグラスにひじがあたり、ガシャンと音を立て床の上に染みをつくった。


「はあっ……! はあっ……! く、くそっ……! あの女……! あの女ぁっ……!」


 男は汗ではりついた前髪をかき上げると、飲みかけの酒瓶をつかみ、ひと息にあおった。もう数えきれないほどに見つづけてきた悪夢――彼にとっていまもつづく最悪の現実をふりはらうように。


「早く……! 早く見つけなければ……! そして教育(つく)りあげなければ……! あの女よりも、この私にずっとずっとふさわしい、最高の淑女を……! 花嫁を……! そのためには……! 私兵どもぉぉっ!」


 濁り、半ば狂気に染まった瞳。空になった酒瓶を割れるのもかまわず放り捨て、男は叫んだ。


「いますぐここに来て整列しろぉっ! 今日も成果をあげられなかった貴様たちには、直々に罰をくれてやるぅっ!」


 だが、数十秒経っても屋敷の中には物音ひとつ、動く気配すら感じられない。


「ええぃ、どうしたぁっ! さっさと来い! そんなに鞭の数を増やされたいかぁっ!」


 業を煮やした男は、ずかずかと部屋の入口へと歩く。魔力で施錠された扉を解呪すると、バンッ! と勢いよく開いた。

 

「なっ、なんだ!? これは……!?」


 そこで、ようやく異変に気づく。


 暗すぎる。いつもは魔力照明で照らされているはずの廊下が――まるで漆黒の闇に塗りつぶされたように。


『ああ。よかった。ようやくでてきてくれましたか』


「ひ、ひぃぃっ!? な、な……!? なんだ、お前はぁっ!?」


 そして、さらなる異変。


 その真っ暗な闇の一部がずるり、と突きでて浮かび上がったのだ。まるでゆらめく影そのもののような、真っ黒に塗りつぶされたひとの(かたち)をとって。


『【生霊レイス】。意味の解釈はご自由に。さて、用件ですが――』


「しし、私兵どもぉぉっ! なにをしているっ!? 賊だっ! 化物だっ! さっさと来て、私を守れえぇぇっ!」


 屋敷の外にまで響くかという男の絶叫。だが、それに応えたのは、またしても目の前の影だけだった。


『はは。呼んでもだれも来ませんよ? だって、ご自慢の私兵たちでしたら、すでに私が――ね?』


 そういって影は奇妙にくぐもった声で笑いながら、自らの首をつう、と真横になでる。

 

 それが暗に示すのは――


「ひ、ひいぃやああぁぁぁぁっ!?」


 ――恐怖が最高潮に達した男は、たたらを踏んで後ずさり、だが、すぐにその背が壁にぶちあたる。


「よ、よよ要求はなんだっ!? かか、金かっ!? わ、わわ私をどうするつもりだあぁぁっ!? まま、まさか……こ、殺っ」


『殺しませんよ? たったひとつだけ、私の要求を聞いていただければ、ですが』


「な、な、なんだっ!? なにをすればいいっ! いってみろっ!」


『では――いまお前がやっている“少女狩り”を金輪際やめろ』


 ――その影の言葉には、いままでにない怒気がふくまれていた。それは、要求を断れば……という凄みを感じさせるには十分なもの。


「っ……!?」


『まさか、命にかえてまで、年端もいかない少女たちを花として愛でたいと――』


「い、いやだ……! わ、私は……幸せになるのだ……! 最高の淑女を……! あの女を超える、最高の花嫁を……この手にして……! そのために、私はぁっ!」


『あの……女……?』


 恐れ、震え、涙を流しながらも、男は影をにらみつける。その予想外な行動に、


「ナルシシスさまっ! ご無事ですかっ!?」


『っ!?』


 ゆえに、影の反応は、一歩遅れた。


 轟音とともに生じた爆発。そして、漆黒の闇に空いた空洞をくぐって侵入(はい)りこんできた人物は、使い捨ての魔法札を手から放すと、守るように男の前に立ちふさがった。


「リ……ディア……?」


「ナルシシスさま! ご無事で! どうか、お下がりください! ここは、私が……!」


 それは、使用人の服を着た、男よりもやや年かさの女。


 およそ戦いとは縁のない、けれど決意をこめた瞳が、煙が晴れた先の影――いや、まとっていた黒い闇を爆発で半ばまではがされた、抜き身の剣をもった少年と重なる。


『……探したいのなら、自分だけでしろ』


 やがて、それだけを告げると、黒い闇をまとう少年は、その場からきびすを返し、去っていった。


 あとに残されたのは――


「助かったぞ、リディア……! さすがは幼きころより仕えた忠臣だ……! お前のためにも、私は見つけてみせるぞ……! 最高にして、無二の花嫁を……!」


「……はい。応援しています。ナルシシスさま……」


 ――ただ、どこまでもすれちがう、憐れな主従。



 いまはまだ、だれも知らない。この噛みあうことのないふたつの歯車のその行きつく先に待つ、惨劇を。


 そう。それはまさしく――祭りの狼煙(のろし)となりて。






ブクマ、評価、いいね! などの応援いただきありがとうございます。

あたたかい感想もお待ちしています。

マンガBANGでコミカライズ連載中、webから全面加筆修正した電子ノベルが4月28日より発売中です。そちらもどうぞよろしくお願いします。



さて。ということで、事件の後始末と、先への前振りでした。

意味深なことをしてますが、影をまとう少年はいつもどおりだれも殺してません。首に手刀はしてるかも。私兵は全員気絶済みです。



あと、72.5話まだでしたら、ぜひ。72と73の間です。



次回「大規模魔物討伐作戦」

新展開。2章もそろそろ終盤に入ります。


では、また書き上げ次第。

それでは今後ともよろしくお願いいたします。

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