232話 邂逅。
お待たせしました。
本日もよろしくお願いいたします。
「ええい! さっきからいっているだろう! いいから、我々とともに来い! いままでの――」
――どうして、どうして、こんなことに?
きゅっとリボンを結んだ胸の奥。いまもなにごとかを叫ぶまわりの男たちを見上げ、やるせなさにぷるぷると身をふるわせながら、僕は心の中でそう問いかける。
(じゃ、じゃあ……! 気をつけて帰ってね……! ル、ルノエちゃん!)
そういって、頬を赤くしながら手を振るフェアさんをぎこちない笑顔で見送った僕。
こんなメイド服では、冒険者ギルドの中に入る気など起こるはずもなく、ものめずらしそうにちらちらと見てくる人々をしり目に足早に帰途につこうとしたところ――武装した三人の男たちにとりかこまれた。
前に一度、妹ネヤとの再会の際に〈輝く月〉のみんなで撃退した元貴族、ナルシシス・ステーリヤの私兵たちに。
ほとんど右から左へ聞き流していたけれど、どうやら僕たちにやられてしばらくなりをひそめていた少女狩りとやらをふたたび再開したらしい。
――もっとも男たちがいうには、あくまでナルシシスの審美眼にかなう候補者を屋敷に招いているだけであって、けっして悪いことにはならない、目にかなわなければ解放する、ということだ。
やけに必死にそう説明しているのが、少し印象に残った。まあ本当かどうか、あとで少し調べてみるつもりだけど。
「で、でも……ぼ、僕、帰らないと……。お、お願い……」
なんにしても、つれていかれたらたまったものじゃない、と声色を変え、上目づかいに瞳を潤ませる――という精いっぱいの演技で、男たちに訴えかけてみる。
「いいから、来い! お前が来ないと、我々がナルシシスさまにひどい目にあわされるんだよ!」
「え……い、いたっ!」
だめだった。ぜんぜんだめだった。恥も外聞も捨てて女の子になりきってみたのに、ぜんっぜんだめだった。
おまけにこのひとたち、力弱すぎ。つかまれてもぜんぜん痛くなくて、一瞬気づかなかったよ。もう少しまじめに鍛えたら?
それはともかく――どうしよう?
亜空間収納にしまっておいた闇の聖剣を使うのはもちろんだめとして、もし素手で制圧しても、たぶんそれなりに目立つ。
と、なると。
「え、あ……た、助け……! だれか……!」
きょろきょろとあたりを見まわし、助けを求める。もちろん、だれか来てくれればよし。だめでも、注目をあびれれば男たちに隙ができて逃げだせ――って、え?
「ったく! はるばる海を越えて来たっていうのに! そこのあんたたち! このあたしの目の前で、なにふざけた真似してくれてんのよっ!」
ものすごい勢いで走ってきたのは、ふたつ結びの燃えるように赤い髪の少女。近づいてくるやいなや、その腰の刃を抜き放った――赤く、炎をまとう刃を。
ドクンッ。
「これでもくらって反省しなさい! 【聖火の抱擁】!」
鼓動が、高鳴っていた。
なにかが、僕に告げる。来たるべきもののひとつが来た。来たるべき時が近い、と。
そう。見まちがえるはずがない。あの女の子が握る、あれこそは、火の聖け――
「あたしこそは! 絢爛! 流麗! 才色兼備! その名も謎の美少女剣士フラレム・バーンアウトよ!」
「………………え? 謎って、なにそれ? あと、美少女とかなんとか、普通自分でいう?」
あっというまに私兵の男たちを制圧し、僕のすぐ目の前、自信満々で渾身のやりきった感を見せる、ふたつ結びの赤髪の少女。
――思わず、予感とか考えていたこととか衝撃とか、ぜんぶ吹きとんでしまって、僕はそうつぶやいていた。
とにかく、いまここに邂逅は、はたされた。
遠く彼方、海を越えて来訪せし火の勇者と、千年の時を経て継承されし、闇の勇者の。
――いったい、なにがどうしてこうなったのか。
一方は、(聖剣もってるので)バレッバレにその事実を隠し、一方は、ふりっふりのメイド服にその身をつつんで。
ブクマ、評価、いいね! などの応援いただきありがとうございます。
あたたかい感想もお待ちしています。
ということで、回想後半でした。230話裏ともいいます。新情報もいくつかちりばめさせてもらいました。
そして、3月7日開始のコミカライズの告知画像を目次、各話、活動報告に上げさせていただきました。Twitterも。
とにかくロココが可愛い。そして格好がヤバい。考えたの自分ですが。
ちなみに、このノエルなら十分いけるな、と思っていまの展開はできています。あと、たぶん某魔に入る漫画を読んだせい。イルミちゃん可愛い。
次回「王都案内」
では、また書き上げ次第。
それでは今後ともよろしくお願いいたします……!





